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第44話
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この国、ザパルディ国にはある神話がある。
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
「……」
という内容が本には記されていた。私は既に成人を迎えている。となると、この本の通りに神託を受ければ聖女かどうか判明するのだろう。
(でも、神託ってなんだ?)
神託のくわしいやり方、受け方、方法はこれまで私は一度も聞いた事が無い。この本を捲ってみても神託についての詳細な記述は見当たらない。
「ただいまーー」
「クリス様、おかえりなさい」
クリス様がシャワーを浴び、寝間着に着替えて部屋に戻って来たので、この本に書かれている聖女の話と神託について彼に聞いてみる事にした。
「クリス様、聖女の神託ってどのような感じなのでしょう」
「ああ、俺も調べたんだけど分からないんだ。父上母上に聞いても教えてくれないし」
「……成る程」
「その本も読んだけど神話だけで神託がどのようなものかは記されていない。でもマリーナは成人を迎えているしそろそろそういう話が出てもおかしくはないと思うんだけど」
「そう、ですよね……」
確かにそうだ。私はもう成人を迎えているのだから神話通りならいつでも神託は受けられるはずだ。
それとも今は、神託を受けるタイミングでは無いのだろうか。実際私の髪色は大分元に戻りつつはあるが、まだ不完全と言った具合ではある。
「まだ、髪色が戻って無いとか、ですかね……?」
「……元の髪色に戻るまで神託を伸ばしている可能性?」
「はい、クリス様」
クリス様は腕を組み、目を閉じながらうんうんと考え込んでいる。
「あと、もう1つあるなら……皆の前で神託を受けなければならない、とか?」
そのクリス様の言葉に私ははっと気づく部分があった。それは親善交流パーティーである。パーティーという国の内外から王族貴族が集まる場で、神託を大々的に行うという可能性である。
だが、それならそろそろ神託を受けるという話があっても良いように思うのだが。
「もし、パーティーで私が皆の前で神託を受けるなら……そろそろ話があるように思いますが」
「……確かに」
「国王陛下と王妃様は教えてくれないんでしたっけ?」
「そうだ。クララおばあさまも教えてくれない」
「……そこまで、秘密にしなければならない理由があるんでしょうか」
「だろうな。誰も教えてくれないし、本も見つからない」
結局私は神託を受けるという話が出るまでは、待つしか無いようだ。
「待つしか無いようですね」
「そうだな……」
「物騒なものじゃなければ良いですが」
「確かにな……」
その後。天蓋付きの大きなふかふかのベッドでクリス様と寝て、朝を迎えた。
パンとホットミルクを頂き、着替えてからクリス様と共に大学院に通ったのだった。
「あ」
大学院の正門前にある掲示板の張り紙に目が止まった。どうやら大学院でも親善交流パーティーに関するイベントが行われるらしく、しばらく講義や研究お休みになるようだ。しかし自主的な研究や自習の為に登校するのは可能らしい。
「休みか」
「そうみたいですね」
「じゃあ、休みの分のレポート出さなくて良いんだ」
「……助かりますねえ」
「な!」
大学院の施設内も花や国旗が飾り付けられ、私達も講義の一貫で花を飾ったりするのを手伝ったのだった。
「教授、ここの花瓶にはこの花で合ってますか?」
「はい、ジェリコ公爵。生けちゃってください」
「よっ……」
花瓶に指定された花々を目立つように生けてみた。隙間がなるべくないように生けた結果、我ながら華やかに生けられたような気がする。
「どうですか?」
「良いですね、華やかで良いと思います!」
「ありがとうございます」
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
「……」
という内容が本には記されていた。私は既に成人を迎えている。となると、この本の通りに神託を受ければ聖女かどうか判明するのだろう。
(でも、神託ってなんだ?)
神託のくわしいやり方、受け方、方法はこれまで私は一度も聞いた事が無い。この本を捲ってみても神託についての詳細な記述は見当たらない。
「ただいまーー」
「クリス様、おかえりなさい」
クリス様がシャワーを浴び、寝間着に着替えて部屋に戻って来たので、この本に書かれている聖女の話と神託について彼に聞いてみる事にした。
「クリス様、聖女の神託ってどのような感じなのでしょう」
「ああ、俺も調べたんだけど分からないんだ。父上母上に聞いても教えてくれないし」
「……成る程」
「その本も読んだけど神話だけで神託がどのようなものかは記されていない。でもマリーナは成人を迎えているしそろそろそういう話が出てもおかしくはないと思うんだけど」
「そう、ですよね……」
確かにそうだ。私はもう成人を迎えているのだから神話通りならいつでも神託は受けられるはずだ。
それとも今は、神託を受けるタイミングでは無いのだろうか。実際私の髪色は大分元に戻りつつはあるが、まだ不完全と言った具合ではある。
「まだ、髪色が戻って無いとか、ですかね……?」
「……元の髪色に戻るまで神託を伸ばしている可能性?」
「はい、クリス様」
クリス様は腕を組み、目を閉じながらうんうんと考え込んでいる。
「あと、もう1つあるなら……皆の前で神託を受けなければならない、とか?」
そのクリス様の言葉に私ははっと気づく部分があった。それは親善交流パーティーである。パーティーという国の内外から王族貴族が集まる場で、神託を大々的に行うという可能性である。
だが、それならそろそろ神託を受けるという話があっても良いように思うのだが。
「もし、パーティーで私が皆の前で神託を受けるなら……そろそろ話があるように思いますが」
「……確かに」
「国王陛下と王妃様は教えてくれないんでしたっけ?」
「そうだ。クララおばあさまも教えてくれない」
「……そこまで、秘密にしなければならない理由があるんでしょうか」
「だろうな。誰も教えてくれないし、本も見つからない」
結局私は神託を受けるという話が出るまでは、待つしか無いようだ。
「待つしか無いようですね」
「そうだな……」
「物騒なものじゃなければ良いですが」
「確かにな……」
その後。天蓋付きの大きなふかふかのベッドでクリス様と寝て、朝を迎えた。
パンとホットミルクを頂き、着替えてからクリス様と共に大学院に通ったのだった。
「あ」
大学院の正門前にある掲示板の張り紙に目が止まった。どうやら大学院でも親善交流パーティーに関するイベントが行われるらしく、しばらく講義や研究お休みになるようだ。しかし自主的な研究や自習の為に登校するのは可能らしい。
「休みか」
「そうみたいですね」
「じゃあ、休みの分のレポート出さなくて良いんだ」
「……助かりますねえ」
「な!」
大学院の施設内も花や国旗が飾り付けられ、私達も講義の一貫で花を飾ったりするのを手伝ったのだった。
「教授、ここの花瓶にはこの花で合ってますか?」
「はい、ジェリコ公爵。生けちゃってください」
「よっ……」
花瓶に指定された花々を目立つように生けてみた。隙間がなるべくないように生けた結果、我ながら華やかに生けられたような気がする。
「どうですか?」
「良いですね、華やかで良いと思います!」
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