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見た目は王子様なので
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スライム戦闘を横目に、私は薬草採取をする事にした。
暇だからね。
一応、王子も考えながら戦闘をし始めたみたいで、段々コツを掴んできてる、気がした。
ノーツに訓練をしてもらうにしても、ある程度は基礎がないと教え辛そうだし。
夜は私と同じく素振りの練習も追加かな。
でもあれか、部屋狭いのか。
庭か公園?
うーん。
それだったら部屋の中で出来る筋トレの方がいいかもしれない。
色々考えつつ、薬草を引っこ抜いていたら、夕方の鐘が鳴る。
「お疲れ様、アルク。じゃあ夕飯食べに行きましょうか」
「ん、ああ、分かった」
肩で息をしているが、何だか清々しい顔してる。
もっと不貞腐れると思ってたけど、意外。
「じゃあ、今日は私が綺麗にしてあげますね。清潔《クリーン》……はい、よく頑張りました」
「……あ、ああ……ありがとう」
魔法をかけるついでに頭を撫でて上げると、頬を赤くして照れている。
ノーツみたいで可愛い。
ノーツというか、子犬だけど。
「明日ギルドで清潔《クリーン》の魔法書と、能力開示《ステータス》の魔法書買ってあげるから、覚えましょうね。それである程度、自分の技能《スキル》や熟練度を把握できるので」
「ほう、それは心強いな。清潔《クリーン》も便利だが、何故貴族は使わないのだろうか?」
不思議そうに首を傾げる王子を見て、私も考える。
そりゃ、魔法は便利で有り難い。
かければ、すぐに効果も出る。
「それはですね、贅沢だからですよ。だって、そうでしょう?浴槽一杯に入ったお湯に浸かるのって気持良いじゃないですか。汚れも取れるけど、体中温まるし心地いい。洗髪剤や石鹸は良い匂いだってするし。魔法で短縮する意味、あります?」
「……そうか、贅沢か…」
「だって、普通に生活してたら、お湯か水を用意して、布で体拭くだけですよ。時間もかかるし汚れも取りにくい。それだったら魔法の方がいい、ってなるでしょ?貴族がもし魔法で全部済ませたら、使用人の仕事もなくなっちゃいますしね」
ギルドに薬草を納品しに行き、私の定宿まで歩きながら、色々な他愛ない話をする。
王子は感心したように頷いていた。
素直な所は良い所だ。
色々学べば、価値観も変わっていくだろう。
「夕食は慣れるまで、私の宿で食べましょう。ここです。黄金の野兎亭」
「ほう、私もここに移ろう」
「あ、駄目です。ここは女性専用の宿なので」
駄目です、と言った途端ショックな顔をしたが、女性専用と聞くと、納得したように王子は大きく頷いた。
「そうか。女性専用ならば安全か。うむ、分かった」
「すごい可愛い女将さんと娘さんがいるので紹介しますね。くれぐれも、偉そうにしないで」
「……う、分かった……」
そんなに偉そうか…?と首を捻る王子を連れて、宿に入る。
まだ夕方の鐘が鳴ったばかりなので、店はそんなに混んでいなかった。
「おかえりなさいミア姉」
「あら、おかえりなさいミアちゃん。またお客さんを連れてきてくれたの?」
リヤちゃんの声を聞いたリサさんが、奥の方から出てきて、王子を見て微笑んだ。
私は挨拶を返して頷く。
「はい。故郷の友人で、多分彼も暫くこの町に滞在するので、宜しくお願いします」
「アルクだ。…宜しく頼む…みます」
私の顔色を伺って、王子は丁寧な言葉に直した。
にっこりと微笑むと、王子もぱあっと笑顔になる。
子犬の躾は大事なのだ。
王子を席に着かせて、壁に貼ってあるメニューを指差して選ばせる。
「煮込み料理がお勧めのお店なので、そのセットでいいですか?」
「ああ、それでいい。ミアと同じ物を食べたい」
にこにこと邪気なく言う王子。
学園でも人気はあったのだろう。
馬鹿なところもあるけれど、割りと素直、割りと優しい。
何より顔は有能そうな王子である。
まあ、スライムと同格ですがね、今のところ。
お水を置きに来たリヤちゃんのほっぺが赤い。
あら?
