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4巻
4-2
* * *
東のダンジョンで、今ナギとエドが狩り場にしているのは二十階層だ。
ダンジョンでは十階層からフロアボスが出没するようになる。
フロアボスとはその階層に出没する魔獣や魔物の上位種。ゲートキーパーとも呼ばれており、下層に降りる階段や転移扉の前に現れる強敵だった。
「十階層のゴブリンキングにはたくさん稼がせてもらったね」
「そうだな。その内、黄金の王冠も売り払いたいが」
「もうしばらく間を置かないと、さすがに怪しまれないかな?」
「不審に思われるか……」
「私たちなら、いつでも手に入れることができるアイテムだけどね」
ギルドには幸運値が高いからと誤魔化してはいるが、まさか倒した魔獣がドロップアイテムに変化する前に【無限収納EX】に回収するのでアイテムは総取りだなんて、言えるはずもなく。
「幸運値が高いのは本当のこと。嘘は言っていないわ」
「黙っているだけだからな。たしかに嘘は言っていない」
なるべくなら嘘を吐きたくはないのだ。なので、二人は「黙っていること」を選んでいる。
特に怪しまれることも追及されることもなく、黙認されているのが現状だ。
それも二人が普段から真面目に活動をして、ギルドスタッフや古株の冒険者たちに可愛がられているからだと思う。人に恵まれたのもあるが、それはナギたちがきちんと頑張ってきた成果でもある。
礼儀正しく過ごし、街中依頼も定期的にこなし、たまの差し入れも惜しまない。
素直に慕ってくれる後輩を、強面の冒険者たちが可愛いと思うのも必然。
それに二人が冒険者ギルドに登録したのは、まだ十歳の頃。小さくて頼りなかった二人が堅実に力をつけて、着実に依頼をこなしていく様を親心に近い目で見守ってくれた人たちは大勢いる。
訳ありなのだろうと理解して、彼らは踏み込みすぎない程度に手を貸してくれていた。
「東のギルドにはお世話になっているし、皆にはあんまり嘘を吐きたくないのよね」
「ナギ、おしゃべりしている暇はなさそうだぞ。ハイオークだ」
「はーい。数が多いようだから、少し減らすね!」
この三年で、ナギも成長したのだ。師匠であるエルフのミーシャに教えを乞い、魔法の特訓を重ねて、魔法職の冒険者として腕を上げている。三年前は動かない的にしか当てられなかったが、今では向かってくる魔物に向けて複数の攻撃魔法を放つこともできるようになったのだ。
「ウインドカッター、乱れ撃ち!」
ソーサラーオークの配下、ハイオークの五頭の首を風魔法で刈り取って、すぐに目視で死骸を収納する。ハイオークは弓や剣で武装したオークの上位種だが、ソーサラーオークは魔法を使うハイオークだ。厄介な相手だが、彼らの魔法の発動には詠唱が必要なため、倒す手段はある。
本来なら配下の五頭が詠唱のための時間稼ぎをするはずが、ナギが瞬殺したのだ。
ソーサラーオークが動揺し、詠唱が一瞬だけ止まった。
もうその瞬間にはエドが肉薄し、その首を片手剣で落としている。
「相変わらず、速い」
その動きはもうナギの目では追えない。
漆黒の風が過ぎったと感じたのとほぼ同時に、フロアボスは地に倒されているのだ。
ドロップアイテムに変わる前に、ソーサラーオークの亡骸を【無限収納EX】内に回収する。
「火魔法を放つ杖と魔力回復の腕輪を装着していたみたいね。エド、欲しい?」
「使わないな」
「じゃあ、冒険者ギルドに買い取ってもらおう。魔石と魔道具二つ。オーク肉もたくさん手に入ったから、売っちゃおうか。ハイオークのお肉は──……」
「それは食おう」
迷いのない眼差しで断言され、ナギはくすりと笑う。
最初からそのつもりだったので異存はない。笑顔で頷いておいた。
「今夜の夕食はハイオークカツにしようかな?」
「悪くないと思う」
「そこは、喜んで! でしょ?」
クールを装っても、身体は正直だ。ふさふさの黒い尻尾が嬉しそうに揺れている。
オークカツはエドの好物だ。しかも今回は、上位種のハイオークを使ったカツ。
(そんなの美味しいに決まっているわ!)
きっとナギに尻尾があっても、エドと同じように揺れていたことだろう。
半日ほどダンジョンに潜っていたので、かなりの数のオークとハイオークを狩ることができた。
フロアボスも倒し、魔道具も二つ手に入れたし、一日の稼ぎとしては充分だ。
手を繋ぎ、ダンジョンの転移扉に触れる。帰還したいと念じれば、ダンジョンの入り口の隣にある、もう一つの扉の前に転移できるのだ。このダイレクト帰還は十階層に到達しないと、使えない。そのため、冒険者はまず十階層を目指してダンジョンに挑む。
エドに手を引かれながら、ダンジョンから外に出た。同じようにダンジョン帰りらしき冒険者たちがちらちらとこちらを見詰めてくるが、エドの一瞥でぱっと視線が逸らされた。
空はすっかり赤く染まっている。エドが手を引いてまで急ぐ理由がナギにも分かった。
「早くギルドに行かなきゃ、混雑しちゃうもんね」
「…………そうだな」
なんとも言えない表情でエドが顎を引く。最近よく見かける複雑そうな表情に、ナギは「んん?」と小首を傾げた。だが、エドは「なんでもない」としか言ってくれない。アキラに相談してみても、「思春期ですからね……」と気の毒そうに謎の発言をするだけなので、よく分からなかった。
(まぁ、特に困ってはいなさそうだし、気にしないでおこう)
ポジティブ思考な少女は繊細さとは程遠い性格をしており、人の感情に疎いはずのエルフのミーシャにまで「ナギは、鈍感……?」と首を傾げられていた。
ドロップアイテムとオーク肉をギルドに買い取ってもらうと、かなりの金額になったので、二人は弾むような足取りで市場を目指す。
