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◇希生さんちへ
「全員」*優月
しおりを挟む「何から判断するとか、言える?」
希生さんが興味深そうに聞いてくる。んーそうですね、と盤上の駒を追う。
「おじいちゃんに習ったのは……王が安全かとか、攻撃できる駒がどこにどれだけあるか、とか……飛車とか角の位置とか、次に取られそうな駒が何か、とか色々言われてたんですけど……」
しばらく眺めて、つい、クスクス笑ってしまった。
「いい勝負ってことしか、分かんないです。オレ、そんなに何手も先まで読める訳じゃないので」
そう言うと、希生さんと久先生は、何だかとっても楽しそう。
「これが終わったら、優月、やる?」と久先生に言われる。
「私もやってみたいなぁ」と希生さん。
「えっと……」
うーん、と考えてから。
「おじいちゃんみたいに手加減してもらえたら」
クスクス笑いながらそう言ってみると、二人とも、いいよーと笑う。
……なんかほんとにおじいちゃんみたいだな。
勝負を再開した二人。動いていく駒を見ながら、そんなことを思う。
懐かしいなあ、ほんとに。将棋を打つ音も。
――ふと、オレ、何しにきてたんだっけ。
と思ってしまうほどだけど。
……なんとなく。
お互いが、どんな人なのかは、知り合えたような気がするから。
これで、いいのかなと、思う。
玲央とのことをちゃんと許してもらうとかより、それが一番先だよね……。
見守ってくれそうな雰囲気は、すごく感じるし。
なんか、蒼くんと玲央も仲良しになりそうだし。
あ、それは結構前からかぁ。蒼くんは、玲央に優しかったな、最初から。
年違うけど、なんかいい友達……になりそうな……? 友達ではないかな?
「あ。たんま」
「たんまはなし」
希生さんの言葉に、久先生がクスクス笑う。
「あー失敗だな、今の」
「だろうね」
二人のやりとりにクスクス笑っていると、希生さんがオレを見つめた。
「優月くん、ちょっとこっちおいで」
「?? はい」
立ち上がって、希生さんの隣に座って、はい、と希生さんを見ると。
「一緒に考えよ」とオレに言った希生さんに、久先生が、ぷ、と笑い出した。
「希生……」
「ここから立て直すの大変だから。ちょっと相談してみたいし」
呆れて笑ってる久先生は、もう好きにしな、とすぐ口にした。
よしよし、と笑って、希生さんがオレを見る。
「優月くんならどこに置く?」
「えーと……」
「あ、久に聞こえないようにね」
そんな希生さんの言葉に久先生はますます可笑しそう。
それからわいわい言いながら、結局三人で相談しあうという変な将棋をしながら、楽しい時を過ごしていると、不意にドアが開いた。
「あ、居た」
部屋を覗いた玲央が笑いながら、蒼くんと一緒に入ってくる。
「気づいたら居ないし」
蒼くんの言葉に、オレは苦笑い。
「一応、気付いたら声かけようと思ったんだけど、ドア開けても二人とも気づかなかったよ?」
「悪い。マジで全然気づかなかった」
テーブルの近くに来た玲央が、困ったように苦笑い。
「そう、こいつ、突然、あれ、優月は?って、探し出すの」
蒼くんはクッと笑い出す。
「いや、出て行ったんだろ、て答えたんだけど……マジでキョロキョロ探してるからおかしくて」
ケタケタ笑ってる蒼くんに、玲央はとっても嫌そうな顔をしている。
「とか言って、蒼くんだって、全然気づかなかったし」
オレが言うと、希生さんが「負けず嫌いだからなーどっちも。夢中になりすぎだろ」と笑う。すると、久先生が、「希生もだろ」と苦笑して、「優月を仲間に引き込んだりしてなー?」とおかしそう。
とかいう久先生も、優月こっちもおいでーとか言ってたし。
ここにいる全員、負けず嫌いなのでは。
と、一人思って、ふ、と楽しい。
(2024/3/8)
3周年。の後書き♡
3年前の3/8にこのお話をエブリスタで書き始めました。
書きだした当初はもうちょっと玲央が、想いを認めるまで時間がかかる予定だったんですけど(笑) あれあれどんどん甘々に…。
丸3年も続けることになるなんて、思いませんでした。
エブリスタに投稿したのは、Fairytaleとかが先だったかなと思うんですけど……全然毎日とかじゃなくて、数か月に何回か、みたいな……。
恋なんかじゃないを投稿してから、
毎日毎日、書くようになりました(´∀`*)
書けば書くほど、他の話も書きたくなって、並行して書くように。
ちょっと今広げすぎかなと思ってますが💦少しずつ完結させていきますので。
まあ、3年間。いろんなことがありました。
それまでに経験したことのない類の、いやだなーて事もたまにはあったし。
でも。
それまでに体験したことない類の、嬉しいなってことが、
たくさんたくさんたくさん、ありました(*´ω`*)
恋なんかじゃないは、今エブリ・アルファ・フジョ・ムーン(最近再開)にアップしてますが。全部で17000ブクマ位かな。そんなにたくさんブクマしてもらえるとは思わなかったし。今も不思議ですが。
玲央と優月とゆかい?な仲間たちを可愛がってくださってありがとうございます。
4年めも ぼちぼち続けていくので。
よかったら引き続きお付き合いくださいませ。ではでは♡
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