【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
458 / 856
◇「周知」

「大好き」*優月

しおりを挟む

 一限も二限も終わって、昼食もあと少し。
 玲央に「もうすぐ食べ終わるよ」と入れると、「オレももうすぐ行く」「あのベンチの所で会ってコンビニ行こう」と返って来たので、分かったという了解のスタンプを押した。その瞬間、あ、と気付く。
 またハムスター押しちゃった。似てるって言われたやつ……。
 少し経って、「また似てる」と入ってくる。

 あ。また入ってきた。
 本気で似てると思ってるのかな。不思議。

 そういえば玲央は、肉食獣……。カッコいいから良いけど。
 ふ、と笑んでしまいながら、「似てないけど」というメッセージと、笑うスタンプを押す。それから「すぐいくね」と入れてスマホをしまうと、隣の友達にクスクス笑われた。

「優月、笑ってる」
「……あ。うん。ちょっと面白くて笑っちゃうんだよね」

 あはは、と笑ってしまうと。
 友達は、何が?と聞いてくる。

「んー……ハムスターのスタンプ押したら、似てるって言われて」
「どれ?」

 そう言われたので、さっき送ったハムスターを見せると。
 ぷ、と笑われて、まあ分かる、と言われた。

 分かるんだ、とちょっぴり不思議気分になりながら、苦笑い。

「オレ、こんなにふわふわのもこもこの生き物じゃないけどね」
「んーまあ毛はないけど」
「なにそれ」

 クスクス笑ってしまう。

「目が似てんじゃない? なんかくりくりしてるし」
「……ちょっと、似てるって言った人に聞いてみるね……?」
「あぁ、分かったら教えて」
「うん。楽しみにしてて」

 お互い可笑しくて笑ってしまいながら、うんうん言い合ってから、オレは立ち上がった。

「ちょっと猫のとこ行ってくるー」

 言うと、周りの友達が、また行くの、と笑ってる。
 うん、また行ってくるねと笑い返し、トレイを持って、歩き出した。


 ――――……なんか歩き出すと、一歩ずつ、玲央に近付くみたいで、嬉しくなる。


 お昼一緒に食べればよかったかなあ。
 ……でもなー。あんまりオレとばっかり居てもなあ。……やっぱりお昼位は、違う人と食べた方がいいよね。

 じゃないとほんとに、毎日毎日、三食全部になっちゃったら、さすがに、ちょっぴり飽きられちゃうかなあ。……あ、でも、オレは飽きないと思うけど。

 いつも玲央と離れているとそうなように、一人で色々考えていたら。前方に玲央を発見。

 途端に嬉しくなって、結構遠くだけど追いつこうと、走り出した瞬間。
 玲央に手を振って、近づいて行って、玲央の腕に触れる女の子。


「――――……」

 
 ぴた、と足が止まった。
 
 玲央とその女の子も足を止めて、話してる。
 
 
 えーと……。
 どうしよう、今、行かない方がいいよね。

 戸惑っている内に、いつのまにやら、玲央の腕からその女の子は、腕を引いてた。


 ――――……。
 しばらく話してる、女の子と玲央を見守る。

 楽しそう。
 ――――……特に、女の子が。

 玲央の事、大好きなんだろうなーと、思ってしまう。

 分かる。
 ――――……カッコいいし。優しいし。
 ……立ってるだけであんなに素敵な人、いないよね。分かる……。

 
 玲央が何か言いながら、指で今から行く方向を示してる。
 女の子は、少し残念そう。


 二人が別れて。
 オレは、少しだけ、さっきの勢いはなくなってて。どうしようかな、走ろうかな。
 思いながら、少しゆっくり、玲央の後を歩いてたら。


 玲央がふっと、振り返って、こっちを見て、オレを見ると同時に立ち止まって、こちらにまっすぐに体を向けた。


 優月


 そんなに大声だしてない。声は聞こえてないけど。
 何となく、名前を呼んでくれた感じは分かる。


 何より、オレを見た瞬間、ふっと優しく笑んでくれて、まっすぐ、こっちを見て、止まってくれた。

 なんだか、急に嬉しくなって、玲央に向かって、駆けだした。
 



 ――――……大好き、玲央。

 




しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

処理中です...