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大六章 死神戦

第二百八十二話 骸の城《4》

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 そして後ろから聞こえる土壁の破壊音に追い立てられながら走り続けてついにナギとソルテは墓のあった部屋へとやってきた。
 最初に来た時には普通に綺麗な黒い墓があるだけだったが、今はその墓は真っ二つに割れて中には階段があった。

「…一か八か降りてみるしかないな」

『もうすぐ後ろまで来てますしね!』

「そういう事だ。怖がる余裕はない‼」

 本当なら慎重に行きたかったが切迫した状況ではどうしようもないとナギは階段を駆け下りた。
 地下なら少しはじめじめとしてもおかしくないはずなのに会談はいくら降りても肌寒くは感じてもそれだけだった。
 そんな些細な変化に一瞬だけ気を取られそうになったナギだったが、後ろから聞こえる足音によって思考を強制的に戻して急いで一番下まで駆け下りた。

 しかし下りても下りても一番下までたどり着くことがなく永遠に会談が続いているかのようにナギは感じた。
 頭に最下層などないのでは?と言う不吉な考えが一瞬浮かんだが、それを振り切ってナギは後ろから聞こえる足音から逃げるようにひたすら下を目指して途中からは飛び降りるように何弾も飛ばして下りた。
 本当にどれほど下ったのかもわからないほど下りた頃、ようやく一番下へと降り立った。

「ようやくか!」

 なんとか着くことのできた最下層にナギは警戒もなく安どから大声を出していた。
 それでも習慣からが瞬時に周辺へと目を走らせた。

 その場所は先ほどの小部屋よりも少し広く松明が壁にある以外には物もほとんどなかった。
 ただ部屋の中でも異彩を放つ物が1つだけあった。

「黒い骸骨か…意味は分からないけど、何の理由もなくこんな場所に置いてあるはずもないよな」

 部屋の奥、壁の暗闇に紛れさせるように置かれた漆黒の骸骨があった。
 その硬質的な光を放つ骸骨にナギは最初は和中と警戒したが、一々気にしていられるような状況でもないのでか細い可能性に欠けて骸骨へと手を伸ばした。
 掴んだ骸骨に意味は理解できてはいないがナギはそれを片手に持った状態で振り返った。

 すると手に持っている黒い骸骨を見て目の前で鎧は動きを止めた。
 それを見たナギが試しに骸骨を左右に動かすと、鎧は合わせて左右に動いた。この反応からなんとなく攻略法がわかったナギは手に持った骸骨を前に出して一歩前に出た。
 すると鎧は合わせるように後ろへと一歩下がった。

 これでナギは今回の事の攻略法を理解した。

「触れること近寄ることのできない物が隠されているという事か、なら他の通路にも似たような存在と、それに対応した何かが存在するってことか…厄介なルール作ってくれたな」

 つまりは今目の前にいる鎧のような絶対に勝てないレベルの敵が後3体は確実に出てくるという事で、しかもそれに対応した物を取るためには通路の先から一度全員を大部屋まで引き寄せて脇を通り抜けなくてはならないという事だ。
 そんな自殺にも近い行為を繰り返すような趣味はナギも持ってはいないので死ぬほど嫌そうに口授の表情を浮かべていた。

 しかし今は他にヒントらしいヒントもない状況なのも理解しているのでナギも目の前の黒い鎧へと声をかけた。

「さて、散々追い掛け回してくれた礼くらいはしておかないと…だよな?」

『………!』

 ものすごく意地の悪い笑みを浮かべながら近寄ってくるナギに対して黒い鎧は何か慌てたように体を揺らしていたが、それでも黒い骸骨へと顔を向けては離れることもせずに止まっていた。
 この行動で予想の半分以上が間違っていないと確信を持てたので遠慮なく軽い報復を実行することにした。

「大丈夫だ。お前にはやってもらいたいこともあるし、殺しはしない…殺しはな?」

『っ⁉』

『なんというか…少し可哀そうですね…』

「うん?何か言ったか?」

『いえ!何も言ってません!』

 少し怯えたように見える黒い鎧に同情した様子のソルテだったが目の前に笑顔のナギがいることを思い出すと、すぐに自分に矛先が向かないようにと勢いよく返事をしてコートの奥へと逃げた。
 そして邪魔者のいなくなったナギは心置きなく報復のちょっとした悪戯を実行した。とは言っても、別に倒したいわけではないので本当に軽くした程度だった。

 表面を火球で焼いて煤を付けたり、細工用の道具で軽く傷のついたようなデザインに強制的に変更しただけだった。
 戦闘状態だと攻撃だと判定されることで影響を与えることはできなかったが、今は完全に黒い鎧も戦闘の意思を失っていてナギの意味不明な行動に恐怖ら感じて小刻みに震えている相手になら外観を変えるだけなら影響を与えることができるようになっていた。

 しばらくするとHPは減っていないのに黒い鎧は戦闘でボロボロにされているような外観になっていた。

「ふふふ!上出来だな‼」

『…』

 黒い鎧は面影はあってもみっともないくらいボロボロにされた体を見て絶望したように四つん這いになっていた。
 その姿を見てナギは傷の出来栄えも含めて満足そうに頷き、本題へと話を進めた。

「さて、お遊びはこのくらいにして本命の頼みをしておこうか?」

『ッ⁉』

「大丈夫、怖がる必要はない。本当にちょ~っとした頼み事だから安心しろ…な?」

『……』

 手に持った黒い骸骨を目の前で揺らしながら話すナギを見て黒い鎧は逆らえないと判断した諦めたように頭を垂れた。その様子をコートの中から見ていたソルテは本当にこの人を主にしてよかったのかな?と少し後悔しながらも、敵対しなかっただけましだと何とか気を持ち直して話を聞くことに集中したのだった。
 そしてナギの口から出た計画を聞いてソルテと黒い鎧は、目の前にいるナギと言う人物が本当に恐ろしくて体を震わせるのだった。
 
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