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第二十一話 痴漢冤罪
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時雨さんの言葉を聞いたときにはカフェから飛び出していた。
「どこだ」
『一番近くの化粧室』
化粧室だと。俺は案内板を見て場所を確認する。幸い紛らわしい化粧室は無い。一番近くと言われれば一つしか無い。
「ちょちょっと」
走り出そうとしたところで後ろから声を掛けられ振り返れば矢木がいた。
「急に飛び出して、一体どうしたの?」
「無駄話している暇は無い。時雨が危ない」
俺は言うだけ言うと返事を待つこと無く走り出した。そして直ぐさま化粧室の看板を見つけ角を曲がり脇の通路に入る。
直ぐさま赤い三角マークを見付けた。
下手すれば人生終わるなと躊躇うこと数秒、中に入ろうとしたところで肩を掴まれ止められた。
「ちょっとあんた何処に入る気だ」
「離せっ」
「ここ入ったら痴漢じゃん。わかってんの」
「時雨さんが俺に助けを求めてくれたんだ。答えなきゃ彼氏じゃ無いだろ」
時雨さんの彼氏をやるんだ、並大抵じゃ無いことくらい覚悟している。
「それにレッテルを貼られるのは慣れてるさ」
貼られたレッテルは破ればいいが、自ら離した時雨さんの手は二度と掴めない。
「何言ってんだよ、あんた」
俺はこれ以上は問答無用と矢木の手を払い女子トイレに突入した。入口から直に化粧室に繫がっているタイプで無く、外から見られないように通路が一本挟まっている。俺は入口に入って右に90°回って進んで突き当たりを左に90°回って突入した。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺が化粧室に入ると中で化粧を直していた女性に悲鳴を上げられた。
「ちっ痴漢よ」
「時雨、化粧室の何処だ」
繋ぎっぱなしにしていたスマフォで尋ねる。
「変態ッ」
「出て行きなさいよ」
「警察呼ぶわよ」
今は雑音を気にしている時じゃ無い。中で化粧をしていたり、空くのを待っていた女性達数名に侮蔑の視線を投げかけられるが、かつてクラス中に向けられた心をズタボロにしていく針の視線に比べれば、こそばゆい。
『一番奥』
俺は直ぐさま奥の個室の前に行きドアを蹴破る。
「ちっ」
其処には下半身を晒した見知らぬ少女、こちらを戸惑いの目で見上げてくる。
「失礼した」
紳士的に頭を下げて詫びる。
「きっきっきゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
『何か凄い声が聞こえるけど。何か無茶してない』
「気にするな。それより、今奥の個室を見たがいないぞっ」
『そっそんな。ボクは、きゃあっ』
「どっどうした」
悲鳴を最後に時雨さんとの連絡が途絶えた。
まっまずい。急がないと。でも現実問題、時雨さんは今ここにいない。いるのは騒ぎ立てる女だけ。まずい。ぐずぐずしていると警備員を呼ばれてしまい、身動きが出来なくなる。
時間が無い。それでも考えろ。考えなくては動けない。
可能性として、時雨さんが俺を排除する為に騙した。かつて俺を虐めた連中のように俺を騙して笑い者にする。それならそれでいい。美しいと思った時雨さんに裏切られるというなら、俺の人生終わりというだけだ。だから、この可能性についての考察はこれで終わりだ。
場所を間違えた。これが一番可能性が高いが、だったら何処だ? 下の階か上の階か、同階の別の化粧室か? 時間さえあればどんなに徒労になろうとも端から探すが、今そんな時間があるとは思えない。それに、カフェから一番近いのはここであっている。なのにいない。
思考を視点を変えろ。
時雨さんが並大抵のことで助けを求めるわけが無い、十中八九怪異がらみだろう。
怪異、時雨さんに言わせればユガミ。共通認識の歪みから生まれしもの、認識の枠外に存在する認識。
ふっと入り込んでしまう世界。
RPGの隠し通路のようなものと思えばいいのか。真っ直ぐ進めば見えないが、ふと振り返ればふと見える。
「どけっ」
俺は騒ぎ立てる女達を一喝して押しのけ一旦化粧室から出ると振り返る。
其処にあるのは赤い三角マーク。
再度入口に入った。入って右に回る。その先には真っ直ぐな通路の先に壁が見える。壁に向かって歩き出し、壁の手前で停止する。ここで左に旋回しつつ、前に進めば女達が騒ぐ化粧室に入ってしまう。ならばだ。ここでそのまま回っていき、ふと振り返る。見えるは外部と化粧室を遮る壁のフチ。その縁に何やら重なって隙間が見える。
「隠し通路発見」
