「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第一章

4.

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 明日は、入学式。

 ――――……私は。高校の制服を、着てみた。



 悠斗と一緒に通うはずだった、高校の、制服。

 悠斗は着れなかった。
 ――――……私だけ。この学校の制服。

 小学校の卒業式も。中学の入学式も、卒業式も。
 二人で写真を撮った。

 一緒に写真。
 ――――……撮りたかった。

 すぐ、涙が浮かぶ。
 涙が枯れる日なんか、来ないと思う。

 

 ――――……でも頑張る。
 頑張るしか、ない。


 悠斗はきっと私に、頑張れって、言うと思うから。


 ……見せたかったな。この制服着たとこ。
 見てほしかった。

 似合うって。言ってくれたかな。
 もしかしたら。少し。照れたり。したかなあ……。


 照れくさそうに。笑うとこ。
 大好き。だった。


 今も――――……大好き。


「――――……」


 涙がまた溢れてきて。
 
 涙って、こんなに。
 堪えることすら間に合わないで、溢れ落ちるものなんだって。


 悠斗が、居なくなってから、思い知った。



「……あーもう……」


 だめだ。こんなんじゃ。

 悠斗は。泣いてるといつも慰めてくれた。
 泣かないでって言ってくれた。

 だから。泣いてちゃ、だめなんだ。



 溢れる涙が落ち着いて。
 顔が、まともになってから。

 一階に、下りた。 
 今日は休日。家族皆がリビングに居た。


「……おはよ」

 もうおはようの時間じゃないけど……。なんだかそれしか言えなかった。

 家族皆が、私を見て驚いてる。

 そうだ。お風呂とかで一階は通ったけど……リビングに顔を見せたのは、久しぶり、かも。

 皆、私が制服を着てることにもびっくりしてる。

「ごめんね。……私……頑張るから」

 そう言うと。
 皆が。ぐっと、泣くのを、堪えるみたいな顔をした。


 ――――……ごめんね。心配。かけて。
 心の中で、謝る。

「私、ちょっと……桜、見てくるね」

 私が悠斗とそこで会ったこと。皆、知ってる。あの日家族で花見に行って、人見知りの私が、初めて会う男の子とずっと遊んでて。それだけでも意外なことだったみたい。だから皆が、そこから覚えてる。

 その子が次の日になったら同じクラスで。それから一緒に通うことになって。ずっと桜の樹の下でおしゃべりして、ずっとずっと誰よりも仲良しだったことも。皆、知ってるから。


「気を付けてね」

 お母さんの、震える声を誤魔化すみたいな。笑い方。


「いってきます。すこし――――……長いかも……でも帰って来るから。 明日。学校だし」

 明日、学校に行くから。心配しないで。
 その意味を込めて、そう言ったら。

 皆、もう何も。言えないみたい。
 頷くだけ。

 …………涙もろいんだよね、うちの家族。


 引きずられて、また泣きそうになるけれど。
 なんとか耐えて、私は玄関から、外に出た。


 悠斗とお別れしたあの日以来。初めて、外に。


 卒業式の帰り道、肌寒かった気候は、すっかり春らしくなっていて。
 でも今日は少し風が強いみたいで。風が吹くと少しだけひんやりする。

 悠斗と、綺麗な桜の樹の下に居た時の、感覚。
 毎年、少し寒いね、なんて言いながら、お花見してたことを思い出す。



「――――……」

 色々な感情をぐっとこらえて。足を踏み出してみた。
 



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