目当ては、馴染みの肉屋だ。ここの店の加工肉が絶品なため、二人は常連になっている。
「こんにちは、おかみさん。オーク肉の加工をお願いしてもいいですか?」
肉屋で売り子をしているのは、この店の主の奥さんだ。恰幅が良く、いつも陽気に笑っている気持ちのいいご婦人である。
「いいよ。裏で旦那が肉を捌いているから、直接お願いしておいで。いい肉があるようなら、うちでも買い取るからね」
「ありがとう!」
ナギは笑顔で手を振り、店の裏口に向かう。エドも軽く一礼すると、ナギの後を追った。
ここの肉屋には、時折ダンジョンで狩った肉を直接卸している。
大量に魔獣肉が手に入った際、さすがにすべてをギルドで買い取ってもらうわけにもいかず、在庫を抱えて途方に暮れていると、当時の買い取りカウンター担当のガルゴがこっそり教えてくれたのだ。ギルドを通さずに直接肉屋に売ればいい、と。ギルドを通すと、手数料と税金が引かれた金額になるが、肉屋と直接交渉をすれば、差し引かれることはないらしい。
『肉屋もギルドを通すより安く仕入れることができるし、冒険者も二割は高く買い取ってもらえるからな。どっちも得になる』
ギルドとしては微妙な話だが、暗黙の了解となっているようだ。もっとも、毎回大量に魔獣肉の横流しをしている冒険者は目を付けられており、ギルドから指導が入るようだが。
『大量に狩った時に、まあ、ほんの少しだけ肉屋に回すくらいなら、誰も目くじらは立てねぇよ』
ありがたい助言を得て、おすすめされた肉屋に向かったのだ。
その肉屋は卸した肉をただ売るだけでなく、加工も請け負っていた。生肉の他にも、生ハムにベーコン、ソーセージなども取り扱っており、試しに食べてみたら、絶品だった。
自分たちで加工するより、断然こちらの方が美味しい。
なので、肉を持ち込んで加工してもらえるよう、交渉した。
『ギルドでの買い取り額と同じ金額で肉を卸すので、この肉を加工してください』
強面の肉屋のおじさんにナギは商談を持ち掛けた。差し引かれる二割ほどの金額をそのまま加工賃として請け負ってもらおうと考えたのだ。そんな依頼は初めてだ、とおじさんは大声で笑って、快諾してくれた。それ以来、もう二年越しの付き合いなのだ。
「おじさん! またお肉の加工をお願いしてもいい?」
「おう、ナギか。エドの坊主も元気そうだ。今日は何の肉を持ってきたんだ?」
「なんと、ハイオーク肉です!」
じゃーん、と偽装用のマジックバッグから取り出した肉を見て、おじさんも嬉しそうだ。
「劣化もしていない、いい肉だ。いつものように、一頭分まるまる預かればいいのか?」
「お願いします! それと、これ。買い取りはオーク肉とハイオーク肉、どっちにします?」
にんまりと肉屋のおじさんが笑う。凶悪な笑顔だが、見慣れた二人にはとても頼もしい表情だ。
「もちろん両方買い取るぜ? 状態のいいダンジョン産の肉は大歓迎だ!」
頼もしい商談相手に肉を手渡して、加工をお願いする。
自家製のハーブ類やニンニク、塩胡椒に砂糖などの調味料も袋に入れて渡しておいた。
「モモ肉は生ハムに。ロース部分もハムで食べたいです! 肩の部位はショルダーハムで!」
「おう、分かった。バラ肉はいつものようにベーコンにするんだな?」
「はい! おじさんの作るベーコンは絶品なので。無くなったら、エドが泣いちゃう」
「……泣きはしないが、悲しくはなる」
「はははっ! そりゃあ頑張って作らないとな!」
軟骨やホルモンは下処理を、タン部分はカットをお願いした。
「その他の肉でありったけのソーセージを作ってください」
ミンチ肉や切れ端肉、内臓や血を使うソーセージの種類は多彩だ。部位はもちろん、使う調味料やハーブの塩梅で、まったく違う味わいになるのが面白い。
「分かった。サラミはどうする?」
「食べたいです!」
ドライソーセージも味わい深くて大好きだ。お酒の肴にとても合うが、意外とおにぎりとの相性も悪くない。味が濃い肉を噛み締めると腹の底から力が湧いてくる、とはエドの談。
「二週間後に取りにきな」
「はーい! 楽しみね、エド」
「ああ、楽しみだ。おやっさんの作る加工肉がいちばん旨い」
「口が巧くなったな、坊主。ほら、これも持っていけ!」
「ありがとう」
投げ付けられた特製ジャーキーをすばやくキャッチするエド。ご機嫌な漆黒の尻尾と、どこか誇らしげな様子の店主を交互に眺めて、ナギは瞳を瞬かせた。
(うちの子がおじさんキラーになっている。いつの間にそんな技を覚えたの)
常連だけに提供されている、隠れ裏メニューのいちばん人気のジャーキーだ。めったに手に入れられないそれを貰ったエドは大切そうに、マジックポーチにしまっている。
「成長したわね、エド……」
「? ナギも食うか?」
「ううん、それはエドが食べるほうがいいと思う。……遅くなっちゃったね。早く帰ろう」
「今日はハイオークカツだしな」
「うん。ふふ。たくさん揚げようね」
カツをたくさん作った翌日のお弁当はカツサンド。揚げ立てサクサク食感のカツと白飯も美味しいけれど、ソースが染み込んで、しっとりしたカツとパンを一緒に食べるのもまた格別なのだ。
「また狩りに行こう」
相変わらずエドは近所のコンビニに行くノリでダンジョンに誘ってくる。
もちろん、ナギの答えは決まっていた。
* * *
冒険者ギルド経由でハーフドワーフのミヤからの手紙を受け取り、二人はドワーフ工房へ向かった。いや、今はドワーフ工房ではなく、生活魔道具工房と呼ばれている作業所だ。
頼んでいた道具が完成したとの連絡だったので、弾むような足取りで向かう。
「何の道具だ?」
「依頼の品が完成したとしか書いていないの。たくさん頼んでいるから、どれか分からないわ」