俺は隙間の先時雨さんと繫がっていると信じて飛び込んだ。
そして誰もいない化粧室に入った。
「どこだ」
『一番近くの化粧室』
化粧室だと。俺は案内板を見て場所を確認する。幸い紛らわしい化粧室は無い。一番近くと言われれば一つしか無い。
「ちょちょっと」
走り出そうとしたところで後ろから声を掛けられ振り返れば矢木がいた。
「急に飛び出して、一体どうしたの?」
「無駄話している暇は無い。時雨が危ない」
俺は言うだけ言うと返事を待つこと無く走り出した。そして直ぐさま化粧室の看板を見つけ角を曲がり脇の通路に入る。
直ぐさま赤い三角マークを見付けた。
下手すれば人生終わるなと躊躇うこと数秒、中に入ろうとしたところで肩を掴まれ止められた。
「ちょっとあんた何処に入る気だ」
「離せっ」
「ここ入ったら痴漢じゃん。わかってんの」
「時雨さんが俺に助けを求めてくれたんだ。答えなきゃ彼氏じゃ無いだろ」
時雨さんの彼氏をやるんだ、並大抵じゃ無いことくらい覚悟している。
「それにレッテルを貼られるのは慣れてるさ」
貼られたレッテルは破ればいいが、自ら離した時雨さんの手は二度と掴めない。
「何言ってんだよ、あんた」
俺はこれ以上は問答無用と矢木の手を払い女子トイレに突入した。入口から直に化粧室に繫がっているタイプで無く、外から見られないように通路が一本挟まっている。俺は入口に入って右に90°回って進んで突き当たりを左に90°回って突入した。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺が化粧室に入ると中で化粧を直していた女性に悲鳴を上げられた。
「ちっ痴漢よ」
「時雨、化粧室の何処だ」
繋ぎっぱなしにしていたスマフォで尋ねる。
「変態ッ」
「出て行きなさいよ」
「警察呼ぶわよ」
今は雑音を気にしている時じゃ無い。中で化粧をしていたり、空くのを待っていた女性達数名に侮蔑の視線を投げかけられるが、かつてクラス中に向けられた心をズタボロにしていく針の視線に比べれば、こそばゆい。
『一番奥』
俺は直ぐさま奥の個室の前に行きドアを蹴破る。
「ちっ」
其処には下半身を晒した見知らぬ少女、こちらを戸惑いの目で見上げてくる。
「失礼した」
紳士的に頭を下げて詫びる。
「きっきっきゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
『何か凄い声が聞こえるけど。何か無茶してない』
「気にするな。それより、今奥の個室を見たがいないぞっ」
『そっそんな。ボクは、きゃあっ』
「どっどうした」
悲鳴を最後に時雨さんとの連絡が途絶えた。
まっまずい。急がないと。でも現実問題、時雨さんは今ここにいない。いるのは騒ぎ立てる女だけ。まずい。ぐずぐずしていると警備員を呼ばれてしまい、身動きが出来なくなる。
時間が無い。それでも考えろ。考えなくては動けない。
可能性として、時雨さんが俺を排除する為に騙した。かつて俺を虐めた連中のように俺を騙して笑い者にする。それならそれでいい。美しいと思った時雨さんに裏切られるというなら、俺の人生終わりというだけだ。だから、この可能性についての考察はこれで終わりだ。
場所を間違えた。これが一番可能性が高いが、だったら何処だ? 下の階か上の階か、同階の別の化粧室か? 時間さえあればどんなに徒労になろうとも端から探すが、今そんな時間があるとは思えない。それに、カフェから一番近いのはここであっている。なのにいない。
思考を視点を変えろ。
時雨さんが並大抵のことで助けを求めるわけが無い、十中八九怪異がらみだろう。
怪異、時雨さんに言わせればユガミ。共通認識の歪みから生まれしもの、認識の枠外に存在する認識。
ふっと入り込んでしまう世界。
RPGの隠し通路のようなものと思えばいいのか。真っ直ぐ進めば見えないが、ふと振り返ればふと見える。
「どけっ」
俺は騒ぎ立てる女達を一喝して押しのけ一旦化粧室から出ると振り返る。
其処にあるのは赤い三角マーク。
再度入口に入った。入って右に回る。その先には真っ直ぐな通路の先に壁が見える。壁に向かって歩き出し、壁の手前で停止する。ここで左に旋回しつつ、前に進めば女達が騒ぐ化粧室に入ってしまう。ならばだ。ここでそのまま回っていき、ふと振り返る。見えるは外部と化粧室を遮る壁のフチ。その縁に何やら重なって隙間が見える。
「隠し通路発見」
俺は隙間の先時雨さんと繫がっていると信じて飛び込んだ。
そして誰もいない化粧室に入った。
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