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第2章
泡立て器、始動
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三人がハンバーガーを食べ終えた頃、ようやく機嫌の治ったビージルさんが話しかけてきた。
「ところで、アリサちゃんは何を頼みに来たんだい?」
「泡立て器です」
「アワダテキ?なんだい、そりゃあ?」
「これです」
ブラーギさんが作ってくれた泡立て器を見せる。
「おもしろい道具だねぇ。どうやって使うんだい?」
「材料を混ぜたり、泡立てたりする時に使うんです」
「混ぜたり、泡立てる?」
「やってみますね」
実践するのが、一番の説明だもんね。
私は持ってきた鞄から、卵とボウルを取り出す。
「アリサ、材料と道具を持ってきたの?荷物多い訳だ」
ドリーが言う。そう、やり方を見せようと準備してきたの。
「ビージルさん、台所を使ってもいいですか?」
「いいよ、何をするんだい?」
みんなで台所へ移動する。
まずは、卵を白身と黄身に分ける。ボウルに白身を入れ、泡立て器を手にとる。
「これで、白身を泡立てます」
シャカシャカシャカ。
泡立て器は手動だからね、がんばらなくちゃ。食堂の手伝いで、力はだいぶついたからね。泡立てしても辛くない…でもない。やっぱり大変。よく泡立てるとおいしいから、がんばる。魔法で泡立て器を動かせると、いいな。少しは…いやだいぶ楽できると思う。
シャカシャカシャカ。
透明だった白身が白っぽく泡立ってきた。
「「「おー」」」
ブラーギさんたちがのぞき込みながら、驚いている。
「すごいもんだねぇ」
ビージルさんが言う。
「泡立てる意味がわからん」
そう言いながら、ブラーギさんは私の手元をじっと見ている。
シャカシャカシャカ。
ふー、疲れた。さすがに、これだけ泡立てれば良いだろう。
「なにこれ、白身がすごくふくらんだわ!」
「たいしたもんだ」
ドリーが言うと、ビージルさんも同意する。
角が立つくらいまでがんばって泡立てたメレンゲ(白身)に、黄身と塩を少々入れる。メレンゲをつぶさないように、さっくりと混ぜる。
「コンロ、借りますね」
コンロの上に、フライパンを載せる。フライパンにバターを入れ、先ほどのメレンゲ卵を流し入れる。
キツネ色になるまで、弱火で焼く。
キツネ色になったら、半分に折り曲げ、少し焼く。
しばらく焼いたら、スフレオムレツのできあがり。
「さあ、熱いうちに食べましょう」
『早く食わせろ!』
シロガネが催促する。
「待って、待って」
スフレオムレツを6つに切り分ける。ひと口分になったけど、まずは泡立て器の見本の料理だから、いいよね。好評なら、もっと作るから。
「はい、どうぞ」
みんなで食べる。おいしい~。がんばったかいがあったよ。
「「ふわふわ~」」
「「旨い!」」
『これっぽっちじゃ、たらんぞ』
「なるほどねぇ。泡立てるって、すごいもんだ。混ぜるのも手早くやれそうだねぇ」
ビージルさんが言った。
「嬢ちゃんや。本当にこれは、ワシが作って、売っていいんじゃな?」
ブラーギさんが再確認してくる。
「いいですよ」
「あんた、それ本当かい?」
ビージルさんが私に確かめてくる。そうか、ビージルさんはまだこのこと、知らなかったね。
「はい。私は泡立て器を作ってもらいたかっただけですから」
「ありがとうよ。そうと決まれば、ブラーギ、どんどん泡立て器を作るんだよ。アタシはそれを宣伝して、どんどん売るからさ」
ビージルさんは、すごくはりきっている。
「そんなに、売れますか?」
「大丈夫さ。特に、料理人には売れると思うよ。奥さん方だって、便利な道具があれば、絶対買うしさ。そうだ、みんなが買いやすい、手頃な値段にしたいねぇ。それには、材料選びから始めないと。ブラーギ、忙しくなるよ!」
「ホッホォー、だが忙しいのは、作るワシとドードルじゃぞ?」
「何か言ったかい?」
「ホッホォー、別に…」
「親方。諦めて、オイラたち、がんばるしかないっすよ」
「ホッホォー、そうじゃなあ。ハアー」
えっと、頼んでよかったのかな?悪かったのかな?でも、泡立て器がいっぱい売れたら、ブラーギさんたちの懐が潤うんだから、良しとしよう。
