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第二十六話 スジ
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「それでなぜ私に連絡をする?
いや確かに何かあったら連絡してくれとは言ったが」
ファミレスは新たな客を迎え、俺の隣に前埜さんが座る。
多分前埜さんは時雨さん絡みで何かあったら連絡が欲しいという意図があって名刺を渡したと思うが、明言はしなかったので意図を読まないことにした。
「怪異、ユガミでしたか。こんな一学生に過ぎない俺では、これが彼女の妄想なのか本当なのか判断しかねますので、取り返しが付かないことになる前にプロに頼むことにしただけですよ」
「それにしたって。君なら喜び勇んで時雨に連絡すると思っていたが」
「これは仕事の話です。上司であるあなたに連絡するのが筋だと思いまして」
部下が勝手に仕事を受けていい顔する上司はいない。遊びじゃない以上、きちんと筋を通さないと時雨さんに迷惑が掛かるかも知れない。
「君、変なところで律儀だね」
前埜さんは苦笑した。
確かに俺は嫌な奴に徹し切れてないな。やはりここはなりふり構わず時雨さんに会うことを優先すべきだったかも知れないが、俺のチキンハートじゃ時雨さんに迷惑掛けたかも知れないと時雨さんに会うときに負い目を感じてしまう。それじゃ時雨さんの美しさを心から堪能できないじゃないか。
はあ~そんなこと気にしない、真の嫌な奴になりたいものだ。そうすれば人生楽しいだろうな。
「失礼な、俺は筋は通すタイプですよ」
弱い俺は筋を通していく、そうで無くては強い奴らと張り合えない。
「そうか。まあ私も忙しい身だ。仕事というならさっさと始めよう。
大友さん」
前埜さんは微笑みながら聞いているだけ蕩けそうな声で大友に優しく話しかけた。
「はっはい」
さっきまで幽鬼気味だった大友の顔に朱が射す。
「申し訳ないけど、もう一度説明して貰えるかな」
「はっはい。喜んで」
さっき俺と話したときと全く違って、声に張りがある。
話しかけるだけで人に好かれる。俺には絶対に出来ない芸当だな。持って生まれたこの能力の格差を実感させてくれるぜ。
「そうか。事情はよく分かりました。怖かったでしょうに、良く耐えましたね」
「信じてくれるんですか」
「勿論です」
「頭おかしいから病院に行けとか言わないんですか」
「そんな酷い事言うわけ無いでしょう」
すいません。俺は言いました。
「それでは」
「はい。一流のプロを呼びます。また彼等が怪異を退治するまでの間はあなたに護衛を付けます」
「そこまでしてくれるんですか」
大友は感涙している。今もう等すれば前埜の信者にでも成りそうだな。
「でも私そんなにお金」
「死んでしまっては何にもなりません。私達もプロですので無料と言うわけにはいきませんが、料金についてはこの件を乗り越えてから話し合いましょう」
「ありがとうございます。お金は絶対に作ります」
ホストにのぼせる女性ってこんな感じなのかな~と醒めた目で俺は見ている。大友はのぼせ上がっていて気付いてないようだが、今さらっと恐ろしいことを言ったぞ。
死んでしまっては何にもなりません。つまり彼女は殺される可能性があると言うことだぞ。そんなにも彼女は危ないのか、そんなのに俺は関わってしまったのか。
ちらっと西村の方を見れば、西村は青ざめた顔をしている。
「果無君」
「何か」
凄い嫌な予感がする。俺は相談する相手を間違えたか。
「出来るだけ急ぎますが人を揃えるのに明日までは掛かります。
申し訳ありませんが、明日まで彼女の護衛をお願いします」
丁寧な口調だが、逆らえない圧迫を感じる。だが、撥ね除ける。俺が引き受けなければならない筋は無い。
「俺は素人だぞ。それに当たり前のように言うが俺はあなたの部下じゃ無いぞ」
「この話を私に振った責任を取りなさい。まさか、仕事を他人に投げて後は知らぬ存ぜずをするような無責任な男じゃないですよね。もしそうなら時雨との交際・・・」
「分かった。分かったから皆まで言うな」
お前は時雨さんのお父さんか。だが時雨さんが好きな人だ、父親よりも影響力があるのが癪に障る。
「だがもう一度言うが俺は素人だぞ」
「構いません。彼女を一人にしないことが大事なのです。
それに仕事と言った以上給料も出しましょう」
「それは嬉しいことで」
命と釣り合う値段ならいいがな。
「では今から護衛をお願いします」
「今から」
「はい。私は一旦事務所に戻りますが、くれぐれも彼女を一人しないように」
「まっ待てよ。それじゃ俺は今夜彼女の家に泊まれって事か」
「そうです。外から見張るでは駄目です。素人のあなた一人で外から全方位監視できるわけがありません。彼女の家に行き傍にいなさい」
「俺は健康な男子だぞ」
怪異も怖いが性欲が暴走する男も女性にとっては等しく怖いだろ。
「そこは信頼します」
薄っぺらい言葉で俺が納得するか。生憎だが、俺にお前のイケメンは通用しない。
「俺の事なんぞほとんど知らないくせに」
「いいえ。私は時雨が浮気を絶対に許さないことを知っています。あの娘は勘がいいですよ」
「あんた意外とえげつないな」
「大人ですから」
前埜は黒く笑うのであった。
