俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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世界救済委員会

第245話 人権

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「いい加減白状したらどうだ?」
 グレーの壁に圧迫される薄暗く狭い取調室。
 武器類は仕方ないとして、スマフォ財布まで取り上げられ外部との連絡手段を絶たれてしまい孤立状態。
 止めにコートすら取り上げら、薄寒さを感じる。
 粗末な机と尻が痛くなる椅子に長時間座らされ、向かいから厳つい中年のオッサンに怒鳴られ続け目を瞑ることすら許されない。
 心理的肉体的拷問だな。
「白状するも何も俺は任務であそこにいたと言っているだろう。
 照会はしてくれたのか?」
 まさか連行後そのまま取調室に連れ込まれ、刑事が入れ替わり立ち替わりで尋問してきて一睡もさせて貰えないとは思わなかった。
 俺を銃と爆弾を持ったテロリストにでもしたいのかというか、そういう推理だか筋書きが出来上がっていて、それ以外は頑として受け付けようとしない。
 俺は此奴等が望むストーリーを自白するまで解放されないだろう。
 典型的、決めつけ。
 冤罪。
 正直認識が甘かったとしか言いようがない。
 逮捕されたが最後人権など無い、強者にいたぶられる弱者の末路しかない。
「はいはい、公安公安。だったら僕は階級は何何でちゅか~」
 此方を馬鹿に仕切った顔で臭い息を吹き付けてくる。
「警部だと言っている」
「はあ~馬鹿にしてんのか、お前のような若造が成れるわけ無いだろ」
 キャリアなら成れるだろ。もっともそのキャリアがこんな最前線に立つことなど無いから、この刑事が言うことも分かる。
 だが決めつけるな。
 時間は分からないが感覚的にもう朝には成っているはず、幾ら何でも公安とは連絡が付くはず。さもなくば波柴か黒田でもいい。
「事実だ」
「ならその警部さんはあそこで何をしていたんですかね」
「だから事件の捜査と言っている」
「何の捜査だ」
「それは言えない」
 秘匿事項の魔関連の事件をおいそれと吹聴できるわけがない。
 必要なら躊躇うことなくするが、今回は場合が場合。
 それにだ、真実を言ったら此奴は輪を掛けて馬鹿にするなと怒り狂うだけだ。公安、如月さんと連絡が付くまでの辛抱だ。
「はあ~強情だね~警部さんは、おっと自称か」
 クソ野郎が。
 俺の怒りがマックスに達しようとする寸前にドアが開かれ一人の刑事が入ってくる。入ってきた刑事は取り調べをしていた刑事に耳打ちする。
「ほう」
 耳打ちされた刑事がかつて俺を虐めていた連中と同じような顔をする。
 俺にその顔を向けた奴を俺はただじゃおかないと決めていた。もう勘違いとかで済ませてやる気はなくなった。
「んっん、公安からの回答だ。
 お前みたいな奴は知らないとよ」
「如月警視が確かにそう言ったのか?」
「もうお前の妄想に付き合う必要は無くなったぞ。
 ここからは加減は無しだ」
 こんな人権無視の尋問をしておいて加減していただと?
「さあ、言え。銃まで持って何を企んでいた」
 だが確かに刑事の態度に力強さが加わった。
 つまり本当に照会したということなのか?
 如月さんに見捨てられた?
 それともブラフで本当は照会をしていない?
 どっちだか確かめる術は無い、この刑事じゃないか情報が少ない中の決めつけは余計な敵を作るだけだ。
 事実関係を確かめた後に然るべき報復をする。

 刑事の罵声を浴びつつも頭の中では事態の推測を行っていく。
 単なる思い込み逮捕なのか裏に何かあるのか。
 如月さんが俺を切り捨てざる得ない状況は何だ? それは俺が知らず虎の尾を踏んでしまい巻き添えを恐れた場合。これはあり得るが、今のところ踏んでしまった虎の尾が思い当たらない。
 五津府や波柴より上の警察幹部?
 そもそも、あの作戦が殻に漏れていた時点で警察内部の裏切り者がいることは確実。それの差し金なのか?
 だとしたらこの拘留は時間稼ぎと仮定すれば筋が通ってしまう。
 それなら時間を稼ぐ必要が無くなれば解放されるのも予想出来てしまう。
 大人しく嵐が吹く去るのを待つのも手かも知れない。何も嵐に立ち向かうばかりが正解じゃない、嵐が収まった後にこそ暴れるチャンスがやってくる。
 どっちにしろやれることは少ないが、やれることはどんなに小さいことでもやっておくか。
「誰の差し金だ」
 口を開くくらいは出来ると、唯一出来るカマ掛けをしてみた。
 馬鹿にしたもんじゃ無い、万が一にも上手く言えけば一気に裏が分かる。
「ああ~なんのことだ」
 さあ、ここが勝負。 
 十数名の候補から俺は勘で一枚を選んで切る。
「黒田か」
 切って正面の刑事を見据える。
 流石ベテランの刑事だが俺も必死だ。僅かほんの僅かだが頬が引きつったのを見逃さなかった。
 黒田なのか。少なくてもこの刑事と何か関係はある。
「その目、生意気な若造だ、だがここからは優しくないぞ。
 ちょいと世間の礼儀を叩き込んでやるか。
 おいっ」
 刑事が顎をくいっとすれば、後ろに控えていた刑事が俺の襟首を持って俺を無理矢理立たせると、壁に押しつけてきた。
「なんだ。流行の壁ドンか」
「口のへらねえ若造だ」
「顔は辞めておけよ」
 尋問していた刑事が手慣れたように指示する。
「分かってるよっ」
「うごっ」
 腹に鈍い衝撃が走った。
 角度が入ったいい蹴りだ。腹が減ってなければ吐いていたかも知れない。
 まさか暴力まで使うとは、俺はまだまだ甘く世間知らずだったようだ。
 この衝撃で俺の心理的ストッパーが一つ外れてしまった。

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