キッチン用品をメインに、前世で使っていた便利な道具作りを気楽に頼みまくった結果の弊害だ。おそらくは口頭で提案した依頼の分も合わせると、十件以上は作成をお願いしているはず。
「行ってみたら分かるわ。何が完成したのか、楽しみね」
試食が楽しみなエドはアバウトなナギの発言も気にしていない。
以前は包丁やフライパン、鍋などの調理器具ばかりを作っていたミヤの工房は、今では魔道具職人であるハーフエルフのムーラと共同で様々な商品を作ってくれている。
「二人のおかげで魔道ミキサーや魔道泡立て器が完成したものね。本当に感謝しかないわ」
「ナギの無茶苦茶なリクエストでもちゃんと聞いてくれるのはすごいと思う」
「む、無茶苦茶じゃないもん……」
構造を完全に理解できていない道具も多いので、簡単なイラストと用途の説明をしただけの依頼も多い。ミヤとムーラは試行錯誤しつつも、きっちり作り上げてくれるのだから、天才だと思う。
ちなみに、これまでに作った調理器具諸々の特許料としてミヤから貰ったお金を開発費用に充てている。今のところは赤字がないので、気兼ねなく新規の依頼を投げまくっているのが現状だ。
「二人が作った『生活魔道具工房』の運営も順調で嬉しいわ」
「ナギが提案した調理器具類が爆売れしているからな」
おかげで、ダンジョン都市の飲食業界隈は大盛況だとか。
高額な魔道具には前世の料理レシピを添えて販売しているので、最近は外食が楽しみになった。
生活魔道具工房に到着すると、さっそく工房主であるミヤが出迎えてくれた。
「完成したよ、これ。すっごく面倒だったんだからね!」
赤毛のポニーテールを揺らしながら、完成品を手渡してくれる。
「ありがとう、ミヤさん!」
完成したのは、随分と前に依頼していたホットプレートだった。卓上サイズの魔道具仕様で、プレート部分が着脱式になっている。わくわくしながら、蓋を外してプレートを確認した。
「プレートは二枚あるのか?」
「うん、普通の鉄板焼き用のと、たこ焼き用と二種類!」
「たこ焼き……!」
ぱっとエドの表情が明るくなった。珍しく笑顔のエドに、不思議そうなミヤ。
「アタシは依頼があったから、その通りに作っただけだけど。こっちのプレートの使い方が分からないんだよね。これ、どうやって使うつもりなんだい?」
工房奥からミヤの相棒、ハーフエルフのムーラも顔を出してきた。魔道具部分の製作は彼が担当しているので、気になったのだろう。半分エルフの彼は、半分ドワーフの彼女と仲がいい。
「じゃあ、厨房を少しお借りしてもいいですか? たこ焼きをご馳走しちゃいます!」
ナギの提案に職人二人と、なぜかエドまで笑顔で頷いた。
事前に二人には食の禁忌や苦手な食材はないかを確認してある。異世界初の、たこ焼きパーティだ。ちょうど三日前に海ダンジョンに潜ったところなので、タコの在庫には困らない。
エドを助手にして、たこ焼き用の具材を用意することにした。
「とっても簡単なのよ。生地と中に入れる食材さえあれば、すぐに作れるから」
タコを切るのはエドに任せて、ナギは生地を作ることにした。小麦粉と水、ミルクに卵を割り入れて混ぜていく。生地にはしっかりと出汁をきかせておいた。
「具材はタコだけでいいのか?」
「うーん、今日はキャベツと天かすにしようか。ネギも少々。紅生姜はさすがに無いね、残念」
天かすは天ぷらを揚げた際にできた物をしっかり確保してある。
うどんや蕎麦、スープやおにぎりにちょい足しすると美味しいので、意外と重宝していた。
ミヤとムーラが興味津々で見つめてくる中、工房内でたこ焼きパーティは始まった。
テーブルの中央に魔道ホットプレートを置き、たこ焼きを作っていく。丁寧に油を塗り込んだプレートを温めて、生地を少しずつ流し込み、具材を一個ずつ放り込んでいくのだ。
刻んだタコと天かす。みじん切りにしたキャベツとネギ。蓋をするように、生地を上から流し込んだら、あとは火が通るのを待つだけだ。ぷつぷつと生地に火が通る音が弾けている。
「へぇ……面白いね。自分で調理して、そのまま食べる料理か」
「熱々だから、美味しいんですよ。自分たちで焼くのも楽しいし」
「そういうものなのですか」
ハーフエルフのムーラは不思議そうだ。自炊は基本的にしないらしい。
「あ、もういいかな?」
あふれた生地が固まりだしたら、竹串でひっくり返していく。前世の渚は、週末によく友人たちと自宅タコパを楽しんでいた。ナギは手慣れた様子で、火が通ったたこ焼きを転がしていく。
おお、と三人から歓声が上がる。手早く竹串を動かして、丸い形を作っていく様が面白かったようだ。綺麗な焼き色がついたところで、たこ焼きを皿に盛ってみた。
「ソースと青のり、鰹節は必須よね。マヨネーズはお好みで。はい、どうぞ!」
「ありがとう、ナギ。美味しそうだ」
「あの……、これ生きていませんか? うねうね動いているのですが」
「ムーラさん、それは鰹節。大丈夫、生き物じゃない」
怖がりのハーフエルフの青年を、エドが宥めている。そういえば、前世でも海外の観光客がたこ焼きやお好み焼きの鰹節に恐れ慄いていたことを、なんとなく思い出した。
「あっつ! 熱いけど、美味しいね、コレ!」
「ええ。どんな味がする料理か、まったく想像が付きませんでしたが、とても美味です」
ミヤとムーラに絶賛されて、ナギだけでなく、エドもなんだか嬉しそうだ。
皆でわいわいとたこ焼きをつまむ中、ナギは再び、生地をプレートに流し込んでいく。
気付いたエドが交代を申し出てくれた。
「ナギ、次は俺がやる」
「いいの?」
「ああ。やってみたい」
好奇心いっぱいの眼差しで訴えられたら、任せるしかない。
お言葉に甘えて、焼き担当は彼に任せることにした。フォークを刺して、たこ焼きを口に放り込む。出汁の利いた生地とぷりぷりのタコの食感に口元を緩めた。たこ焼きだ!
