【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

「愛しい」*玲央

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 ――――……寝た。
 早い。……かわい。

 腕の中の可愛い額に、ちゅ、とキスして、起こさないようにそっと起き上がる。優月の頭に手を置いて、サラサラの髪の毛にしばらく触れて、それから離れた。

 部屋を出て、ふと気づく。
 そういや今日、一切スマホ見てねえな……。散歩の時に持ちはしたけど、開かなかった。

 楽器を置いてある部屋に戻り、机に置きっぱなしにしてたスマホに触れて画面を起動させる。

 結構な数のメッセージ。ざっと確認して必要なものに返信し、最後に勇紀たちのメッセージを開いた。

 玲央、作曲してんの? という内容。
 金曜カラオケで、そろそろ曲作んねえとな、と話してたから。

 今日は一日してた、と返すと、すぐ返事が来て、優月は? と聞かれる。
 優月はって言われてもな……。

「なんとなく一緒に居たけど」と返す。

『玲央、完全に自分の世界入っちゃうもんな』と勇紀。
『さみしがってたろ』と甲斐。
『かまってあげた? ……あげたか』と颯也。

 ――――……つか、なんなんだ。

 なんと返そうか、スタンプでも送って無視するかと思っていたら、勇紀からグループ通話がかかってきた。
 仕方なく応じると、画面に次々、全員表示される。

「土曜の夜に暇そうだな?」

 オレがそう言うと、皆、苦笑い。

『オレ今日デートだったし』
『オレも』
『オレも最近仲いい子と遊んで帰ってきたとこ』

 勇紀、颯也、甲斐の順に、そう言ってる。

「今日はオレはこもってたけど……」
『お疲れ。できそう?』

 勇紀の言葉に、「これから続き。明日もやる。つかお前らも歌詞とか考えとけよ。曲はもってくから」と答えると。

『玲央がつけるんじゃねえの?』

 勇紀が意外そうに言う。

「なんで?」
『えー、だって、優月への想いを歌詞にめっちゃしてくんのかと思ってー』

 あははー、と勇紀が笑う。
 残り二人も笑ってる。

「――――……」

 まあそれもありか、と思ってしまうが。

「つか、一応考えろ」

 そう言うと、一応って、と皆が笑う。
 息をつきながら、ソファに腰かけて、会話しながらふと置いてある物に気づく。優月がさっき持ったまま眠っていた本。寝顔を思い出して、クスッと笑ってしまう。

『玲央、何見てんの』
『一人で笑うな、キモイぞ』

 勇紀と甲斐のセリフに、うるさい、と言いながら。
 その下にあるもう一つ。スケッチブック?と、何気なく手に取る。

『優月は? 寝てんのか?』

 颯也の声に、ああ、さっき寝た、と答えながら、ソファの背もたれの上にスマホを立てて、スケッチブックを開く。パラパラと優月の絵をめくっていく。
 
 好きなものを、好きだと思いながら描いてるんだろうなと感じる絵に、なんだか、微笑んでしまう。


「――――……」

 終わりのほうで。
 手が、止まった。


 どう見ても。
 オレだよな、と思って。

 じっと眺める。


『どーかした?』

 勇紀が気づいて、聞いてくる。

 ――――……なんだか、少し、見せたくなってしまって。


「これ」

 画面に向けて、スケッチブックを見せると。
 数秒、間を置いてから。

『優月の絵?』
『玲央じゃん! 上手だなぁ、優月』
『美化されてね?』

 颯也、勇紀、甲斐。
 何やら、思っていた以上に盛り上がってる。
 一通り聞いた後で。

「――――……とりあえず、曲、作る」

 そう言うと、頑張れよーと口々に言い、通話が終わった。

 そのまま、最後のページまで、めくっていく。


「――――……」


 好きなものを好きだと思って描いてる。
 他の絵を見始めた時に、そう思ったけど。


 自分の絵は、余計そう思う。

 なんか、きっと。
 ……オレを好きだと思いながら、描いてくれてたんだろうなと。
 伝わってくるみたいに描かれていて。


 ――――……全然、優月を見てない、オレを、
 こんな風に描いてる優月が、なんだか、とてつもなく、愛しい。


 ゆっくり、スケッチブックを閉じると。
 背もたれからスマホをおろして、ソファに置く。


 そのまま。
 静かな気持ちで、楽器の前に座る。

 さっきまで作っていた曲はひとまず置いておいて。
 なんだか浮かんできそうな気がして、ヘッドホンをつける。

 そのまま肘をついて、しばらく考えていたけれど。
 ――――……その内、弾き出した音は。

 なんだかオレにしては珍しい音で。

 
 一曲できるまでの時間。
 圧倒的に、最速記録、だったと思う。



 



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