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第二章 続編 セネルス国の騒動
6 ロワクレスの心配 R18
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*BLのR18表現がございます。お気をつけください。
《シュン視点》
どっどっどっど! 階段を二段飛ばしに駆けあがって廊下を走る足音が来る。
バタン! 派手な音を立てて寝室の扉が叩きつけられた。
廊下は静かに。扉も静かに! 文句を言おうとした俺は、大きな体に締め潰された。
「シュン! 大丈夫だったか?」
今、大丈夫じゃありません。確実に俺はあの世への階段を上りかけている。
「く、くる……し、い」
必死に訴えた抗議に、ロワクレスの腕の拘束が緩んだ。
「あ、すまん。つい……」
“つい”で絞め殺されたら世話はない。どうしてこいつは学習しないんだ? あんたの馬鹿力は半端じゃないんだぞ。
俺は半目でじとっとロワクレスを睨んだ。だから、もういいだろう? 降ろしてくれよ。
「ヨハネスから聞いた。今日、グルガハム兄弟が来たんだって? ひどいことをされたと聞いたぞ」
ああ、そのことね。ヨハネスさん、報告しちゃったんだ。義務だから仕方ないのかな。ひどいことはされたんじゃなくて、どっちかというとしたほうかも、だけど。
「怪我はないか? 嫌な事されてないか? こんな子供を襲うなんて、なんて人でなしな奴らなんだ! 私は許さないぞ!」
その子供を毎晩のように抱き潰しているロワクレスが言うか? 自分の事は空の彼方まで高―く棚に上げての発言だな?
だがその前に、言っておきたいことがある。
「俺は子供じゃない! 何度言ったらわかるんだ!」
もうすぐ十九歳になるんだぞ。
「わかっているよ。可愛いな。シュン」
蕩けるような笑みで、腕の中の俺の顔を覗き込んでくる。
――毎度のことながら、全然わかってないぞ、ロワ。
不毛な話題は切り上げて、さっさと話を戻そうか……。
「あいつらは図体がでかいだけで、さっぱり訓練らしい訓練はやっていない。そんな連中に、俺がどうとかされると思うか? 気にするなよ」
気づかわしげに揺れていた碧眼がほっとしたように柔らかくなった。
「それより、飯は食べたのか? 帰って真っすぐ上がって来たんじゃないのか?」
今夜はずいぶん時刻も遅い。こういう時、俺は先に休むことにしている。起きて待っていると、ロワクレスがひどく心配するのだ。
M・Sのシングルナンバーになんて対応だろう。こんな風に甘やかすってのは、やっぱり子ども扱いしているからなんだろうな。
「食事は王宮で摘まんできた。やはり心配だな。あの連中がまた来るかもしれん。親父も何か手を出してこないとも限らん。シュンを屋敷に一人で置いておくのは心配だ」
「大丈夫だよ。ヨハネスさんもアニータさんも、みんなが居てくれるし。それより軽く食べたらどうだ? ロワは明日も忙しそうだ。ちゃんと食べないと、身体を壊すぞ」
ロワクレスの腕の中から何とか脱出すると、呼びベルを鳴らしてロワクレスのために夜食を頼む。まだグダグダ言い募っている彼を風呂を使って来いと追い出した。いったいどこが氷鉄の騎士なんだ? 心配性の保育パパみたいだぞ。
***
「や、やめ……、ロワ……いやだ!」
今、俺はひどく恥ずかしい状態でびくびくと身体を震わせていた。嫉妬全開状態のロワクレスは、いくら俺が何もされていないと言っても納得してくれず、挙句に直接身体に確かめると言い出してこのざまだった。
素っ裸に剥かれるのは毎度のことだが、うつ伏して腰を高く上げ尻をロワクレスの目の前に晒している。大きな手で尻を掴まれ開いたそこに鼻を押し当てられ、さらには舌を入れられている。
場所が場所だ。俺は羞恥で死にそうだった。犬や猫じゃないんだから。そ、そんなところを嗅いだり舐めたりしないでくれ!