~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただき、ありがとうございます。
「ところで、アリサちゃんは何を頼みに来たんだい?」
「泡立て器です」
「アワダテキ?なんだい、そりゃあ?」
「これです」
ブラーギさんが作ってくれた泡立て器を見せる。
「おもしろい道具だねぇ。どうやって使うんだい?」
「材料を混ぜたり、泡立てたりする時に使うんです」
「混ぜたり、泡立てる?」
「やってみますね」
実践するのが、一番の説明だもんね。
私は持ってきた鞄から、卵とボウルを取り出す。
「アリサ、材料と道具を持ってきたの?荷物多い訳だ」
ドリーが言う。そう、やり方を見せようと準備してきたの。
「ビージルさん、台所を使ってもいいですか?」
「いいよ、何をするんだい?」
みんなで台所へ移動する。
まずは、卵を白身と黄身に分ける。ボウルに白身を入れ、泡立て器を手にとる。
「これで、白身を泡立てます」
シャカシャカシャカ。
泡立て器は手動だからね、がんばらなくちゃ。食堂の手伝いで、力はだいぶついたからね。泡立てしても辛くない…でもない。やっぱり大変。よく泡立てるとおいしいから、がんばる。魔法で泡立て器を動かせると、いいな。少しは…いやだいぶ楽できると思う。
シャカシャカシャカ。
透明だった白身が白っぽく泡立ってきた。
「「「おー」」」
ブラーギさんたちがのぞき込みながら、驚いている。
「すごいもんだねぇ」
ビージルさんが言う。
「泡立てる意味がわからん」
そう言いながら、ブラーギさんは私の手元をじっと見ている。
シャカシャカシャカ。
ふー、疲れた。さすがに、これだけ泡立てれば良いだろう。
「なにこれ、白身がすごくふくらんだわ!」
「たいしたもんだ」
ドリーが言うと、ビージルさんも同意する。
角が立つくらいまでがんばって泡立てたメレンゲ(白身)に、黄身と塩を少々入れる。メレンゲをつぶさないように、さっくりと混ぜる。
「コンロ、借りますね」
コンロの上に、フライパンを載せる。フライパンにバターを入れ、先ほどのメレンゲ卵を流し入れる。
キツネ色になるまで、弱火で焼く。
キツネ色になったら、半分に折り曲げ、少し焼く。
しばらく焼いたら、スフレオムレツのできあがり。
「さあ、熱いうちに食べましょう」
『早く食わせろ!』
シロガネが催促する。
「待って、待って」
スフレオムレツを6つに切り分ける。ひと口分になったけど、まずは泡立て器の見本の料理だから、いいよね。好評なら、もっと作るから。
「はい、どうぞ」
みんなで食べる。おいしい~。がんばったかいがあったよ。
「「ふわふわ~」」
「「旨い!」」
『これっぽっちじゃ、たらんぞ』
「なるほどねぇ。泡立てるって、すごいもんだ。混ぜるのも手早くやれそうだねぇ」
ビージルさんが言った。
「嬢ちゃんや。本当にこれは、ワシが作って、売っていいんじゃな?」
ブラーギさんが再確認してくる。
「いいですよ」
「あんた、それ本当かい?」
ビージルさんが私に確かめてくる。そうか、ビージルさんはまだこのこと、知らなかったね。
「はい。私は泡立て器を作ってもらいたかっただけですから」
「ありがとうよ。そうと決まれば、ブラーギ、どんどん泡立て器を作るんだよ。アタシはそれを宣伝して、どんどん売るからさ」
ビージルさんは、すごくはりきっている。
「そんなに、売れますか?」
「大丈夫さ。特に、料理人には売れると思うよ。奥さん方だって、便利な道具があれば、絶対買うしさ。そうだ、みんなが買いやすい、手頃な値段にしたいねぇ。それには、材料選びから始めないと。ブラーギ、忙しくなるよ!」
「ホッホォー、だが忙しいのは、作るワシとドードルじゃぞ?」
「何か言ったかい?」
「ホッホォー、別に…」
「親方。諦めて、オイラたち、がんばるしかないっすよ」
「ホッホォー、そうじゃなあ。ハアー」
えっと、頼んでよかったのかな?悪かったのかな?でも、泡立て器がいっぱい売れたら、ブラーギさんたちの懐が潤うんだから、良しとしよう。
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