ちきしょう今の顔、時雨さんに見せてやりたいぜ。
いや確かに何かあったら連絡してくれとは言ったが」
ファミレスは新たな客を迎え、俺の隣に前埜さんが座る。
多分前埜さんは時雨さん絡みで何かあったら連絡が欲しいという意図があって名刺を渡したと思うが、明言はしなかったので意図を読まないことにした。
「怪異、ユガミでしたか。こんな一学生に過ぎない俺では、これが彼女の妄想なのか本当なのか判断しかねますので、取り返しが付かないことになる前にプロに頼むことにしただけですよ」
「それにしたって。君なら喜び勇んで時雨に連絡すると思っていたが」
「これは仕事の話です。上司であるあなたに連絡するのが筋だと思いまして」
部下が勝手に仕事を受けていい顔する上司はいない。遊びじゃない以上、きちんと筋を通さないと時雨さんに迷惑が掛かるかも知れない。
「君、変なところで律儀だね」
前埜さんは苦笑した。
確かに俺は嫌な奴に徹し切れてないな。やはりここはなりふり構わず時雨さんに会うことを優先すべきだったかも知れないが、俺のチキンハートじゃ時雨さんに迷惑掛けたかも知れないと時雨さんに会うときに負い目を感じてしまう。それじゃ時雨さんの美しさを心から堪能できないじゃないか。
はあ~そんなこと気にしない、真の嫌な奴になりたいものだ。そうすれば人生楽しいだろうな。
「失礼な、俺は筋は通すタイプですよ」
弱い俺は筋を通していく、そうで無くては強い奴らと張り合えない。
「そうか。まあ私も忙しい身だ。仕事というならさっさと始めよう。
大友さん」
前埜さんは微笑みながら聞いているだけ蕩けそうな声で大友に優しく話しかけた。
「はっはい」
さっきまで幽鬼気味だった大友の顔に朱が射す。
「申し訳ないけど、もう一度説明して貰えるかな」
「はっはい。喜んで」
さっき俺と話したときと全く違って、声に張りがある。
話しかけるだけで人に好かれる。俺には絶対に出来ない芸当だな。持って生まれたこの能力の格差を実感させてくれるぜ。
「そうか。事情はよく分かりました。怖かったでしょうに、良く耐えましたね」
「信じてくれるんですか」
「勿論です」
「頭おかしいから病院に行けとか言わないんですか」
「そんな酷い事言うわけ無いでしょう」
すいません。俺は言いました。
「それでは」
「はい。一流のプロを呼びます。また彼等が怪異を退治するまでの間はあなたに護衛を付けます」
「そこまでしてくれるんですか」
大友は感涙している。今もう等すれば前埜の信者にでも成りそうだな。
「でも私そんなにお金」
「死んでしまっては何にもなりません。私達もプロですので無料と言うわけにはいきませんが、料金についてはこの件を乗り越えてから話し合いましょう」
「ありがとうございます。お金は絶対に作ります」
ホストにのぼせる女性ってこんな感じなのかな~と醒めた目で俺は見ている。大友はのぼせ上がっていて気付いてないようだが、今さらっと恐ろしいことを言ったぞ。
死んでしまっては何にもなりません。つまり彼女は殺される可能性があると言うことだぞ。そんなにも彼女は危ないのか、そんなのに俺は関わってしまったのか。
ちらっと西村の方を見れば、西村は青ざめた顔をしている。
「果無君」
「何か」
凄い嫌な予感がする。俺は相談する相手を間違えたか。
「出来るだけ急ぎますが人を揃えるのに明日までは掛かります。
申し訳ありませんが、明日まで彼女の護衛をお願いします」
丁寧な口調だが、逆らえない圧迫を感じる。だが、撥ね除ける。俺が引き受けなければならない筋は無い。
「俺は素人だぞ。それに当たり前のように言うが俺はあなたの部下じゃ無いぞ」
「この話を私に振った責任を取りなさい。まさか、仕事を他人に投げて後は知らぬ存ぜずをするような無責任な男じゃないですよね。もしそうなら時雨との交際・・・」
「分かった。分かったから皆まで言うな」
お前は時雨さんのお父さんか。だが時雨さんが好きな人だ、父親よりも影響力があるのが癪に障る。
「だがもう一度言うが俺は素人だぞ」
「構いません。彼女を一人にしないことが大事なのです。
それに仕事と言った以上給料も出しましょう」
「それは嬉しいことで」
命と釣り合う値段ならいいがな。
「では今から護衛をお願いします」
「今から」
「はい。私は一旦事務所に戻りますが、くれぐれも彼女を一人しないように」
「まっ待てよ。それじゃ俺は今夜彼女の家に泊まれって事か」
「そうです。外から見張るでは駄目です。素人のあなた一人で外から全方位監視できるわけがありません。彼女の家に行き傍にいなさい」
「俺は健康な男子だぞ」
怪異も怖いが性欲が暴走する男も女性にとっては等しく怖いだろ。
「そこは信頼します」
薄っぺらい言葉で俺が納得するか。生憎だが、俺にお前のイケメンは通用しない。
「俺の事なんぞほとんど知らないくせに」
「いいえ。私は時雨が浮気を絶対に許さないことを知っています。あの娘は勘がいいですよ」
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前埜は黒く笑うのであった。
ちきしょう今の顔、時雨さんに見せてやりたいぜ。
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