「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第二章

6.

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 空手の練習と、悠斗と会う事で、春休みが過ぎていく。


 桜のつぼみが開かない事が、オレと悠斗の気がかりの一つで。

 明日は開くかとか言い続けて、日々、 花は咲かずに過ぎて行った。


 春休みも明日一日を残すとなった日の夕方も悠斗と話してから家に帰り、部屋のベッドで寝転がっていた。

 特に何を考えるともないのだけれど、何だかすごく。
 心がモヤモヤするというか。落ち着かない。


「伊織ー」

 父さんの声が台所の方から聞こえる。

「んー?」
「ごめん、手伝ってくれるー?」
「今行く」

 そう返事をして、台所に向かう。
 父さんが忙しそうに、夕飯の準備をしていた。


「仕事がものすごく長引いちゃってさ、夕飯遅くなっちゃいそうだから、手伝って? あ、大きいお皿を出してくれる?」

 言われるまま皿を出しながら。

「……長引いたそれって、除霊の仕事?」

 そう聞くと、「そうだよ」と返ってきた。
 大体、予定外に長引く時は、そういう時が多い。
 
「……どんな?」
「恨みの念が強い霊でね。ちょっと大変だったかなー」
「……ふうんそっか……じいちゃんは?」
「疲れて、今、お風呂」

 今日は二人で行ったのに、そんなに長引いたのか。


「そっか。ほんとお疲れ。……なー、父さん」
「ん?」

「すっげー穏やかな、変な霊が、居るんだけど……」

 不意に父さんが、オレをまっすぐに見つめた。

「……伊織、また憑かれてる?」

「あ、いや。――――……憑かれてはないかな。そいつは他に思いがあるから、別にオレには、憑いてない」

「そっか。まあ確かに連れて帰ってはきてないしね。……んー。害の無い霊もいるけど……やっぱり、生きてる人間とは違うからね。気を付けて」

 ――――……気を付けるとか。そんな必要なんか、全然無さそうな存在な気がするけど、あいつ。


「――――……公園の、桜の樹の下の、あいつなんだけどさ」
「……ああ、あの子か」

「……自然と、消えるまで、居ても平気かな?」

 オレの問いに、父さんは、一度手を止めた。

「ん。父さんも、今日見かけたけど。今の所は大丈夫だと思うよ」
「……そっか」

「でもあくまで霊だから。……人間とは違うから、それは覚えといて、気を付けておいて」
「分かったけど……何を気を付ける?」

「……霊と、見える能力のある人との間にね、波長みたいなのがあるんだよ。伊織とあの子が、すごく波長が合うってなると……」

「良い事だろ?」

「……波長が合いすぎると、逆に、何があるか分からないというか……」

 よく分からない。
 波長が合わないと、衝撃が生まれそうだけど――――……。

 合うと余計に?
 疑問に思いながら、質問を続ける。


「でもあいつ、全然。悪霊じゃないけど?」
「――――……それでも、危険な事もあるんだよ。とりあえず、なるべく、触れないようにして?」

「触った事はないけど」

「触れた時に――――……波長が合いすぎてると……」
「何があんの」

「――――……んー。まあ……それは、今はっきりとは言えないんだよね。正直、父さんでも、分からない部分多いし……」

「――――……」


 まあ。……大変だからこそ、除霊はいつも長引くんだろうけど。

 でも悠斗は、大丈夫そうだと。
 思ってしまうこれが、波長が合ってるという事なら。

 ……何か、危険なんだろうか。



「とりあえずさ、気を付けよう、とは思っといて? あと、距離は保って」


「ん。……分かった」



 頷いてその話を切り上げて、夕飯の支度を本格的に手伝い始めた。





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