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18.その後
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ーーー半年後ーーー
結婚してからは、私も皇后として、皇宮に人を招いてお茶会を開催するようになった。
レイは、私を閉じ込め……いや、私が人前に出るのを嫌がったが、生まれてくる私達の子供のために、年齢の近いご夫人方と交流を深めたいと訴えたところ許可が出た。
レイは孤独な子供時代を過ごした。
我が子には友達を作ってやりたいのだろう。
まだまだマナーには不安が残る。
王宮で開催される舞踏会で、ジャスミンお母様を探してしまう。
そして微笑んでもらえるとほっとするのだ。
舞踏会でのジャスミンお母様は別人。
始めて見たときはその美しさに、瞬きすら忘れるほど驚いた。
艶やかな銀髪を下ろし、眼鏡を外すとあの厳しい雰囲気はどこへやら。
柔らかな春の陽だまりのような笑顔を浮かべる。
若い頃には社交界の華として、ジャスミンお母様を巡るいざこざもあったらしい。
私は今日も皇宮の中庭でお茶会を開催している。
最近は親しく話せる友人も出来た。
けれど、ゆっくり話す時間が無いことが悩みの種。
何故なら……
「ジェンナ、ちょっと時間が空いたから、様子を見にきたよ。」
こうやっていつも陛下がお茶会に来てしまうから。
陛下はいつものように私の隣の席に腰を下ろす。
だいたい、執務室を出て目の前の中庭でお茶会って、………何だか近すぎる。
お茶会に毎回も姿を表す陛下を見て、ご夫人方は「仲が良いのね。」と微笑ましく見守ってくれている。
私がプロポーズを断ってしまったせいで、彼の執着が激しくなったことは自覚している。
束縛が激しくて、耐えられない人も居るかもしれない。
それでも、彼の子供時代の孤独を傍で見てきた私は束縛されてもいいかと、最近思うようになった。
ジャスミンお母様にも
「アンドリュー陛下が国を正しく導くために貴女が必要ならば喜んで犠牲になりなさい。」
と言われてしまった。
私が傍にいれば、彼の心は平穏らしい。
ーーー6年後ーーー
「お母様、お城が出来たよ!!」
5才になる息子のオースティンが私を砂場まで引っ張って行く。
砂が付いてざらざらした小さな手は私の服を容赦なく触って汚していく。
(あー、また汚れちゃった。)
メイドをしていた私はこの服の汚れを落とすのが大変なことを知っているから申し訳なく思う。
皇宮の中庭にレイは砂場を作った。
幼い頃、砂浜で遊んだのが楽しかったらしい。
皇宮で開かれる子供を同伴したお茶会では大人も子供も汚れても大丈夫な服で来るように伝えてある。
今日はオースティンの友達のカーターとチェイスも来ているので、みんなで協力して大きな砂のお城を作ったらしい。
オースティンに引っ張られて歩いていると、レイが中庭へと姿を見せた。
「あっ!お父様っ!!」
オースティンが駆け寄ると、レイはオースティンを抱っこして、私に向かって笑顔を見せた。
オースティンもレイと同じ髪と瞳の色。
明るい陽射しの中、黄金の髪を煌めかせて私に笑顔を向ける二人が、いとおしくて胸がギュと締め付けられる。
「レイっ。オースティンが大きな砂のお城を作ったみたいなの。見てあげて。」
「大きいお城を作ったのか!凄いな!」
レイに頭をくしゃりと撫でられ、オースティンは嬉しそうに笑う。
オースティンが友達と作ったお城は、あの砂場まで私たちが作ったお城より大きくて立派だった。
「オースティン、カーター、チェイス、凄いわ。上手に出来たわね。」
子供たちを誉めると、彼らは照れたような得意げな表情で「へへへっ。」と笑い合っている。
褒められて満足したのか子供たちは再び砂遊びに夢中になる。
なんだかそれは幸せな光景で……。
三人で協力して桶で水を運んで川を作り、砂を掘って遊んでいる。
彼らが考える砂遊びは、
私たちがしていた遊び方にそっくりで笑ってしまうほど……。
レイを見上げると、優しい眼差しで子供たちを見つめていた。
穏やかで慈しみの籠った父親としての顔。
私は彼の手をとりそっと繋いだ。
あの日繋いでいたように……。
彼の体温を手に感じながら子供たちが遊ぶのを眺めていた。
ーーー完ーーー
結婚してからは、私も皇后として、皇宮に人を招いてお茶会を開催するようになった。
レイは、私を閉じ込め……いや、私が人前に出るのを嫌がったが、生まれてくる私達の子供のために、年齢の近いご夫人方と交流を深めたいと訴えたところ許可が出た。
レイは孤独な子供時代を過ごした。
我が子には友達を作ってやりたいのだろう。
まだまだマナーには不安が残る。
王宮で開催される舞踏会で、ジャスミンお母様を探してしまう。
そして微笑んでもらえるとほっとするのだ。
舞踏会でのジャスミンお母様は別人。