だが、ロワクレスは他の男の気配がないか確かめると言って聴かないのだ。
時折、ロワクレスの愛情は妄執に近い執着をみせることがある。今もその状態に近い。切れて暴走したらきっと怖いことになりそうな予感がした。幼い頃から自分を律してきた過度の抑制のため、感情の発達が不完全で、正常な範囲を逸脱しやすいのかもしれない。
自分自身を含めて人や物に関心を持たなかったと聞く。拒絶するわけではないが、その無関心は拒絶以上の冷たさで、ゆえに氷鉄の騎士と呼ばれるのだと。
それが俺を得た。唯一無二として関心を持ち、慣れない感情のゆえに独占欲は病的な執着へと変貌していく。
だが、そんなロワクレスの執着にぞくぞくと悦びを覚えてしまう俺もけっこう危ない奴なのかもしれなかった。
舌の動きに俺の身体はぐずぐずに溶けていく。すっかりロワクレスに慣らされ、馴染んでしまった身体は彼を受け入れ喜ぶ形に変えられていた。直に俺は甘く鼻を鳴らし、ロワクレスを欲しがってねだってしまう。
それを聞くと、ロワクレスは蕩けるような甘い笑みを浮かべて望みの物を与えてくれた。雄の欲望にぎらぎらと目を輝かせて俺を欲しくてたまらないと伝えながら。
その色っぽくて男らしい顔を見つめ、俺は両手を伸ばす。キスを交わし合い、互いに求め合い、欲望を貪り合うひと時を獣のように満喫する。
ロワクレスの性欲と体力は俺よりはるかに強くて、いつも彼が満足する前に俺はギブアップしてしまう。申し訳ないとは思うのだが、体のつくりの違いは如何ともしがたい。
ロワクレスが耳元に囁く声を聞きながら、俺は今夜も意識を手放した。
「シュン、明日から補佐をやってもらう。シュン……」
《シュン視点》
どっどっどっど! 階段を二段飛ばしに駆けあがって廊下を走る足音が来る。
バタン! 派手な音を立てて寝室の扉が叩きつけられた。
廊下は静かに。扉も静かに! 文句を言おうとした俺は、大きな体に締め潰された。
「シュン! 大丈夫だったか?」
今、大丈夫じゃありません。確実に俺はあの世への階段を上りかけている。
「く、くる……し、い」
必死に訴えた抗議に、ロワクレスの腕の拘束が緩んだ。
「あ、すまん。つい……」
“つい”で絞め殺されたら世話はない。どうしてこいつは学習しないんだ? あんたの馬鹿力は半端じゃないんだぞ。
俺は半目でじとっとロワクレスを睨んだ。だから、もういいだろう? 降ろしてくれよ。
「ヨハネスから聞いた。今日、グルガハム兄弟が来たんだって? ひどいことをされたと聞いたぞ」
ああ、そのことね。ヨハネスさん、報告しちゃったんだ。義務だから仕方ないのかな。ひどいことはされたんじゃなくて、どっちかというとしたほうかも、だけど。
「怪我はないか? 嫌な事されてないか? こんな子供を襲うなんて、なんて人でなしな奴らなんだ! 私は許さないぞ!」
その子供を毎晩のように抱き潰しているロワクレスが言うか? 自分の事は空の彼方まで高―く棚に上げての発言だな?
