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世界救済委員会
第百九十二話 狩
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ダッダッダダッッ。
「はあ、はあ、はあ」
荒い呼吸音と堅い地面を蹴飛ばしていく音が合わさり逃走が奏でられていく。
木々が生い茂る森の中、疾走する獲物を追い立てていく。
犬を嗾け。
矢を放ち。
じわじわと体力を削り。
最後には、その尊厳ごと命を刈り取る。
古来より続く狩。
「あっちだあっちにいったぞ-」
上げられる雄叫びと固い地面を踏みにじっていく音が混じり合い蹂躙が合奏されていく。
大都会。ネオン輝き闇など一掃されたかのような華やかさ。
だが、一歩大通りから外れればそこは原始の森のような闇が広がっている。
乱立するビルとビルの間の隙間は木々の間を抜ける獣道。
聳え立つビルが生み出す闇は日の光月明かりを遮る木々が生み出す闇より深い。
森より深き闇に太古の本能が刺激されるのか狩猟本能に目覚めた男達が獲物を追い立てていく。
獲物は牝馬。
筋肉で締まった脚が躍動し、狭く上には配管やダクト下には散乱する生ゴミなどの森の獣道に劣らないトラップの如き障害をギャロップですり抜けていく。
右に左に跳躍し、腰まで伸びる栗色のポニーテールを右に左に靡かせていく。
深い闇の中にあって溢れる生命力に輝いている。
サラブレッド牝馬の如き少女が都会の森を必死に駆けていく。
追いすがる男達など障害物に躓き曲がり角でコーナーアウトし、ぐんぐん引き離されていく。
だが男達に焦りはない。
なぜなら狩において獲物が自分達より足が速いのは当然のこと。そこを知恵でもって獲物を追い込んでいくことこそ狩の醍醐味。
追い詰めて、必死に抵抗する獲物を力でねじ伏せ、全てを奪い取る。
これぞ勝者の快感。
男達はこの都会の森を知り尽くしていた。故に一方で真正直に追いかけながらも、要所要所には仲間を先回りさせて行く手を塞ぎ、少女を袋小路に追い込んでいく。
勝利は確実、だがこれだけ手こずらされるのは久しぶり。活きのいい獲物に興奮が高まっていく男達だった。
合コンでたまたま目に付いた少女。こっそりと酒にクスリを混ぜて意識を奪い、この都会の森で解放した。意識が戻って最初こそ戸惑っていた少女だったが、男達が欲望をぎらつかせただけで全てを悟ったように逃げ出した。賢い獲物は大好物である。狩が盛り上がる。
知恵を付くし、体力を振り絞り。獲物の柔肌の味を思い描いて。
最高にボルテージが高まった狩ももうすぐ終わる。
少女が躱して必死に走り抜けて飛び込んだのは三方をビルに囲まれた袋小路。
少女は慌てて振り返るが、来た道は既に男達に塞がれる。
ビルとビルの間に人が通れる隙間はない。外界から完全に遮断され空気が淀み腐っている空間。
ここから逃げるには男達の壁を越えていくしかない。だが男達の涎すら垂らし欲望ぎらつく顔を見てはそんな勇気は萎えてしまう。
「うひゃひゃひゃ~、てこずらかせやがって」
「やっやめて」
ビルの路地裏に面した背面。表は埃一つ無いほどに輝いているビルも裏に回れば、黴と汚臭が染みつき黒ずんでいる。触れただけで汚物がこびり付きそうなその壁に少女は男共の欲望に押され背が付くほどに追い込まれる。
右手を翳し必死に男達に思い止まってくれるように懇願する。
「それは無理だな。俺達は狩人。獲物を前にしてお預けなんて出来るわけがない」
「狩られる獲物の末路は悲惨だぜ~」
「おいおい、まだ折れるなおよ。もっと抵抗してみろよ」
「優しくする優しくするから」
「精々俺達に媚びるんだな。そうすれば犯されるだけで済むかもな」
にたにたと笑い悪意を放出する男共。