「ん、美味しい! ちゃんと、たこ焼きの味に仕上がっているわ」
異世界の食材や調味料だけで再現したので、少しだけ不安だったのだ。
「以前にフライパンでたこ焼きを作ったことがあったけど、コレジャナイ感がすごかったのよね。やっぱり、たこ焼きはこの丸く愛らしいフォルムが大事だったのよ。リベンジができて嬉しい」
フライパンで平らに焼いたものはもはや、お好み焼きでしかないのだ。
「なるほど。なんで、こんな妙な形のプレートを作らないといけないのかと不思議だったけど、納得だね。このタコヤキとかいう料理、最高じゃないか」
「ふふふ。美味しいし、簡単に作れて素敵でしょう? しかも、このプレート、たこ焼き以外にも使えちゃうんですよ。アヒージョも作れるし、なんと、スイーツも作れちゃいます!」
甘くした生地を入れて、一口サイズの焼き菓子を作るのもお約束である。
「プレートを入れ替えたら、肉や野菜を炒めることができるので、おうちパーティにも大活躍しますよ、ホットプレート」
調理が面倒な時に具材だけ用意しておけば、セルフで楽しめるのも嬉しい。
「これなら、自炊が苦手な私でも調理ができそうですね」
感心したように、タコ焼きを咀嚼するムーラ。くはは、とミヤが豪快に笑う。
「アンタは甘党だから、菓子作りの方が気になっているんだろ?」
「否定はしません。オーブンを使うのは火加減が難しいので諦めましたが、これなら私でも美味しい焼き菓子を作ることができそうです」
かくして魔道ホットプレート(たこ焼きプレート付き)はその後、ダンジョン都市で販売されて、爆発的に流行した。普段、料理をしない冒険者たちはもちろん、一般家庭にも売れたらしい。
ちなみにアキラは自分でたこ焼きが焼けずに落ち込んでいたが、たこ焼きはしっかり堪能した。
野営時に鉄板焼きも楽しめるようになったので、ナギ的には大満足の結果になった。
* * *
「明日の休み、ナギは何か予定があるのか?」
夕食後、たこ焼きホットプレートを使い、ベビーカステラを作ろうとしていたナギは唐突なエドの問い掛けに首を傾げた。
「午前中に料理の作り置きをするくらいかな? ああ、市場や商店街に買い物には行きたいかも」
特に予定もなかったので、そう答えると、そうか、とエドが顎を引く。
「なら、その買い物にアキラと一緒に行ってくれないか?」
「え? アキラと?」
「ああ。たまには街中を散歩してみたい、とアキラがうるさくてな」
「あー……」
なんとなく、想像はつく。せっかく異世界に転生したのだから、ファンタジーな街並みを観光したい、なんてエドに泣きついたに違いない。
軍馬並みに巨大な黒狼を引き連れて街を闊歩するわけにもいかないので、これまでアキラと出掛けたことはなかったが、我慢も限界なのだろう。エドの目から世界を見ることはできるけれど、テレビのモニター越しに見つめている感覚なのだと、以前にアキラから聞いたことがある。
(それはすごく、寂しいよね)
念願のファンタジーな街並みを実際に見て、体感したい気持ちはナギにも理解できる。
出掛けるとしても仔狼の姿にはなるのだが、ダンジョン都市の賑わいを直接その身で体感できるのなら、アキラも文句は言わないだろう。
「私は構わないけれど。エドがそう言うってことは、ようやく認めてくれたのかな?」
「む……」
ちょっと意地悪な言い方になってしまったか。ナギはエドの脇腹を肘で突いた。
「だって、ちょっと前までのエドは私一人での外出も許してくれなかったじゃない? いつもボディガードよろしく、どこでも同伴だったもの」
アキラが仔狼姿でガードするから、と。どんなに訴えても、自分が守ると決して譲らなかった、あのエドが! 肉体の所有権を渡して、ボディガード役を仔狼に譲ろうとしているのだ。
「やっと私が自衛できるくらいには強くなったって、認めてくれたってことでしょう?」
「……ナギが強くなったのは、ちゃんと認めている。それにアキラも頼りになる奴だ」
認めてはくれたが、複雑そうな表情をしている。面白くなさそうな、ちょっと拗ねた顔?
出逢ってからずっと、彼は騎士よろしく、ナギの身を守ってくれていた。
「魔法の腕も上がったし、これでも銅級の有望な冒険者。何かあったら、すぐに【無限収納EX】スキルの小部屋に逃げ込むつもりだから、心配しなくてもいいのよ?」
だいたい、エドは心配性なのだ。ダンジョン都市は冒険者以外の住民も半数ほど占めている。
問題を起こした冒険者はすぐに通報され、罰則が与えられるので、意外と治安は悪くない。市場や商店街だって、手癖の悪いスリにさえ気を付ければ、特に危険な場所ではないのだ。
貴重品はしっかり【無限収納EX】に収納してあるので、盗まれる心配も不要。
「アキラもちゃんと番犬? ……えーと、護衛犬? してくれるだろうし」
なんで疑問形? と、後でアキラには叱られそうだが、仔狼姿の彼の見た目は、どう見てもポメラニアンな愛玩犬なので。
「三年間ずっと我慢してくれたんだし、ご褒美に街に連れて行ってあげるわ」
「……そうだな。アキラはずっと街や冒険者ギルドに行ってみたいと言っていた」
「危ない場所には絶対に近寄らないって約束する」
「それは当然のことだな」
ダンジョン都市にもそれなりに危険な場所はある。
師匠たちやサブマスターになったフェローにも何度か口頭で念押しされた、裏通り。スラム街ではないようだが、後ろ暗い連中が多く住み、表通りには出せない店や屋台が並んでいるという。
興味がないとは言わないが、わざわざ自分から危険な場所に赴く酔狂さはないので、もちろん行くことはない。
何せ、二人のモットーは『命大事に、美味しく楽しく快適なスローライフ!』なのだから。
「じゃあ、お揃いのリボンをして行かなくちゃね!」
「……リボン?」
「うん。ギルドの受付嬢のリアさんが、街に従魔を入れるなら、魔獣と区別するために首輪や足輪、リボンを装着させる義務があるって教えてくれたの。首輪を嵌めるのは嫌だろうし、なら、リボンだったらいいかなと思って」
「あー……どうだろう。リボンよりは首輪がマシと、アキラなら言いそうだが……」
「でも、リボンだったらお揃いにできるのよ?」
「…………そうか。アキラなら喜ぶ、かもしれないな」
そっとエドが視線を逸らした。
「……ところで、ナギ。それは何を作っている?」
あからさまな話題逸らしだが、気になってはいたのだろう。
たこ焼き器で忙しなく生地を焼くナギの手元を、エドがじっと見つめてくる。
「ベビーカステラよ。オヤツにどうかと思って、試しに作っているの。食べてみる?」
「ベビーカステラ……。味の想像が付かないから、食べてみたい」
「んー? アキラの記憶にはないのかな」
たこ焼き器で作るベビーカステラはとても簡単だ。レシピもシンプル。小麦粉と卵と砂糖、牛乳に蜂蜜に植物油を混ぜた生地を焼くだけなのだ。
たこ焼きと同じように竹串を使って転がして生地を丸めて焼き上げると、完成!
