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◇「周知」
「だめだこれ」*優月
しおりを挟む学校について玲央と別れて、教室の端に座って、肘をついてぼーーーーっとしてしまう。
朝から、めちゃくちゃキスされて。
なんか。フワフワ浮いてるみたいで。
まだ、いつも一緒の友達は来てないので、一人。朝の事、思い出してしまう。
……キスだけで、体が熱くて、すっかり反応しちゃって。
気づいた玲央に、イきたい? て聞かれて。
ううん、と首を振った。そんな事されたら、絶対、ベッドだと思って。
「じゃあ、落ち着くまでこのままいよ」
抱き締められて、ぽんぽんと背中、優しく叩かれる。
玲央は涼しい顔してるし。オレだけこんな簡単に、そんな気になってるみたいで。今玲央にされた事って、言ってしまえば、キスだけ。なのに。
後頭部、よしよしされるだけでも、今は、少しぞく、とする。
撫でないで……と思いながらも。
深呼吸してる内に収まってきた。
「収まって来た?」
くす、と玲央が笑う。
さっきも今も、直接触られた訳じゃないのに、何で分かるんだろ……。
「玲央……あの……加減して」
オレ慣れてないんだから。
玲央のすること全部に、容易く、反応しちゃう気がする。
「はは。ごめん」
よしよし、と撫でられて、玲央を見つめてると。
「よし――――……オレも一応収まったから。いこっか」
「え」
「ん?」
「……玲央、平気な顔、してたから……オレだけなのかと思ってた」
「――――……」
思わず、思うままにそう言ったら。
「バカだなー、優月」
クスクス笑って、玲央はオレをナデナデする。
「んな訳ないじゃん。むしろ、オレのが、どんだけベッド連れ込もうかと思ったか。お前が学校、て言うから我慢しただけ」
よいしょ、と立たされて。一緒に立ち上がった玲央に、ちゅ、と頬にキスされた。
あれから、一緒に朝食を片付けて、出てきた。
平気な顔して話してたけど。なんかオレ。
体の奥、熱いまんま。
――――……最後キスされた頬に、触れる。
……朝から。もう。
ほんとに。強烈だったなあ……。
キラキラした瞳でオレを見つめて、
優しく笑って。優しく触って。抱き締めて。
めちゃくちゃ、キス、されて。
――――……ていうか。キスって。
普通の人、あんなにするものなんだろうか。
オレ、きっと、他の誰か。女の子と付き合ってもあんな風にはキスしてなかったと思うなあ。……てことは、振られてたかなあ??
……どの程度するのが普通なのかとか、全然分からない。
人によって違うんだろうけど……。うーん……。
手をズルズル前へ伸ばして、腕の上に倒れ込んでしばらく。ぺったり机と一体化していたら。隣に誰かの来た気配。
「お?? 優月だよな?」
話しかけられて倒れたまま横を見る。
「……うん、おはよー」
「どしたの、倒れて。寝不足?」
「ううん。ちゃんと……」
聞かれて、ちゃんと眠ったよと言いかけて。
――――……玲央とするとぐっすり眠れて、という自分の言葉がパッとよぎって。そのまままた突っ伏した。
……うー。ダメだこれ。
「やっぱり寝不足……」
起き上がらないで済むように、仕方なく、そんな風に誤魔化して。
あらら。ちゃんと寝ろよなー、なんて言われて。
寝ました……と心の中で言いながら。
うん、そだね、と小さく答えた。
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