今回の狩に参加したのは5人ぞれぞれが美しい牝馬に歯を立てる瞬間を想像し下半身が早くも隆起している。
悪意がこびりつき腐臭すら漂ってくる男達の姿に、少女は見ることさえ耐えかねるのか両目を瞑る。
観念したかと男達が一歩動く前、少女の目は開かれた。
「それが貴方の悪意なのね」
怯えていた少女が急に凜々しい顔付きとなって男共を睥睨する、嚇灼の色に染まった瞳。
「!」
「悪意に満ちた者達よ、宵闇に惑え」
少女の怒気に呼応するように路地裏に真っ赤な水滴のようなものが無数に浮き出てくる。無数の真っ赤な水滴は少女に纏わり付くように渦を為して回っていく。
「なっなんだこれは」
「気持ち悪い」
赤い渦。なんと禍々しいのか。人間の持つ悪意を抽出したような真っ赤な渦に当てられ男達の顔は真っ青になっていく。
「気持ち悪い?」
少女はニッコリと男達に問い掛ける。
「うごっ」
「げええええええええ」
だが男達は込み上げる吐き気に応えるどころじゃない。
そんな男達を汚物を見るような侮蔑の目で哀れに思う慈悲の目で復讐を誓う嚇怒の目で
三種混じった嚇灼の瞳で見詰め忠告するように警告するように諭すように最後通達する。
「これは貴方達が放った悪意。己の業に恐れるなら悔い改めなさい」
「巫山戯んなこんな手品で俺達が怖じ気づくと思うなよ」
主犯格らしい男が悪意に当てられても己の欲望を失い事無く少女に牙を剥く。主犯格に勇気づけられ他の男達も闘志を蘇らせていく。
ゲロの付いた口を拭き取り背筋を伸ばし少女を睨み付ける。
「そうそれが貴方達の答えなのね」
少女から嚇怒以外の感情が消え悪意の渦に手を入れて回し出す。少女の細い指に梳かれ悪意から細い糸が紡がれていく。
「これ以上手品をさせるなっ」
「「「おうっ」」」
男達が一斉に少女に襲い掛かっていくが、男達の牙が少女に届くより先に少女は悪意の糸を紡いで縒って、男達に向けた指に収斂させる。
「悪意の負債を受け取りなさい、クリムゾンニードル」
収斂され細く赫く輝くニードルが男達の胸に打ち込まれるのであった。
「はあ、はあ、はあ」
荒い呼吸音と堅い地面を蹴飛ばしていく音が合わさり逃走が奏でられていく。
木々が生い茂る森の中、疾走する獲物を追い立てていく。
犬を嗾け。
矢を放ち。
じわじわと体力を削り。
最後には、その尊厳ごと命を刈り取る。
古来より続く狩。
「あっちだあっちにいったぞ-」
上げられる雄叫びと固い地面を踏みにじっていく音が混じり合い蹂躙が合奏されていく。
大都会。ネオン輝き闇など一掃されたかのような華やかさ。
だが、一歩大通りから外れればそこは原始の森のような闇が広がっている。
乱立するビルとビルの間の隙間は木々の間を抜ける獣道。
聳え立つビルが生み出す闇は日の光月明かりを遮る木々が生み出す闇より深い。
森より深き闇に太古の本能が刺激されるのか狩猟本能に目覚めた男達が獲物を追い立てていく。
獲物は牝馬。
筋肉で締まった脚が躍動し、狭く上には配管やダクト下には散乱する生ゴミなどの森の獣道に劣らないトラップの如き障害をギャロップですり抜けていく。
右に左に跳躍し、腰まで伸びる栗色のポニーテールを右に左に靡かせていく。
深い闇の中にあって溢れる生命力に輝いている。
サラブレッド牝馬の如き少女が都会の森を必死に駆けていく。
追いすがる男達など障害物に躓き曲がり角でコーナーアウトし、ぐんぐん引き離されていく。
だが男達に焦りはない。
なぜなら狩において獲物が自分達より足が速いのは当然のこと。そこを知恵でもって獲物を追い込んでいくことこそ狩の醍醐味。
追い詰めて、必死に抵抗する獲物を力でねじ伏せ、全てを奪い取る。
これぞ勝者の快感。
男達はこの都会の森を知り尽くしていた。故に一方で真正直に追いかけながらも、要所要所には仲間を先回りさせて行く手を塞ぎ、少女を袋小路に追い込んでいく。