「熱いから気を付けてね」
「ん、……小さなパンケーキ?」
「昔ながらのホットケーキ生地に近いかな? でも、素朴で美味しいのよ。たまに食べたくなる」
「そうだな。卵の味が濃いのが嬉しい。パンケーキより簡単で、たくさん作れるのがいい」
「でしょ? 蜂蜜味のプレーンと、粉糖をまぶしたのとか、ベリージャムを詰めて焼いたのも美味しそうだから作っちゃおうかな」
たこ焼きと同じで、色々なアレンジが楽しめるのが、焼き菓子の面白いところだ。焼き上げたベビーカステラにジャムを付けて食べるのも良し、バニラアイスとの相性も悪くないと思う。
「材料はたくさんあるし、師匠たちやギルドへの差し入れ用にたくさん焼いておこう」
「俺も手伝う」
すっかり、竹串でひっくり返す作業にハマったエドはベビーカステラ職人になった。
その間にナギはベリー系のジャムを用意する。一口サイズで食べやすい菓子はダンジョンアタック中のオヤツはもちろん、事務仕事で忙しいギルド職員の口にも合うはずだ。
大量に焼き上げたベビーカステラはいくつかのミニバスケットに放り込んでおく。これは差し入れ用。プレーンな味のカステラと、ベリージャム味の二種類が詰めてある。
焼き立ての菓子は温かいうちに【無限収納EX】に収納しておく。
アキラは冒険者ギルドにも興味があるようなので、立ち寄りついでに職員の皆にバスケットごと差し入れすることにした。
東のダンジョンで、今ナギとエドが狩り場にしているのは二十階層だ。
ダンジョンでは十階層からフロアボスが出没するようになる。
フロアボスとはその階層に出没する魔獣や魔物の上位種。ゲートキーパーとも呼ばれており、下層に降りる階段や転移扉の前に現れる強敵だった。
「十階層のゴブリンキングにはたくさん稼がせてもらったね」
「そうだな。その内、黄金の王冠も売り払いたいが」
「もうしばらく間を置かないと、さすがに怪しまれないかな?」
「不審に思われるか……」
「私たちなら、いつでも手に入れることができるアイテムだけどね」
ギルドには幸運値が高いからと誤魔化してはいるが、まさか倒した魔獣がドロップアイテムに変化する前に【無限収納EX】に回収するのでアイテムは総取りだなんて、言えるはずもなく。
「幸運値が高いのは本当のこと。嘘は言っていないわ」
「黙っているだけだからな。たしかに嘘は言っていない」
なるべくなら嘘を吐きたくはないのだ。なので、二人は「黙っていること」を選んでいる。
特に怪しまれることも追及されることもなく、黙認されているのが現状だ。
それも二人が普段から真面目に活動をして、ギルドスタッフや古株の冒険者たちに可愛がられているからだと思う。人に恵まれたのもあるが、それはナギたちがきちんと頑張ってきた成果でもある。
礼儀正しく過ごし、街中依頼も定期的にこなし、たまの差し入れも惜しまない。
素直に慕ってくれる後輩を、強面の冒険者たちが可愛いと思うのも必然。
それに二人が冒険者ギルドに登録したのは、まだ十歳の頃。小さくて頼りなかった二人が堅実に力をつけて、着実に依頼をこなしていく様を親心に近い目で見守ってくれた人たちは大勢いる。
訳ありなのだろうと理解して、彼らは踏み込みすぎない程度に手を貸してくれていた。
「東のギルドにはお世話になっているし、皆にはあんまり嘘を吐きたくないのよね」
「ナギ、おしゃべりしている暇はなさそうだぞ。ハイオークだ」
「はーい。数が多いようだから、少し減らすね!」
この三年で、ナギも成長したのだ。師匠であるエルフのミーシャに教えを乞い、魔法の特訓を重ねて、魔法職の冒険者として腕を上げている。三年前は動かない的にしか当てられなかったが、今では向かってくる魔物に向けて複数の攻撃魔法を放つこともできるようになったのだ。
「ウインドカッター、乱れ撃ち!」
ソーサラーオークの配下、ハイオークの五頭の首を風魔法で刈り取って、すぐに目視で死骸を収納する。ハイオークは弓や剣で武装したオークの上位種だが、ソーサラーオークは魔法を使うハイオークだ。厄介な相手だが、彼らの魔法の発動には詠唱が必要なため、倒す手段はある。
本来なら配下の五頭が詠唱のための時間稼ぎをするはずが、ナギが瞬殺したのだ。
ソーサラーオークが動揺し、詠唱が一瞬だけ止まった。
もうその瞬間にはエドが肉薄し、その首を片手剣で落としている。
「相変わらず、速い」
その動きはもうナギの目では追えない。
漆黒の風が過ぎったと感じたのとほぼ同時に、フロアボスは地に倒されているのだ。
ドロップアイテムに変わる前に、ソーサラーオークの亡骸を【無限収納EX】内に回収する。
「火魔法を放つ杖と魔力回復の腕輪を装着していたみたいね。エド、欲しい?」
「使わないな」
「じゃあ、冒険者ギルドに買い取ってもらおう。魔石と魔道具二つ。オーク肉もたくさん手に入ったから、売っちゃおうか。ハイオークのお肉は──……」
「それは食おう」
迷いのない眼差しで断言され、ナギはくすりと笑う。
最初からそのつもりだったので異存はない。笑顔で頷いておいた。
「今夜の夕食はハイオークカツにしようかな?」
「悪くないと思う」
「そこは、喜んで! でしょ?」
クールを装っても、身体は正直だ。ふさふさの黒い尻尾が嬉しそうに揺れている。
オークカツはエドの好物だ。しかも今回は、上位種のハイオークを使ったカツ。
(そんなの美味しいに決まっているわ!)
きっとナギに尻尾があっても、エドと同じように揺れていたことだろう。
半日ほどダンジョンに潜っていたので、かなりの数のオークとハイオークを狩ることができた。
フロアボスも倒し、魔道具も二つ手に入れたし、一日の稼ぎとしては充分だ。
手を繋ぎ、ダンジョンの転移扉に触れる。帰還したいと念じれば、ダンジョンの入り口の隣にある、もう一つの扉の前に転移できるのだ。このダイレクト帰還は十階層に到達しないと、使えない。そのため、冒険者はまず十階層を目指してダンジョンに挑む。
エドに手を引かれながら、ダンジョンから外に出た。同じようにダンジョン帰りらしき冒険者たちがちらちらとこちらを見詰めてくるが、エドの一瞥でぱっと視線が逸らされた。
空はすっかり赤く染まっている。エドが手を引いてまで急ぐ理由がナギにも分かった。
