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大六章 死神戦

第二百七十八話 暗闇の森《5》

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「……」

『……』

 今ナギとソルテの2人はお互いに緊張した面持ちで息を殺していた。
 そのすぐ近くを何かがカシャン…カシャン…と音を立てながら通りすぎていき、音が遠くなって聞こえなくなると2人は静かに息を吐いた。

「『ふぅ……』」

「なんで、こんなことになっているのか」

『主に主様が原因だと思います…』

「本当に申し訳ない。今回ばかりは真面目に悪かったと思っている」

 珍しく本心から罪悪感にあふれた様子でナギは頭を深々と下げて謝罪した。
 こうなってしまったのは時間を少し前へとさかのぼる…

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 周囲の状況を探査して魔物の少ない場所を目指して進んだナギとソルテだったが、ゆっくりと何かヒントがないかと確認していたので速度は遅かった。
 ただ悪い事ばかりでもなく、遅くゆっくりと動いたおかげで魔物に遭遇しても冷静に隠れてやり過ごすことができていた。しかも翌期の根元を見ていると遺跡の破片のような痕跡をいくつか確認していて今回の試練の内容を示唆しているものの可能性が高いとナギとソルテは判断していた。

「あぁ…歩き難い」

『そんなにですか?』

「そんなにだ。なにせむき出しの地面に大蛇のように太い木の根が飛び出して、更には動物の骨や遺跡の破片なんかがゴロゴロと…」

『それは確かに歩き難そうですね…私は飛べるから関係ないですけど』

「お前も一言多いやつだな」

 自分は歩かずにコートの中に入っているだけなのにのんきな様子のソルテに眉間を押さえながらナギは苛立たしそうに言った。とは言っても敵も近くにいるかもしれない状況で大声を出すわけにもいかないので必死に堪えた。
 そしてすぐに冷静さを取り戻したナギは周囲の様子を確認しながら進み続けていた。

『…?少し止まってください!』

 そんなときに緊張感に満ちた声でそう手が静止した。
 今までにない反応にナギは足を止めて近くの隠れられそうな木の幹の隙間へと体を隠した。

「どうした?」

『詳しくはわからないんですけど、この先になにか他とは違う反応があって…少し警戒した方がいいよ思います』

「違う反応って具体的には?」

『えっと、何て言えばいいんですかね~こう…平地に盆地が急に現れらような…急に山になったような…』

「なるほど、よくわからないな」

 説明されても結局はソルテ自身ハッキリ理解できていないようで、聞いてもナギも理解できずあっけらかんとした反応で別の方向に考えを変えることにした。

「とりあえず見に行ってみるか。さすがに長時間止まってるといい予感はしないしな」

『う~ん…確かにそうなんですけど、なんだか嫌な予感がするんですよねぇ』

「何かあるのは間違いないだろうけど、ここで止まっていても脱出はできそうにないしな。まずは飛び込んでから考えよう!」

 こうしてもっともらしい言い方をしたナギだったが、本音はゆっくりとした探索に飽きてきたので新しい刺激にの匂いのすることに興味があっただけだ。その本音をなんとなく予想できているソルテは嫌そうな顔をしていたが、こういう時は何を言っても無駄だという事も理解しているので黙っておとなしくしていることにした。
 そうしてソルテの道案内に従って進むこと数分後、ついに違和感を感じたという場所まで来ることができた。

 しかし別に何か目に見えて気になるような物はなく、ここに来るまでにも見た鬱蒼とした森が存在しているだけだった。
 最初は何か隠されていないかとナギも石を投げたりして確認していたが、何度やってもなにも見つけられずに少し考え込んでいた。

「一応聞くけど、ここで間違いないんだよな?」

『間違いないですよ!今も何か不自然な違和感がありますから‼』

「だとすると何かあるんだろうけど…」

 さすがに何も見つからな過ぎてナギも思わず確認してしまったが、それに対しても自信をもって強く言うソルテを見て信用できると判断して再度周囲を見回した。
 どれだけ注意深く見ても先ほどまでと一緒で変わったようなものは見えずソルテも自信を無くしてきた。
 そんな時、もはや睨みつけるように周囲を観察していたナギが何かに気が付いたように周囲へと火球を生み出した。

『急にどうしたんですか⁉敵はいませんよ?』

「そんなことはわかってる。単純なことに思い至っただけだ」

『単純なこと…ですか?』

「あぁ…見えないところにないなら。

『いえ、その理屈はおかしい』

「おかしくないだろ?見えるところには何もない。だったら見えないところに何かあるってことで、なら見えるところを破壊しつくせば見えてくるだろうってことなんだよ‼」

『…つまり、探すのが面倒になった…ってことですよね?』

「ははははは!吹き飛べッ‼」

『無視して撃たないでくださいよ⁉』

 図星を突かれたナギは豪快に笑うと完全に無視して周囲に向けて無数の圧縮した火球を放った。ソルテの悲痛な叫びは空しく周囲に轟く爆音によってかき消されてしまった。
 しばらく断続に続いた爆音が収まるころになると周囲は砕かれた地面と圧し折れた木々の破片だけが散乱して、ほとんどが荒れ地と化していた。

 そして管駆られた地面の中に鉄製の壁のようなものが見えていた。

「ほら、こうして出てきたじゃないか!」

『結果論ですよ!と言うか、今の爆音で周囲の魔物が全部こっちに集まってきてるんですよ⁉どうするんですか⁉』

「それは中に入ればわかるだろ。いや、正確には落ちるかな?」

『…落ちる?』

「足元に注目!」

 そう言ってナギの指に従って足元を見ると鉄の何かには深いヒビが入っていて次の瞬間には崩れ、ナギとコートの中に入っていたソルテは重力にしたがって地下へと落ちていった。
 姿が見えなくなると地面や森は自然に修復を始めて数分後には破壊される前の姿へと戻っていた。
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