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ソヴィ視点⑩

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 私はエルシドの街の宿で寝ている所を宮廷の兵によって捕縛され、宮廷に連行された。無論イデルも一緒だ。
 そして今、目の前にはイリアス様が玉座と似た黄金の椅子に座り口を硬く結んで私と目線を向ける。

「い、イリアス様……」

 イリアス様が私を縛っている縄を解くように兵へと素っ気なく命令した。ナイフで縄が荒々しく解かれると次は私の目の前に茶色い机が置かれた。机の上にはペンと書類が置かれてある。
 この書類は……離縁の証明書だ。

「これにサインをすれば良いのですね」
「ああ」

 私はそのままペンを取り、書類にサインした。もう、イリアス様への愛が尽きているのが理解できた。さらさらと書類にサインする私をイデルは横から見守り、イリアス様は目をやや見開きながらも見ていた。

「出来ました。確認をお願い」

 イリアス様の横に待機していた従者が書類を机から取り1枚1枚目を通していく。

「大丈夫です。間違いはございません」
「そう。じゃあ、ご機嫌よう。ああ、イデルの縄も切ってあげて頂戴。彼は私の命令に従っただけだもの」
「……ソヴィ」

 イリアス様が私の名を呼んだ。これまでは名前を呼ばれる度に嬉しさを感じていたのに、今はほとんど無い。

「私はお飾りの王太子妃だったようですね。では、ご機嫌よう。もう会う事は無いでしょう。……せいぜい後悔してくださいまし?」

 試しに鬱憤を嫌味を変えて吐き捨ててみたら、案外胸の中がすっきりした。
 こうしてイリアス様と離縁した私はイデルと共にかつて王族が使っていた空き家の洋館にて、彼の馬と共に新生活を始めた。お金はイデルが工面してくれているので不自由なく暮らせている。
 しばらくして、私のザパルディ国への立ち入りを禁じたという書類が届いたが、ザパルディ国にも立ち入る事もマリーナに会う事も無いだろう。私はここで一生を送るつもりだ。

「ソヴィ様。こちら知り合いから頂きました」
「へえ、鳥じゃない」
「こちら、ローストにしようと思っています。ソヴィ様鳥肉のローストお好きみたいですし」
「分かっているじゃない」
「勿論です」

 イデルは早速厨房に向かい、鳥の下処理をしにいった。彼の背中を眺めながら、私はふうっと息を吐いた。
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