「早くギルドに行かなきゃ、混雑しちゃうもんね」
「…………そうだな」
なんとも言えない表情でエドが顎を引く。最近よく見かける複雑そうな表情に、ナギは「んん?」と小首を傾げた。だが、エドは「なんでもない」としか言ってくれない。アキラに相談してみても、「思春期ですからね……」と気の毒そうに謎の発言をするだけなので、よく分からなかった。
(まぁ、特に困ってはいなさそうだし、気にしないでおこう)
ポジティブ思考な少女は繊細さとは程遠い性格をしており、人の感情に疎いはずのエルフのミーシャにまで「ナギは、鈍感……?」と首を傾げられていた。
ドロップアイテムとオーク肉をギルドに買い取ってもらうと、かなりの金額になったので、二人は弾むような足取りで市場を目指す。
目当ては、馴染みの肉屋だ。ここの店の加工肉が絶品なため、二人は常連になっている。
「こんにちは、おかみさん。オーク肉の加工をお願いしてもいいですか?」
肉屋で売り子をしているのは、この店の主の奥さんだ。恰幅が良く、いつも陽気に笑っている気持ちのいいご婦人である。
「いいよ。裏で旦那が肉を捌いているから、直接お願いしておいで。いい肉があるようなら、うちでも買い取るからね」
「ありがとう!」
ナギは笑顔で手を振り、店の裏口に向かう。エドも軽く一礼すると、ナギの後を追った。
ここの肉屋には、時折ダンジョンで狩った肉を直接卸している。
大量に魔獣肉が手に入った際、さすがにすべてをギルドで買い取ってもらうわけにもいかず、在庫を抱えて途方に暮れていると、当時の買い取りカウンター担当のガルゴがこっそり教えてくれたのだ。ギルドを通さずに直接肉屋に売ればいい、と。ギルドを通すと、手数料と税金が引かれた金額になるが、肉屋と直接交渉をすれば、差し引かれることはないらしい。
『肉屋もギルドを通すより安く仕入れることができるし、冒険者も二割は高く買い取ってもらえるからな。どっちも得になる』
ギルドとしては微妙な話だが、暗黙の了解となっているようだ。もっとも、毎回大量に魔獣肉の横流しをしている冒険者は目を付けられており、ギルドから指導が入るようだが。
『大量に狩った時に、まあ、ほんの少しだけ肉屋に回すくらいなら、誰も目くじらは立てねぇよ』
ありがたい助言を得て、おすすめされた肉屋に向かったのだ。
その肉屋は卸した肉をただ売るだけでなく、加工も請け負っていた。生肉の他にも、生ハムにベーコン、ソーセージなども取り扱っており、試しに食べてみたら、絶品だった。
自分たちで加工するより、断然こちらの方が美味しい。
なので、肉を持ち込んで加工してもらえるよう、交渉した。
『ギルドでの買い取り額と同じ金額で肉を卸すので、この肉を加工してください』
強面の肉屋のおじさんにナギは商談を持ち掛けた。差し引かれる二割ほどの金額をそのまま加工賃として請け負ってもらおうと考えたのだ。そんな依頼は初めてだ、とおじさんは大声で笑って、快諾してくれた。それ以来、もう二年越しの付き合いなのだ。
「おじさん! またお肉の加工をお願いしてもいい?」
「おう、ナギか。エドの坊主も元気そうだ。今日は何の肉を持ってきたんだ?」
「なんと、ハイオーク肉です!」
じゃーん、と偽装用のマジックバッグから取り出した肉を見て、おじさんも嬉しそうだ。
「劣化もしていない、いい肉だ。いつものように、一頭分まるまる預かればいいのか?」
「お願いします! それと、これ。買い取りはオーク肉とハイオーク肉、どっちにします?」
にんまりと肉屋のおじさんが笑う。凶悪な笑顔だが、見慣れた二人にはとても頼もしい表情だ。
「もちろん両方買い取るぜ? 状態のいいダンジョン産の肉は大歓迎だ!」
頼もしい商談相手に肉を手渡して、加工をお願いする。
自家製のハーブ類やニンニク、塩胡椒に砂糖などの調味料も袋に入れて渡しておいた。
「モモ肉は生ハムに。ロース部分もハムで食べたいです! 肩の部位はショルダーハムで!」
「おう、分かった。バラ肉はいつものようにベーコンにするんだな?」
「はい! おじさんの作るベーコンは絶品なので。無くなったら、エドが泣いちゃう」
「……泣きはしないが、悲しくはなる」
「はははっ! そりゃあ頑張って作らないとな!」
軟骨やホルモンは下処理を、タン部分はカットをお願いした。
「その他の肉でありったけのソーセージを作ってください」
ミンチ肉や切れ端肉、内臓や血を使うソーセージの種類は多彩だ。部位はもちろん、使う調味料やハーブの塩梅で、まったく違う味わいになるのが面白い。
「分かった。サラミはどうする?」
「食べたいです!」
ドライソーセージも味わい深くて大好きだ。お酒の肴にとても合うが、意外とおにぎりとの相性も悪くない。味が濃い肉を噛み締めると腹の底から力が湧いてくる、とはエドの談。
「二週間後に取りにきな」
「はーい! 楽しみね、エド」
「ああ、楽しみだ。おやっさんの作る加工肉がいちばん旨い」
「口が巧くなったな、坊主。ほら、これも持っていけ!」
「ありがとう」
投げ付けられた特製ジャーキーをすばやくキャッチするエド。ご機嫌な漆黒の尻尾と、どこか誇らしげな様子の店主を交互に眺めて、ナギは瞳を瞬かせた。
(うちの子がおじさんキラーになっている。いつの間にそんな技を覚えたの)
常連だけに提供されている、隠れ裏メニューのいちばん人気のジャーキーだ。めったに手に入れられないそれを貰ったエドは大切そうに、マジックポーチにしまっている。
「成長したわね、エド……」
「? ナギも食うか?」
「ううん、それはエドが食べるほうがいいと思う。……遅くなっちゃったね。早く帰ろう」
「今日はハイオークカツだしな」
「うん。ふふ。たくさん揚げようね」
カツをたくさん作った翌日のお弁当はカツサンド。揚げ立てサクサク食感のカツと白飯も美味しいけれど、ソースが染み込んで、しっとりしたカツとパンを一緒に食べるのもまた格別なのだ。
「また狩りに行こう」
相変わらずエドは近所のコンビニに行くノリでダンジョンに誘ってくる。
もちろん、ナギの答えは決まっていた。
* * *