もしかして、もしかしますか?
中々いないもんね、こういうタイプ。
この街には。
まだ鍛え始めたばかりで、線も細いし王子様然とした雰囲気。
育ったら育ったで、聖堂騎士団《テンプルナイツ》のアウリスみたいになりそう。
「あ、この子がさっきお話したリヤちゃん」
「よろしく」
一応、冷たくあしらわれたくないので、嫁云々という冗談はやめておく。
リヤちゃんは王子スマイルに、はわわ、となってぺこっと頭を下げて奥に逃げて行った。
おやぁ??
お父さん嫉妬しちゃいそう。
これは王子を殴らねばならんな??
「ちょっと。アルク。色目使わないで下さいよ?リヤちゃんは純真な子なんですからね?」
完全な八つ当たりの苦情に、王子はきょとんとしてから言い返した。
「……なっ!私はそういうつもりじゃ……私はミア一筋だ!」
声、デケェ……!
ハッとしてリヤちゃんを振り返ると、泣きそうな顔をして……などいなかった。
逆にニマニマしている。
あれ?さっきまでここにいた恋する少女は何処行ったの?
行方不明ですか??
女子ってそういうとこ、あるよねぇ。
まあ、早目に砕け散った方が傷も少ないのかもしれないけど。
「そういうのは、もう少し強くなるまで取っておいてくれますかね?」
「……それは、まあ……そうだな」
冷たく言えば、王子は耳を伏せた子犬のように俯いてしまった。
かわいそう。
私が原因か。
でも事実だからしゃーない。
そもそも実力が無ければ生きていけない世界で、愛だ恋だと叫びたいならそれ相応の力が必要だと思う。
貴族として必要だったのは、爵位と財産だったけれども。
その頂点からは、自ら転落したのだから。
「でも、今日はちゃんと頑張ったので、沢山食べてぐっすり寝てくださいね」
「……ああ、そうする……!」
笑顔を見せれば、ぱあっと笑顔になる王子。
変に拗ねたりしないところは、扱いやすくていいのかも。
暇だからね。
一応、王子も考えながら戦闘をし始めたみたいで、段々コツを掴んできてる、気がした。
ノーツに訓練をしてもらうにしても、ある程度は基礎がないと教え辛そうだし。
夜は私と同じく素振りの練習も追加かな。
でもあれか、部屋狭いのか。
庭か公園?
うーん。
それだったら部屋の中で出来る筋トレの方がいいかもしれない。
色々考えつつ、薬草を引っこ抜いていたら、夕方の鐘が鳴る。
「お疲れ様、アルク。じゃあ夕飯食べに行きましょうか」
「ん、ああ、分かった」
肩で息をしているが、何だか清々しい顔してる。
もっと不貞腐れると思ってたけど、意外。
「じゃあ、今日は私が綺麗にしてあげますね。清潔《クリーン》……はい、よく頑張りました」
「……あ、ああ……ありがとう」
魔法をかけるついでに頭を撫でて上げると、頬を赤くして照れている。
ノーツみたいで可愛い。
ノーツというか、子犬だけど。
「明日ギルドで清潔《クリーン》の魔法書と、能力開示《ステータス》の魔法書買ってあげるから、覚えましょうね。それである程度、自分の技能《スキル》や熟練度を把握できるので」
「ほう、それは心強いな。清潔《クリーン》も便利だが、何故貴族は使わないのだろうか?」
不思議そうに首を傾げる王子を見て、私も考える。
そりゃ、魔法は便利で有り難い。
かければ、すぐに効果も出る。
「それはですね、贅沢だからですよ。だって、そうでしょう?浴槽一杯に入ったお湯に浸かるのって気持良いじゃないですか。汚れも取れるけど、体中温まるし心地いい。洗髪剤や石鹸は良い匂いだってするし。魔法で短縮する意味、あります?」
「……そうか、贅沢か…」
「だって、普通に生活してたら、お湯か水を用意して、布で体拭くだけですよ。時間もかかるし汚れも取りにくい。それだったら魔法の方がいい、ってなるでしょ?貴族がもし魔法で全部済ませたら、使用人の仕事もなくなっちゃいますしね」
