過去と未来と偉人とキーと

赤欄

文字の大きさ
上 下
1 / 2
0.ふとした出会い

ふとした出会い

しおりを挟む
「それじゃ、またねー」軽やかなステップで私は校門を後にする。今日は1学期の終業式、そう、夏休みが私を迎えに来てくれたんだ‼………「ちょっと、急にどうしたの彩芽…」友人たちが変な目でこっちを見ている……。「心の声、私たちにまる聞こえだったよ」……え、嘘でしょ!?さっきの心の声、かぎかっこついて無かったよね?……あれ?体がふらっと倒れてゆく………………

「ふー」…………1つため息をついた。外では学生たちの声が聞こえる。どうやら今日はみんな帰りが早いようだ。俺は岸田 広一(きしだ ひろいち)、よく「こういち」と読み間違えられる。でも、俺はそういうことすら聞く権利を持っていない…………
俺の両親は亡くなったのだろう、物心ついた時には俺の周りの人なんか誰もいなかった。衣・食・住、教育…………それらが当たり前になった現代で俺みたいな境遇にいるやつは1人もいないだろう。そもそも自分の名前が正しいのかすらわからない。“なんとなく覚えてる”、そんな感じで生きてきた。それも15年間…………。誕生日もわからないから自分で作った、落ちてたカレンダーで適当に。そして今日、俺の記憶が正しければそれは「俺の仮の誕生日」…………
ぐーーー。盛大に腹が鳴った。そういえばここ数日くらいろくに食事してなかったっけ…………。

「おい、目ぇ覚ませよ。それだと俺が何も打ち込めねーだろ。」
何者かに言われ2人は目を覚ました。「新垣 彩芽(にいがき あやめ)、岸田 広一。残念ながらお前らは俺に選ばれたみたいだな…………。」「選ばれたって、何に?」彩芽が誰でも聞きたくなることを聞いた。「『時代のコンピュータ』を作ってきてくれないか。」
それはあまりにも現実味のない頼みだった。「まあ分からなくて当然だよな。」その言葉をかわきりに急に説明しだした。「時代のコンピュータ、それはこの世界の時代を統括するもの。キーの選択1つで時代が変わるかもしれない、そんな可能性を秘めたやつだ。それがな、“キーボードが散乱したって”話でさ…………。」「だからって、なんで俺たちなんだ?」「俺が幸い残ってたキーを使って2人の名前を打った。それがお前たちだったってわけだ」そして作りかけのキーボードを見せる。A,D,E,G,I,K,M,N,O,R,S,T,Y。確かにキーボードにはこのキーだけが残っている。「言わば“バックアップ”、復旧作業ってわけだ。」
この物語の作者、赤欄はそう言った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,696pt お気に入り:301

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:272

ディメンショナルワールド 35 新星といわれた神

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

悪役令嬢の去った後、残された物は

恋愛 / 完結 24h.ポイント:355pt お気に入り:222

イケメン俳優パパ 『生田 蓮』に恋をして――。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,370pt お気に入り:38

処理中です...