冒険者ギルド経由でハーフドワーフのミヤからの手紙を受け取り、二人はドワーフ工房へ向かった。いや、今はドワーフ工房ではなく、生活魔道具工房と呼ばれている作業所だ。
頼んでいた道具が完成したとの連絡だったので、弾むような足取りで向かう。
「何の道具だ?」
「依頼の品が完成したとしか書いていないの。たくさん頼んでいるから、どれか分からないわ」
キッチン用品をメインに、前世で使っていた便利な道具作りを気楽に頼みまくった結果の弊害だ。おそらくは口頭で提案した依頼の分も合わせると、十件以上は作成をお願いしているはず。
「行ってみたら分かるわ。何が完成したのか、楽しみね」
試食が楽しみなエドはアバウトなナギの発言も気にしていない。
以前は包丁やフライパン、鍋などの調理器具ばかりを作っていたミヤの工房は、今では魔道具職人であるハーフエルフのムーラと共同で様々な商品を作ってくれている。
「二人のおかげで魔道ミキサーや魔道泡立て器が完成したものね。本当に感謝しかないわ」
「ナギの無茶苦茶なリクエストでもちゃんと聞いてくれるのはすごいと思う」
「む、無茶苦茶じゃないもん……」
構造を完全に理解できていない道具も多いので、簡単なイラストと用途の説明をしただけの依頼も多い。ミヤとムーラは試行錯誤しつつも、きっちり作り上げてくれるのだから、天才だと思う。
ちなみに、これまでに作った調理器具諸々の特許料としてミヤから貰ったお金を開発費用に充てている。今のところは赤字がないので、気兼ねなく新規の依頼を投げまくっているのが現状だ。
「二人が作った『生活魔道具工房』の運営も順調で嬉しいわ」
「ナギが提案した調理器具類が爆売れしているからな」
おかげで、ダンジョン都市の飲食業界隈は大盛況だとか。
高額な魔道具には前世の料理レシピを添えて販売しているので、最近は外食が楽しみになった。
生活魔道具工房に到着すると、さっそく工房主であるミヤが出迎えてくれた。
「完成したよ、これ。すっごく面倒だったんだからね!」
赤毛のポニーテールを揺らしながら、完成品を手渡してくれる。
「ありがとう、ミヤさん!」
完成したのは、随分と前に依頼していたホットプレートだった。卓上サイズの魔道具仕様で、プレート部分が着脱式になっている。わくわくしながら、蓋を外してプレートを確認した。
「プレートは二枚あるのか?」
「うん、普通の鉄板焼き用のと、たこ焼き用と二種類!」
「たこ焼き……!」
ぱっとエドの表情が明るくなった。珍しく笑顔のエドに、不思議そうなミヤ。
「アタシは依頼があったから、その通りに作っただけだけど。こっちのプレートの使い方が分からないんだよね。これ、どうやって使うつもりなんだい?」
工房奥からミヤの相棒、ハーフエルフのムーラも顔を出してきた。魔道具部分の製作は彼が担当しているので、気になったのだろう。半分エルフの彼は、半分ドワーフの彼女と仲がいい。
「じゃあ、厨房を少しお借りしてもいいですか? たこ焼きをご馳走しちゃいます!」
ナギの提案に職人二人と、なぜかエドまで笑顔で頷いた。
事前に二人には食の禁忌や苦手な食材はないかを確認してある。異世界初の、たこ焼きパーティだ。ちょうど三日前に海ダンジョンに潜ったところなので、タコの在庫には困らない。
エドを助手にして、たこ焼き用の具材を用意することにした。
「とっても簡単なのよ。生地と中に入れる食材さえあれば、すぐに作れるから」
タコを切るのはエドに任せて、ナギは生地を作ることにした。小麦粉と水、ミルクに卵を割り入れて混ぜていく。生地にはしっかりと出汁をきかせておいた。
「具材はタコだけでいいのか?」
「うーん、今日はキャベツと天かすにしようか。ネギも少々。紅生姜はさすがに無いね、残念」
天かすは天ぷらを揚げた際にできた物をしっかり確保してある。
うどんや蕎麦、スープやおにぎりにちょい足しすると美味しいので、意外と重宝していた。
ミヤとムーラが興味津々で見つめてくる中、工房内でたこ焼きパーティは始まった。
テーブルの中央に魔道ホットプレートを置き、たこ焼きを作っていく。丁寧に油を塗り込んだプレートを温めて、生地を少しずつ流し込み、具材を一個ずつ放り込んでいくのだ。
刻んだタコと天かす。みじん切りにしたキャベツとネギ。蓋をするように、生地を上から流し込んだら、あとは火が通るのを待つだけだ。ぷつぷつと生地に火が通る音が弾けている。
「へぇ……面白いね。自分で調理して、そのまま食べる料理か」
「熱々だから、美味しいんですよ。自分たちで焼くのも楽しいし」
「そういうものなのですか」
ハーフエルフのムーラは不思議そうだ。自炊は基本的にしないらしい。
「あ、もういいかな?」
あふれた生地が固まりだしたら、竹串でひっくり返していく。前世の渚は、週末によく友人たちと自宅タコパを楽しんでいた。ナギは手慣れた様子で、火が通ったたこ焼きを転がしていく。
おお、と三人から歓声が上がる。手早く竹串を動かして、丸い形を作っていく様が面白かったようだ。綺麗な焼き色がついたところで、たこ焼きを皿に盛ってみた。
「ソースと青のり、鰹節は必須よね。マヨネーズはお好みで。はい、どうぞ!」
「ありがとう、ナギ。美味しそうだ」
「あの……、これ生きていませんか? うねうね動いているのですが」
「ムーラさん、それは鰹節。大丈夫、生き物じゃない」
怖がりのハーフエルフの青年を、エドが宥めている。そういえば、前世でも海外の観光客がたこ焼きやお好み焼きの鰹節に恐れ慄いていたことを、なんとなく思い出した。
「あっつ! 熱いけど、美味しいね、コレ!」
「ええ。どんな味がする料理か、まったく想像が付きませんでしたが、とても美味です」
ミヤとムーラに絶賛されて、ナギだけでなく、エドもなんだか嬉しそうだ。
皆でわいわいとたこ焼きをつまむ中、ナギは再び、生地をプレートに流し込んでいく。
気付いたエドが交代を申し出てくれた。
「ナギ、次は俺がやる」
「いいの?」
「ああ。やってみたい」
好奇心いっぱいの眼差しで訴えられたら、任せるしかない。
お言葉に甘えて、焼き担当は彼に任せることにした。フォークを刺して、たこ焼きを口に放り込む。出汁の利いた生地とぷりぷりのタコの食感に口元を緩めた。たこ焼きだ!