ギルドに薬草を納品しに行き、私の定宿まで歩きながら、色々な他愛ない話をする。
王子は感心したように頷いていた。
素直な所は良い所だ。
色々学べば、価値観も変わっていくだろう。
「夕食は慣れるまで、私の宿で食べましょう。ここです。黄金の野兎亭」
「ほう、私もここに移ろう」
「あ、駄目です。ここは女性専用の宿なので」
駄目です、と言った途端ショックな顔をしたが、女性専用と聞くと、納得したように王子は大きく頷いた。
「そうか。女性専用ならば安全か。うむ、分かった」
「すごい可愛い女将さんと娘さんがいるので紹介しますね。くれぐれも、偉そうにしないで」
「……う、分かった……」
そんなに偉そうか…?と首を捻る王子を連れて、宿に入る。
まだ夕方の鐘が鳴ったばかりなので、店はそんなに混んでいなかった。
「おかえりなさいミア姉」
「あら、おかえりなさいミアちゃん。またお客さんを連れてきてくれたの?」
リヤちゃんの声を聞いたリサさんが、奥の方から出てきて、王子を見て微笑んだ。
私は挨拶を返して頷く。
「はい。故郷の友人で、多分彼も暫くこの町に滞在するので、宜しくお願いします」
「アルクだ。…宜しく頼む…みます」
私の顔色を伺って、王子は丁寧な言葉に直した。
にっこりと微笑むと、王子もぱあっと笑顔になる。
子犬の躾は大事なのだ。
王子を席に着かせて、壁に貼ってあるメニューを指差して選ばせる。
「煮込み料理がお勧めのお店なので、そのセットでいいですか?」
「ああ、それでいい。ミアと同じ物を食べたい」
にこにこと邪気なく言う王子。
学園でも人気はあったのだろう。
馬鹿なところもあるけれど、割りと素直、割りと優しい。
何より顔は有能そうな王子である。
まあ、スライムと同格ですがね、今のところ。
お水を置きに来たリヤちゃんのほっぺが赤い。
あら?
もしかして、もしかしますか?
中々いないもんね、こういうタイプ。
この街には。
まだ鍛え始めたばかりで、線も細いし王子様然とした雰囲気。
育ったら育ったで、聖堂騎士団《テンプルナイツ》のアウリスみたいになりそう。
「あ、この子がさっきお話したリヤちゃん」
「よろしく」
一応、冷たくあしらわれたくないので、嫁云々という冗談はやめておく。
リヤちゃんは王子スマイルに、はわわ、となってぺこっと頭を下げて奥に逃げて行った。
おやぁ??
お父さん嫉妬しちゃいそう。
これは王子を殴らねばならんな??
「ちょっと。アルク。色目使わないで下さいよ?リヤちゃんは純真な子なんですからね?」
完全な八つ当たりの苦情に、王子はきょとんとしてから言い返した。
「……なっ!私はそういうつもりじゃ……私はミア一筋だ!」
声、デケェ……!
ハッとしてリヤちゃんを振り返ると、泣きそうな顔をして……などいなかった。
逆にニマニマしている。
あれ?さっきまでここにいた恋する少女は何処行ったの?
行方不明ですか??
女子ってそういうとこ、あるよねぇ。
まあ、早目に砕け散った方が傷も少ないのかもしれないけど。
「そういうのは、もう少し強くなるまで取っておいてくれますかね?」
「……それは、まあ……そうだな」
冷たく言えば、王子は耳を伏せた子犬のように俯いてしまった。
かわいそう。
私が原因か。
でも事実だからしゃーない。
そもそも実力が無ければ生きていけない世界で、愛だ恋だと叫びたいならそれ相応の力が必要だと思う。
貴族として必要だったのは、爵位と財産だったけれども。
その頂点からは、自ら転落したのだから。
「でも、今日はちゃんと頑張ったので、沢山食べてぐっすり寝てくださいね」
「……ああ、そうする……!」
笑顔を見せれば、ぱあっと笑顔になる王子。
変に拗ねたりしないところは、扱いやすくていいのかも。
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