勝利は確実、だがこれだけ手こずらされるのは久しぶり。活きのいい獲物に興奮が高まっていく男達だった。
合コンでたまたま目に付いた少女。こっそりと酒にクスリを混ぜて意識を奪い、この都会の森で解放した。意識が戻って最初こそ戸惑っていた少女だったが、男達が欲望をぎらつかせただけで全てを悟ったように逃げ出した。賢い獲物は大好物である。狩が盛り上がる。
知恵を付くし、体力を振り絞り。獲物の柔肌の味を思い描いて。
最高にボルテージが高まった狩ももうすぐ終わる。
少女が躱して必死に走り抜けて飛び込んだのは三方をビルに囲まれた袋小路。
少女は慌てて振り返るが、来た道は既に男達に塞がれる。
ビルとビルの間に人が通れる隙間はない。外界から完全に遮断され空気が淀み腐っている空間。
ここから逃げるには男達の壁を越えていくしかない。だが男達の涎すら垂らし欲望ぎらつく顔を見てはそんな勇気は萎えてしまう。
「うひゃひゃひゃ~、てこずらかせやがって」
「やっやめて」
ビルの路地裏に面した背面。表は埃一つ無いほどに輝いているビルも裏に回れば、黴と汚臭が染みつき黒ずんでいる。触れただけで汚物がこびり付きそうなその壁に少女は男共の欲望に押され背が付くほどに追い込まれる。
右手を翳し必死に男達に思い止まってくれるように懇願する。
「それは無理だな。俺達は狩人。獲物を前にしてお預けなんて出来るわけがない」
「狩られる獲物の末路は悲惨だぜ~」
「おいおい、まだ折れるなおよ。もっと抵抗してみろよ」
「優しくする優しくするから」
「精々俺達に媚びるんだな。そうすれば犯されるだけで済むかもな」
にたにたと笑い悪意を放出する男共。
今回の狩に参加したのは5人ぞれぞれが美しい牝馬に歯を立てる瞬間を想像し下半身が早くも隆起している。
悪意がこびりつき腐臭すら漂ってくる男達の姿に、少女は見ることさえ耐えかねるのか両目を瞑る。
観念したかと男達が一歩動く前、少女の目は開かれた。
「それが貴方の悪意なのね」
怯えていた少女が急に凜々しい顔付きとなって男共を睥睨する、嚇灼の色に染まった瞳。
「!」
「悪意に満ちた者達よ、宵闇に惑え」
少女の怒気に呼応するように路地裏に真っ赤な水滴のようなものが無数に浮き出てくる。無数の真っ赤な水滴は少女に纏わり付くように渦を為して回っていく。
「なっなんだこれは」
「気持ち悪い」
赤い渦。なんと禍々しいのか。人間の持つ悪意を抽出したような真っ赤な渦に当てられ男達の顔は真っ青になっていく。
「気持ち悪い?」
少女はニッコリと男達に問い掛ける。
「うごっ」
「げええええええええ」
だが男達は込み上げる吐き気に応えるどころじゃない。
そんな男達を汚物を見るような侮蔑の目で哀れに思う慈悲の目で復讐を誓う嚇怒の目で
三種混じった嚇灼の瞳で見詰め忠告するように警告するように諭すように最後通達する。
「これは貴方達が放った悪意。己の業に恐れるなら悔い改めなさい」
「巫山戯んなこんな手品で俺達が怖じ気づくと思うなよ」
主犯格らしい男が悪意に当てられても己の欲望を失い事無く少女に牙を剥く。主犯格に勇気づけられ他の男達も闘志を蘇らせていく。
ゲロの付いた口を拭き取り背筋を伸ばし少女を睨み付ける。
「そうそれが貴方達の答えなのね」
少女から嚇怒以外の感情が消え悪意の渦に手を入れて回し出す。少女の細い指に梳かれ悪意から細い糸が紡がれていく。
「これ以上手品をさせるなっ」
「「「おうっ」」」
男達が一斉に少女に襲い掛かっていくが、男達の牙が少女に届くより先に少女は悪意の糸を紡いで縒って、男達に向けた指に収斂させる。
「悪意の負債を受け取りなさい、クリムゾンニードル」
収斂され細く赫く輝くニードルが男達の胸に打ち込まれるのであった。
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