ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

文字の大きさ
36 / 89

スライムが好敵手

しおりを挟む
「アルクがどれだけ戦えるのか見たいので、ちょっと外行きましょう」

そうして連れてきたのは東の平原。
森の近く。
スライムがぴょこぴょこしてる場所。

「あのスライムを倒してみてください。森の中だと剣が木にぶつかって振りにくいと思うので、一撃入れたら森から出てくださいね。この辺りで戦って」
「うむ、分かった」

素直に王子は頷くと、森の中に少し入って、スライムを引き連れて出てきた。
ぴょいんぴょいんとスライムが王子にボディアタック。
王子はブンブン剣を振り回した。

「あぶっ…」

その剣が私の頭を掠める。
瞬間的に屈んで回避した私は思わずぶち切れて、そのままの姿勢から王子の足に狙いを定めて蹴りを入れる。

「…あっ…な、何だミア」
「何だじゃないですよ!めちゃくちゃ剣振り回すから、当たる所だったじゃないですか!」
「え……あ、気づかなかった……すまない」

確かに私も近寄り過ぎてたのは悪かったけど、周りを見ないで戦闘するのは駄目だ。
ソロで活動するなら別だけど、それでも周囲の障害物を認識していなければ、正確に剣を振るう事は出来ない。
スライムはぴょいんぴょいんと跳ねて、王子をどついている。
ダメージは金属鎧で弾かれているだろうけど、王子の身体は体当たりの衝撃で揺れていた。

いいぞ、もっとやれ!
頭を狙え、頭を!

思わず私はスライムを応援した。
そして、足元に光るものがあるので拾い上げると、ピンクの髪の毛。
私の髪の毛、ちょっと切れてた。

「見て下さいコレ。ミアちゃんは今日死にましたよ」
「……あ、…ああ……私は何という事を……」

言いながら指で摘んだ髪の毛をはらり、と落とすと、王子はそれを掌で受け止めた。
反射神経は中々いいな?
だが、追及の手は緩めない。

「アルクはもしかして公女様に私を殺してくるように言われた暗殺者ですか?殺したら返り咲けるんですか?守ってくれるんじゃないんですか?」
「うああ……違う、違う!それはない!守る!守りたいんだ!次からは気をつける!」

涙目になった王子を見て、私は漸く溜飲が下がった。
なので、こっくり頷いて、スライムを指し示すようにクイッと顎を上げる。
無言の仕草で分かったらしく、王子はぐすぐす言いながら剣を構えて、スライムを倒し始めた。

え……?
スライム倒すのって、そんなに難しいの……?
私、何か間違ってたのかな?

王子は十分経ってもスライムとやり合っている。
はあはあ言いながら、王子はぶんぶん剣を振っているので、思わず心配になってしまった。

「あの、アルク、大丈夫?」
「……はあ、はあ、大丈夫だ……見ていてくれミア!必ず倒してみせる!」

キラン!と王子スマイルを見せてくるけどさ。
相手スライムな。
雑魚キャラナンバーワンのスライムパイセンな。
ゴブリンはまだ分かるよ?
道具や武器を使う知能もあるわけだし。
でもスライムて。

私は首を傾げて、森の中にいる一匹を短剣で突いて、森の外へ出る。
ぴょいんぴょいんと勢いよく跳ねて、体当たりしてくるので、回避。
次は回避しながら一撃を入れたら、呆気なく絶命した。

うん、ですよね?

ていうか、スライムってゼリーみたいだけど、死ぬと粘液がもっと水っぽくなって溶けるの面白いなぁ。
思わず私はしゃがんで観察した。
小さいから核《コア》もないのかな?
魔石は見当たらない。
スライムの主食って何だろう?
草?草かな?
虫も食べてそうだけど、雑食?
でも、普通の小さいスライムは毒はないし。
この粘液とか何かに使えないのかなあ?

「よし、倒したぞ!」

私がスライム観察している間に倒せたらしい。
額の汗を拭って、輝かしい笑顔を向けてくるけど、やっぱりスライム雑魚じゃん。

「はい次」

私が言葉少なに言うと、王子はちょっぴり眉を下げて、森からスライムを連れてきた。
そしてまた死闘を繰り広げる。
何で倒せないのか?といえば、攻撃が当たってないからだよね。
当たりさえすれば倒せる。

「アルク、スライムの動きをちゃんと見て。無軌道に見えるけど、跳ねたらだいたいどの辺にくるか分かるでしょ。動きを予測して当ててみて」
「ん、む、…わ、分かった」

スライムと戦いながら、王子は頷く。
私はスライム考察に戻った。

例えば、保湿成分やビタミン系の栄養素のある草を与えて育てたスライムを、潰す。
その粘液は化粧品というか化粧水?化粧粘液?になったりするのかな?
でも飼っている内に情が移りそうだから、多分、潰したら泣く。
だったら、適当に潰したスライムに薬効成分を混ぜて……それ、スライムである意味ある?
ないかな?
ただ、粘液を作る手間が省けるだけという気もする。

「倒したぞ、ミア!」
「次」

いちいち勝利宣言してくる王子に、私は淡々と指令を出す。
さっきよりは早く倒せてるので、アドバイスはちゃんと役にたっているのかもしれない。

「くそっ……この、ちょこまかと……!」

言いながら戯れている姿を少し眺める。
平和だなぁ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...