婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第57話 脱出

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 住民達に連れてこられた集落は、レンガ造りのちょっと年季の入った家がぽつぽつと並んでいる。
 その中でも一際大きな家に私達は招かれ中に入る事になった。

「失礼します」

 住民達はそれはそれはもう小躍りをするくらいテンションが上がっている。

「王太子殿下をもてなさなければ!」
「王太子殿下が来たぞ!」

 私から見ると彼らの反応は、若干わざとらしく見えてしまう。

「料理を作らないと」
「豪華な料理を!」

 住民の女性達はすかさず、速歩きで台所へと向かっていった。これは私も手伝った方が良いのだろうか。

「私も手伝います」

 私が台所に入室した際、机に見た事のある葉が置かれてあった。このギザギザした形の葉は、大麻草ではないか。それに若干緑色に光っている茶色いキノコも並んで置いてある。

「それ、使うんですか?!」

 私は意を決して彼女達に大きな声で問うた。

「そうだけど?」
「いや、毒ですよ? それに大麻草は……!」
「やはり薬師様を騙すのは無理みたいね……」

 すると女性の1人が持っていた包丁を持ち、こちらめがけて突進してきた。すんでの所で交わし、彼女の腕を掴むと組んで何とか取り押さえる事に成功する。

(両親から嫌ほど教わった護身術がここで役に立つとは)

 だが別の女性も包丁を持ち、私に向けて構える。私は取り押さえた女性の腕を後ろ手に回してそこから包丁を奪い取ると彼女に向けて構える。

「大人しくしなさい。何を考えているんです!」
「バレてしまったからには……」

 騒ぎを聞きつけアダン様が台所にやってきて、すぐに剣を抜いて彼女が持っている包丁を弾き飛ばした。

「甘いね」
「ぐっ……」

 私はアダン様と共に台所から離れ、荷物を回収しつつ、兵らに囲まれながら家を出た。その間住民達からの襲撃に何度か遭ったが無事に城まで到着したのだった。

「はあ……」
(死ぬかと思った)

 あの住民達は一体何を企んでいたのだろうか。まさかアダン様を快く思っていない人達の集まりだろうか。大麻や怪しいキノコを用意してた辺りそんな気がする。

「ジャスミン、怪我は無い?」
「はい、大丈夫です。助かりました」
「すぐに軍を送ろう。話聞いてたけど大麻草があったんだっけ?」
「はい。あと光るキノコもありました」
「毒盛ろうとする気まんまんだな……皆助かって良かったよ」

 その後、私達は城内で厳重な警備の元、身体を休ませた。
 住民達は捕らえられ、都へ移送される事が決定した。どうやら大麻草を秘密裏に育てていたり、アダン様ら王族には反対の立場にあったようだ。

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