始めて見たときはその美しさに、瞬きすら忘れるほど驚いた。
艶やかな銀髪を下ろし、眼鏡を外すとあの厳しい雰囲気はどこへやら。
柔らかな春の陽だまりのような笑顔を浮かべる。
若い頃には社交界の華として、ジャスミンお母様を巡るいざこざもあったらしい。
私は今日も皇宮の中庭でお茶会を開催している。
最近は親しく話せる友人も出来た。
けれど、ゆっくり話す時間が無いことが悩みの種。
何故なら……
「ジェンナ、ちょっと時間が空いたから、様子を見にきたよ。」
こうやっていつも陛下がお茶会に来てしまうから。
陛下はいつものように私の隣の席に腰を下ろす。
だいたい、執務室を出て目の前の中庭でお茶会って、………何だか近すぎる。
お茶会に毎回も姿を表す陛下を見て、ご夫人方は「仲が良いのね。」と微笑ましく見守ってくれている。
私がプロポーズを断ってしまったせいで、彼の執着が激しくなったことは自覚している。
束縛が激しくて、耐えられない人も居るかもしれない。
それでも、彼の子供時代の孤独を傍で見てきた私は束縛されてもいいかと、最近思うようになった。
ジャスミンお母様にも
「アンドリュー陛下が国を正しく導くために貴女が必要ならば喜んで犠牲になりなさい。」
と言われてしまった。
私が傍にいれば、彼の心は平穏らしい。
ーーー6年後ーーー
「お母様、お城が出来たよ!!」
5才になる息子のオースティンが私を砂場まで引っ張って行く。
砂が付いてざらざらした小さな手は私の服を容赦なく触って汚していく。
(あー、また汚れちゃった。)
メイドをしていた私はこの服の汚れを落とすのが大変なことを知っているから申し訳なく思う。
皇宮の中庭にレイは砂場を作った。
幼い頃、砂浜で遊んだのが楽しかったらしい。
皇宮で開かれる子供を同伴したお茶会では大人も子供も汚れても大丈夫な服で来るように伝えてある。
今日はオースティンの友達のカーターとチェイスも来ているので、みんなで協力して大きな砂のお城を作ったらしい。
オースティンに引っ張られて歩いていると、レイが中庭へと姿を見せた。
「あっ!お父様っ!!」
オースティンが駆け寄ると、レイはオースティンを抱っこして、私に向かって笑顔を見せた。
オースティンもレイと同じ髪と瞳の色。
明るい陽射しの中、黄金の髪を煌めかせて私に笑顔を向ける二人が、いとおしくて胸がギュと締め付けられる。
「レイっ。オースティンが大きな砂のお城を作ったみたいなの。見てあげて。」
「大きいお城を作ったのか!凄いな!」
レイに頭をくしゃりと撫でられ、オースティンは嬉しそうに笑う。
オースティンが友達と作ったお城は、あの砂場まで私たちが作ったお城より大きくて立派だった。
「オースティン、カーター、チェイス、凄いわ。上手に出来たわね。」
子供たちを誉めると、彼らは照れたような得意げな表情で「へへへっ。」と笑い合っている。
褒められて満足したのか子供たちは再び砂遊びに夢中になる。
なんだかそれは幸せな光景で……。
三人で協力して桶で水を運んで川を作り、砂を掘って遊んでいる。
彼らが考える砂遊びは、
私たちがしていた遊び方にそっくりで笑ってしまうほど……。
レイを見上げると、優しい眼差しで子供たちを見つめていた。
穏やかで慈しみの籠った父親としての顔。
私は彼の手をとりそっと繋いだ。
あの日繋いでいたように……。
彼の体温を手に感じながら子供たちが遊ぶのを眺めていた。
ーーー完ーーー
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みんなの感想(51件)
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はぁあああ❤
本当に後味もスッキリの素敵な物語✧︎
大満足です!
なぁ恋様〜🌟
感想ありがとうございます
(੭*ˊᵕˋ)੭ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤ♡
薄幸ヒロインの純愛みたいなの好きでよく書いてました(๑′ᴗ'๑)エヘヘღ
またこういうお話書きたいです!
本日は、こちらの世界を覗かせていただいております。
お二人、そしてお二人が作る世界も、ずっと好きですので……っ。
結末が分かっていても、お邪魔したくなって。
今日も、お二人の物語に浸らせていただきました……っ。
柚木ゆず様~🌺
感想ありがとうございます💐
返信遅くなってすみません😣💦
何回も読んでいただけて嬉しいです🎵
今後は改稿作業も考えていますが、筆が進まず💦
一気に拝読いたしました。
とても、好みのお話しでした‼️
闇のある王様は大好きですの❤️
また素敵なお話を書いてくださいませ!
ありがとうございました(๑・̑◡・̑๑)♡
RoseminK様💞
感想ありがとうございます🤗
このお話も読んでくださったんですねー
うれしー
(ノ≧∀≦)ノ
好みのお話で良かったです🎶