【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「恋人」

「不思議」*玲央

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 「CLOSE」と書かれた立て札を避けて進む優月について、中に入ると、蒼さんともう一人が振り返った。

「こんばんは」
「おう、玲央。昨日ぶり。つか、毎日会ってるな」

 クスクス笑う蒼さんは、隣の人に視線を流しながら。

「こっちは、里村晃。仕事仲間だよ」

 蒼さんが言うので視線を合わせると、やたらガタイの良いその人は、ふ、と笑んだ。

「玲央くん? 優月くんの彼氏だって?」
「はい。 昨日、そうなりました」

 途中から蒼さんの事を見つめて言うと。
 蒼さんは頷いて、目を細めて笑った。

「聞いたよ――でも全然詳しく聞いてないから話あるなら聞く。とにかく今閉めるから、店に行こうぜ」

 蒼さんの言葉に頷きながら、ふと気づくと優月が隣でオレを見上げてにっこり笑ってる。
 少しだけ離れた時に、優月を見下ろした。

「なあ優月」
「ん?」
「聞かれたら、何答えても平気?」
「うん。平気、だよ?」
「ん、分かった」

 こそ、と話して、ふ、と見つめ合って笑む。

「ほら、行くぞー」
「はーい」

 蒼さんに呼ばれ、里村さんにも振り返られて、優月がそう返している。
 前を歩く二人の後をついて歩く。

 そこから五分程歩いて、入ったのは、すごく雰囲気の良い和食の店だった。
 個室に通され、テーブル席に座る。

 優月とオレが並び、里村さんと蒼さんが並ぶ。

「コースで頼むよ。 晃はアルコール飲むだろ?」
「ビール」
「ん。優月と玲央は?」
「オレはお茶がいいんだけど……」
「ウーロン茶と緑茶があるよ」

「ウーロン茶がいいな」という優月に「オレもそれでお願いします」と続ける。蒼さんが注文を済ませてから、メニューを渡してきた。

「何か他に頼みたかったら別で頼んでいいよ」
「大丈夫です」
「オレも大丈夫」

 ん、とメニューを受け取って、里村さんにも、見る?と聞いてる。いい、と里村さん。

「今日ありがとうな、二人とも」

 蒼さんが優月と里村さんにそう言ってる。

「晃、受付なんか初なんじゃないか?」
「確かに、あんまやった事なかったかも。まあ、優月くんに会ってみたかったし」

 その言葉に、優月が、ふ、と里村さんを見つめている。

「さっき優月くんには言ったけどさ、蒼がずっと可愛がってるっぽいからさ。どんな子なのかなーと思って」

 友達が見たいなと思うほど、優月のことを話してるんだなぁ……と、心の中で思いながら、ちょっと不思議そうに首を傾げてる優月を見つめる。

「弟みたいなもんだって言ってんだろ」

 蒼さんがそう言って、里村さんに笑ってる。

 優月はふ、とオレの視線に気づいて、オレを見つめて。
 また、にっこり笑う。

 あー、触りたい。不思議そうにしてんのも、可愛い。
 咄嗟に思う。……触れないけど。

「玲央もごめんな」
「え?」

「優月、借りてさ?」
「ああ……そんなのは全然」

「そうか?」

 言いながら、蒼さんはくすっと笑う。そこに、飲み物が先に運ばれてきた。

「とりあえず乾杯しよ」
 蒼さんの言葉に、皆でグラスを持つ。

「じゃあ――付き合い記念、な。乾杯」

 皆、ふ、と笑いながら、乾杯。
 お茶を一口飲んでから、蒼さんがオレをまっすぐ見つめた。

「――優月だけ、に、なったんだよな?」
「はい」
「ふうん……」

 そう言って、ぷ、と笑う。

「何ですか?」
「いや……だってな。昨日、頑張ったんだろうなーと思うとちょっとおかしかった。……悪い」

 クスクス笑われる。

 ……なんかほんと。
 色々見透かされてる気がするのは、ほんと何なんだろ。

 知らねえよなあ? オレにどれくらいセフレが居たかも。
 ……昨日結局、その連絡に半日かかってたとかも。

 知らないだろうなと思うのに、何か悟られてるような気がするって。
 ほんと、不思議な人だよな。



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