椿の花の咲くころにーずっと尽くしてきたけど彼の選んだのは別の女性でした。だから私自身を大切にしたら幸せになりましたー

梅雨の人

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尽くす女は案外性格が図太かった

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雄太にメッセージを送った直後から何十通ものメッセージや着信が届いたけど携帯を確認する気にもならなかった私は、面倒なので雄太を着信拒否に設定した。 

ピンポーン 

ピンポーン 

それからすぐに雄太は私のアパートにまで来てしまった。エントランスのセキュリティーロックでいつまでたっても私の部屋にたどり着けない雄太は、しつこくインターホンを鳴らしてきた。 

あまりにもしつこくインターホンを鳴らしてくるのでおそらく私が応えるまで鳴らし続ける気なのだろう。面倒くさい奴だ。用件だけ聞くことにしたけれども、本当に時間の無駄だったとすぐに後悔した。 


「椿っ、なんなんだよ、さようならってっ…」 

「だって、田中先輩、長瀬さんと仲いいですよね。私、複数で一人の男性を共有する気持ち悪い性癖なんてありませんので。もういいですか?今、ご飯作ってて、フライパンに火をつけてるので失礼しますね?あともう私のことは斎藤とお呼びください。では。」 

「ちょっとまっ」 

ガチャっ 

「ばっかじゃないの。さ、料理の続きしよっとー」 

好きな音楽を流しながらゆっくりと自分のためだけに料理をすることなんてずっと出来ていなかったから、この心地い時間を雄太なんかに邪魔されたことに無性に腹が立った。 

 
(これまで何で雄太のためにあんなに頑張ってたんだろ...本当に尽くしてたよな、私。恋は盲目って盲目過ぎたでしょ...我ながら怖...) 

「本当に馬鹿みたい...」 

 

食べ終わってからしばらくリビングのソファでゆったりしていたら川野先輩から電話がかかってきた。 


「斎藤さん、その後大丈夫?」 

「先輩のおかげでなんだか吹っ切れました。もうすっぱりとお別れも言えてすっきりしてます。ありがとうございました川野先輩。」 

「そっか、うん、元気そうでよかった。ねえ、思ったんだけどさ、斎藤さんいつも田中君のために自分のことは後回しにしてたじゃない?だから今度の週末一緒にエステと美容院行かない?ついでにネイルもしちゃおうか?」 

「えっ!良いですね、是非お願いします!」 

「よかった。私も自分への御褒美がそろそろほしいなあって思ってたから、斎藤さんに声かけてみてよかった。じゃあ、どこに行くか今週、休憩時間に一緒に選ぼうね!」 

「あっ、先輩。お願いがあるんですけど…」 

 
彼氏には恵まれてなかったけど会社の先輩には恵まれていてよかったと思う。もちろん田中(雄太)先輩は除くけど。 

 

次の日。 

「椿っ」 

「あれ、田中君、こんなところで斎藤さんを待ち伏せしてどうしたの?」 

「川野先輩、いやっ、その…あっ椿っ、頼むから話を…ちょっとっ待って…」 
 
朝こうなるかもしれないことを予期していた私は、川野先輩に待ち合わせてもらって一緒に出勤した。 

 

「吹っ切れたねー斎藤さん。よし、あとで週末のプランを考えよう!」 

先輩と週末のことを話しながら楽しそうに歩いて行く私たちの後ろで雄太が立ちすくんでいたことなんて、私たちが気が付くはずも気にするはずもなかった。 

私たちが別れてから雄太が弁当を持ってこなかった日が続いたことから、社内でも私と雄太が破局したと噂が広まっていった。別に本当のことだからどうでもいいけど、まだ付き合っていると思われるよりかはマシだから気にならなかった。 

時折雄太の視線を感じるけど今更だ。 

案外私は性格が図太いのかもしれない。 
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