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第二話 精力剤を飲ませるか
しおりを挟む私はその場でぐるぐると回りながら、部屋全体を見渡す。改めて見直しても内装はまさに中世の貴族の家と言ったいでたちだ。
「確かにマーレの部屋だ」
作戦を立てる為ここでサリオスについてもう一度簡単に振り返る。サリオスは軍人でマーレの婚約者だったが、ある日マーレの両親が亡くなった事でサリオスの両親がその婚約を強引に破棄した。そしてサリオスは別の女性の結婚し子供をもうけ、マーレとの再会に繋がるという訳である。
「多分だけど部屋を出たら、物語が始まるんだよね」
私はサリオスの簡単な振り返りと部屋を見渡し終えた後そう呟く。大きな振り子のついた時計は午前7時を指している。
「どう、サリオスくんを攻略すべきか…まずは家に連れ込んで朝チュンまで行きたい所だけど」
(確かシャワー中に奥さんから電話掛かってきてやる気失くして萎えるんだよな。どう萎えないようにすべきか…)
私は顎に指を乗せた。すると脳内にあるものがよぎる。
「精力剤飲ませるか」
そうと決まれば一直線。私は娼婦館に向かう途中に立ち寄った薬屋で精力剤を購入する。薬屋の主人曰く感想させた蛇やスッポンをすりつぶして粉にしたものに、魅了魔法がかかっているのだという。
「水だと流石に味でバレそうだし、コーヒーあたりに混ぜて飲まそう」
(てかこの世界コーヒーあるのかな? 無いなら紅茶辺りにしこむか)
精力剤を購入してマーレが所属する娼館に出向いた私を、ボーイと下働きの娘達が出迎えた。
「マーレ様おはようございます」
「皆さんおはようございます。今日もよろしくお願いします」
私が頭を下げて挨拶すると、十代くらいの見た目のボーイの一人が私専用の控室まで先導し、ご丁寧にドアを開けてくれた。
挨拶が終われば早速娼婦3名と貴族の館で開かれるサロンへ馬車で向かい、お茶をしながら貴族の婦人達との話に花を咲かせる。話の中には漫画では殆ど描かれなかった王宮の噂話などもあった。
ちなみに貴族の婦人が用意してくれたティーセットにはコーヒーもあった。こうして私は婦人の一人からコーヒーパックをゲットする事に成功した。
(よし)
すると外の庭園の東屋にて貴族の女性二人が扇子片手にひそひそと話している姿を目撃する。
せっかくなので近くの植え込みまで行き、聞き耳を立てる事に決めた。
「そう言えばカーティス様が花嫁を探しているそうね」
「えー…カーティス様ねえ。私はあまり好みでは無いわね。だって不愛想で地味だもの」
「あははっ確かにあの方の妻は嫌だわあ。華がないし」
そんな会話に私は心の中で頷きつつも、にこにこと看護業務にあたっている時と同じように無言でその場から離れるのだった。
(あれだな。お局看護師と変わんねえな)
夕方16時。私は漫画通りに花を買うために娼館から街へ外出をする。勿論彼との再会のためだ。
(この通りだったな。あとは、サリオスくんとの再会を待つだけ)
通りで待っていると、黒い軍服を着た彼が通りがかった。間違いなくサリオスだ。
「サリオス!」
漫画と全く同じ構図で全く同じセリフを私は吐く。すると向こうも漫画と同じように振り返り、私の姿を見た。
「マーレ…!」
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