「ん、美味しい! ちゃんと、たこ焼きの味に仕上がっているわ」
異世界の食材や調味料だけで再現したので、少しだけ不安だったのだ。
「以前にフライパンでたこ焼きを作ったことがあったけど、コレジャナイ感がすごかったのよね。やっぱり、たこ焼きはこの丸く愛らしいフォルムが大事だったのよ。リベンジができて嬉しい」
フライパンで平らに焼いたものはもはや、お好み焼きでしかないのだ。
「なるほど。なんで、こんな妙な形のプレートを作らないといけないのかと不思議だったけど、納得だね。このタコヤキとかいう料理、最高じゃないか」
「ふふふ。美味しいし、簡単に作れて素敵でしょう? しかも、このプレート、たこ焼き以外にも使えちゃうんですよ。アヒージョも作れるし、なんと、スイーツも作れちゃいます!」
甘くした生地を入れて、一口サイズの焼き菓子を作るのもお約束である。
「プレートを入れ替えたら、肉や野菜を炒めることができるので、おうちパーティにも大活躍しますよ、ホットプレート」
調理が面倒な時に具材だけ用意しておけば、セルフで楽しめるのも嬉しい。
「これなら、自炊が苦手な私でも調理ができそうですね」
感心したように、タコ焼きを咀嚼するムーラ。くはは、とミヤが豪快に笑う。
「アンタは甘党だから、菓子作りの方が気になっているんだろ?」
「否定はしません。オーブンを使うのは火加減が難しいので諦めましたが、これなら私でも美味しい焼き菓子を作ることができそうです」
かくして魔道ホットプレート(たこ焼きプレート付き)はその後、ダンジョン都市で販売されて、爆発的に流行した。普段、料理をしない冒険者たちはもちろん、一般家庭にも売れたらしい。
ちなみにアキラは自分でたこ焼きが焼けずに落ち込んでいたが、たこ焼きはしっかり堪能した。
野営時に鉄板焼きも楽しめるようになったので、ナギ的には大満足の結果になった。
* * *
「明日の休み、ナギは何か予定があるのか?」
夕食後、たこ焼きホットプレートを使い、ベビーカステラを作ろうとしていたナギは唐突なエドの問い掛けに首を傾げた。
「午前中に料理の作り置きをするくらいかな? ああ、市場や商店街に買い物には行きたいかも」
特に予定もなかったので、そう答えると、そうか、とエドが顎を引く。
「なら、その買い物にアキラと一緒に行ってくれないか?」
「え? アキラと?」
「ああ。たまには街中を散歩してみたい、とアキラがうるさくてな」
「あー……」
なんとなく、想像はつく。せっかく異世界に転生したのだから、ファンタジーな街並みを観光したい、なんてエドに泣きついたに違いない。
軍馬並みに巨大な黒狼を引き連れて街を闊歩するわけにもいかないので、これまでアキラと出掛けたことはなかったが、我慢も限界なのだろう。エドの目から世界を見ることはできるけれど、テレビのモニター越しに見つめている感覚なのだと、以前にアキラから聞いたことがある。
(それはすごく、寂しいよね)
念願のファンタジーな街並みを実際に見て、体感したい気持ちはナギにも理解できる。
出掛けるとしても仔狼の姿にはなるのだが、ダンジョン都市の賑わいを直接その身で体感できるのなら、アキラも文句は言わないだろう。
「私は構わないけれど。エドがそう言うってことは、ようやく認めてくれたのかな?」
「む……」
ちょっと意地悪な言い方になってしまったか。ナギはエドの脇腹を肘で突いた。
「だって、ちょっと前までのエドは私一人での外出も許してくれなかったじゃない? いつもボディガードよろしく、どこでも同伴だったもの」
アキラが仔狼姿でガードするから、と。どんなに訴えても、自分が守ると決して譲らなかった、あのエドが! 肉体の所有権を渡して、ボディガード役を仔狼に譲ろうとしているのだ。
「やっと私が自衛できるくらいには強くなったって、認めてくれたってことでしょう?」
「……ナギが強くなったのは、ちゃんと認めている。それにアキラも頼りになる奴だ」
認めてはくれたが、複雑そうな表情をしている。面白くなさそうな、ちょっと拗ねた顔?
出逢ってからずっと、彼は騎士よろしく、ナギの身を守ってくれていた。
「魔法の腕も上がったし、これでも銅級の有望な冒険者。何かあったら、すぐに【無限収納EX】スキルの小部屋に逃げ込むつもりだから、心配しなくてもいいのよ?」
だいたい、エドは心配性なのだ。ダンジョン都市は冒険者以外の住民も半数ほど占めている。
問題を起こした冒険者はすぐに通報され、罰則が与えられるので、意外と治安は悪くない。市場や商店街だって、手癖の悪いスリにさえ気を付ければ、特に危険な場所ではないのだ。
貴重品はしっかり【無限収納EX】に収納してあるので、盗まれる心配も不要。
「アキラもちゃんと番犬? ……えーと、護衛犬? してくれるだろうし」
なんで疑問形? と、後でアキラには叱られそうだが、仔狼姿の彼の見た目は、どう見てもポメラニアンな愛玩犬なので。
「三年間ずっと我慢してくれたんだし、ご褒美に街に連れて行ってあげるわ」
「……そうだな。アキラはずっと街や冒険者ギルドに行ってみたいと言っていた」
「危ない場所には絶対に近寄らないって約束する」
「それは当然のことだな」
ダンジョン都市にもそれなりに危険な場所はある。
師匠たちやサブマスターになったフェローにも何度か口頭で念押しされた、裏通り。スラム街ではないようだが、後ろ暗い連中が多く住み、表通りには出せない店や屋台が並んでいるという。
興味がないとは言わないが、わざわざ自分から危険な場所に赴く酔狂さはないので、もちろん行くことはない。
何せ、二人のモットーは『命大事に、美味しく楽しく快適なスローライフ!』なのだから。
「じゃあ、お揃いのリボンをして行かなくちゃね!」
「……リボン?」
「うん。ギルドの受付嬢のリアさんが、街に従魔を入れるなら、魔獣と区別するために首輪や足輪、リボンを装着させる義務があるって教えてくれたの。首輪を嵌めるのは嫌だろうし、なら、リボンだったらいいかなと思って」
「あー……どうだろう。リボンよりは首輪がマシと、アキラなら言いそうだが……」
「でも、リボンだったらお揃いにできるのよ?」
「…………そうか。アキラなら喜ぶ、かもしれないな」
そっとエドが視線を逸らした。
「……ところで、ナギ。それは何を作っている?」
あからさまな話題逸らしだが、気になってはいたのだろう。
たこ焼き器で忙しなく生地を焼くナギの手元を、エドがじっと見つめてくる。
「ベビーカステラよ。オヤツにどうかと思って、試しに作っているの。食べてみる?」
「ベビーカステラ……。味の想像が付かないから、食べてみたい」
「んー? アキラの記憶にはないのかな」
たこ焼き器で作るベビーカステラはとても簡単だ。レシピもシンプル。小麦粉と卵と砂糖、牛乳に蜂蜜に植物油を混ぜた生地を焼くだけなのだ。
たこ焼きと同じように竹串を使って転がして生地を丸めて焼き上げると、完成!
「熱いから気を付けてね」
「ん、……小さなパンケーキ?」
「昔ながらのホットケーキ生地に近いかな? でも、素朴で美味しいのよ。たまに食べたくなる」
「そうだな。卵の味が濃いのが嬉しい。パンケーキより簡単で、たくさん作れるのがいい」
「でしょ? 蜂蜜味のプレーンと、粉糖をまぶしたのとか、ベリージャムを詰めて焼いたのも美味しそうだから作っちゃおうかな」
たこ焼きと同じで、色々なアレンジが楽しめるのが、焼き菓子の面白いところだ。焼き上げたベビーカステラにジャムを付けて食べるのも良し、バニラアイスとの相性も悪くないと思う。
「材料はたくさんあるし、師匠たちやギルドへの差し入れ用にたくさん焼いておこう」
「俺も手伝う」
すっかり、竹串でひっくり返す作業にハマったエドはベビーカステラ職人になった。
その間にナギはベリー系のジャムを用意する。一口サイズで食べやすい菓子はダンジョンアタック中のオヤツはもちろん、事務仕事で忙しいギルド職員の口にも合うはずだ。
大量に焼き上げたベビーカステラはいくつかのミニバスケットに放り込んでおく。これは差し入れ用。プレーンな味のカステラと、ベリージャム味の二種類が詰めてある。
焼き立ての菓子は温かいうちに【無限収納EX】に収納しておく。
アキラは冒険者ギルドにも興味があるようなので、立ち寄りついでに職員の皆にバスケットごと差し入れすることにした。
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