だがその前に、言っておきたいことがある。
「俺は子供じゃない! 何度言ったらわかるんだ!」
もうすぐ十九歳になるんだぞ。
「わかっているよ。可愛いな。シュン」
蕩けるような笑みで、腕の中の俺の顔を覗き込んでくる。
――毎度のことながら、全然わかってないぞ、ロワ。
不毛な話題は切り上げて、さっさと話を戻そうか……。
「あいつらは図体がでかいだけで、さっぱり訓練らしい訓練はやっていない。そんな連中に、俺がどうとかされると思うか? 気にするなよ」
気づかわしげに揺れていた碧眼がほっとしたように柔らかくなった。
「それより、飯は食べたのか? 帰って真っすぐ上がって来たんじゃないのか?」
今夜はずいぶん時刻も遅い。こういう時、俺は先に休むことにしている。起きて待っていると、ロワクレスがひどく心配するのだ。
M・Sのシングルナンバーになんて対応だろう。こんな風に甘やかすってのは、やっぱり子ども扱いしているからなんだろうな。
「食事は王宮で摘まんできた。やはり心配だな。あの連中がまた来るかもしれん。親父も何か手を出してこないとも限らん。シュンを屋敷に一人で置いておくのは心配だ」
「大丈夫だよ。ヨハネスさんもアニータさんも、みんなが居てくれるし。それより軽く食べたらどうだ? ロワは明日も忙しそうだ。ちゃんと食べないと、身体を壊すぞ」
ロワクレスの腕の中から何とか脱出すると、呼びベルを鳴らしてロワクレスのために夜食を頼む。まだグダグダ言い募っている彼を風呂を使って来いと追い出した。いったいどこが氷鉄の騎士なんだ? 心配性の保育パパみたいだぞ。
***
「や、やめ……、ロワ……いやだ!」
今、俺はひどく恥ずかしい状態でびくびくと身体を震わせていた。嫉妬全開状態のロワクレスは、いくら俺が何もされていないと言っても納得してくれず、挙句に直接身体に確かめると言い出してこのざまだった。
素っ裸に剥かれるのは毎度のことだが、うつ伏して腰を高く上げ尻をロワクレスの目の前に晒している。大きな手で尻を掴まれ開いたそこに鼻を押し当てられ、さらには舌を入れられている。
場所が場所だ。俺は羞恥で死にそうだった。犬や猫じゃないんだから。そ、そんなところを嗅いだり舐めたりしないでくれ!
だが、ロワクレスは他の男の気配がないか確かめると言って聴かないのだ。
時折、ロワクレスの愛情は妄執に近い執着をみせることがある。今もその状態に近い。切れて暴走したらきっと怖いことになりそうな予感がした。幼い頃から自分を律してきた過度の抑制のため、感情の発達が不完全で、正常な範囲を逸脱しやすいのかもしれない。
自分自身を含めて人や物に関心を持たなかったと聞く。拒絶するわけではないが、その無関心は拒絶以上の冷たさで、ゆえに氷鉄の騎士と呼ばれるのだと。
それが俺を得た。唯一無二として関心を持ち、慣れない感情のゆえに独占欲は病的な執着へと変貌していく。
だが、そんなロワクレスの執着にぞくぞくと悦びを覚えてしまう俺もけっこう危ない奴なのかもしれなかった。
舌の動きに俺の身体はぐずぐずに溶けていく。すっかりロワクレスに慣らされ、馴染んでしまった身体は彼を受け入れ喜ぶ形に変えられていた。直に俺は甘く鼻を鳴らし、ロワクレスを欲しがってねだってしまう。
それを聞くと、ロワクレスは蕩けるような甘い笑みを浮かべて望みの物を与えてくれた。雄の欲望にぎらぎらと目を輝かせて俺を欲しくてたまらないと伝えながら。
その色っぽくて男らしい顔を見つめ、俺は両手を伸ばす。キスを交わし合い、互いに求め合い、欲望を貪り合うひと時を獣のように満喫する。
ロワクレスの性欲と体力は俺よりはるかに強くて、いつも彼が満足する前に俺はギブアップしてしまう。申し訳ないとは思うのだが、体のつくりの違いは如何ともしがたい。
ロワクレスが耳元に囁く声を聞きながら、俺は今夜も意識を手放した。
「シュン、明日から補佐をやってもらう。シュン……」
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