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第一章

21.「凌馬」2*俊輔

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 しばらく悩みつつ、オレは凌馬に視線を向けた。

「まじめに聞けよ……凌馬」
「当たり前」

 即答した凌馬に、覚悟を決めて。

「――――……お前さ」
「ん?」
「……」
「……んだよ? はっきりしねえな、珍しい」

「……男、抱いてみたいと思った事、あるか」

 あんまりにその質問が意外だったのか、一瞬目を大きく開きしばたかせ。その後すぐに首を横に振った。

「いや? ないけど?」
「……だよな」
 オレだって、真奈に会うまでは、かけらも考えた事がなかった。

「お前は? あんの?」
「――――……」

 抱いてみたい……と、思った訳では、ない。
 何だか無性にむかついて、汚してやろうと、思ったのが最初。

 やっぱり何と言うべきか分からず、少し黙った時。凌馬は置いていた鞄からカードを取り出した。

「……久しぶりに賭けねえ、カード」
「――――……」
「お前が勝ったら、もう聞かない。 オレが勝ったら、お前は隠さずに全部話す。ど?」
「――――……相変わらず好きだな、カード」

「んだってよ、お前、話したいような話したくねえような、んな感じだからよ。話すべきか、そうすべきじゃねえのか、運で決めようぜ? 数の大きい方が勝ちな?」

 昔からこのやり方。凌馬は何かあると、カードを持ち出す。自分の進退についても、カードで決める。
 理由付けというか、何かのきっかけを掴むための手段に、これを選ぶ。

「……」
 渋々カードを引き抜いて凌馬に見せる。
 凌馬も自分で一枚抜いてそれを見てにやりと笑うと、カードをくるりと反転させてオレに見せた。

「はい。 オレの勝ち。 さ。聞くぜ、何でも」
「――――……」

 乗り出してくる凌馬に。ため息をついてしまう。

「おいおい、ほんと今更。オレはお前が男のハーレム作ってようと別に構わねえから。話せよ」
「――――……」
 また大きなため息をついて、凌馬を睨む。

「……んなモン作るか……」
「ははっ。だな」

「けど、一人、部屋に住まわせてる」
「――――……」

 途端に呆けてしまって、くわえていたタバコを落としそうになって慌ててる凌馬。
 心底嫌で、顔をしかめる。

「んだよ、その顔。オレが何してても構わないっつったろ」
「構わねえけど…… 部屋って、お前の、部屋か?」
「……当たり前だろ」
「……お前、これから帰ると、そいつ、部屋に居んの?」
「オレの部屋に居るんだから当たり前だろうが」

 変な質問を繰り返す凌馬に呆れていると。

「……オレ、お前が何してようと構わないと思ってるけど……お前が自分の部屋に誰かを連れ込んだ時点でありえねえな……」

 それきり、しばらく黙って、タバコをふかしてる。 

「……だってお前、束縛されんのも、一人に決めんのも、病気かって位、嫌がるだろ?」
「――――……そうだな」
「一体どれくらいだよ?最近か?」
「……もうすぐ二ヶ月位だな」
「はああ? マジかよ? 嘘、ついてねえか?」
「……ついてねえよ」

 聞かれる質問に短く答えていくと、凌馬が、思い切り眉を顰めた。

「……つか……アリエねえな」

 凌馬の表情に、言わなければ良かったと後悔したが。
 もう今更遅いのは分かってる。



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