悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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屋台料理のナンサンド

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「お嬢様、出来ました!」

呼ばれたマリアローゼは、くったりと炒められた玉ねぎを見て、大きく頷く。
ほんの少しだけ皿に移して飴色玉ねぎの味見をした。

これなら銀砂糖は必要ありませんわね!

十分な甘みを確認して、マリアローゼは少々の塩とスパイスを加えた。
仕上げに少し炒めてもらって終了。

次は煎り酒である。
酒を入れた鍋に、塩とレモーヌの絞り汁を少し入れて煮立たせて、半分になるまで煮る。
昆布もどきの海草を煮ただし汁と、小魚を煮出した汁を、それぞれ漉してもらってから、煎り酒に混ぜていく。
そして再度煮た後で、粗熱をとる為に放置して終了した。

「これはまた後でにしますが……ユグムは味見をなさって結構ですわよ」
「失礼致します」

うずうずとしているユグムを見て、マリアローゼは頷いた。

「これは、深みのある味ですな……」

感心したようにユグムが頷く。
マリアローゼはこくん、とうなずいて続けた。

「お魚と海草を使っているので、お魚料理にはとても合うと存じますわ。それから、昨日のお魚を料理するのにも使います。……あ、今日は購入するのを忘れてしまっていたわ」

ハッとして口に手を当てたマリアローゼを見て、ユグムはしっかりと頷いた。

「すぐに買い占めて参ります」
「は」

控えていた従僕の数人が返事と共に厨房から出て行った。
マリアローゼは醤油もどきの、煎り酒を作る事に夢中になっていて、鰻の蒲焼を作るという目的を忘れていたのである。
気を取り直して、マリアローゼは最後の仕事に取り掛かる。

「ユグム、お肉の用意は出来ておりますわね?」
「はい。肉は焼いて切り分けてあり、野菜も切って有ります」

頷いたマリアローゼは、足置き台に上って、ふんす!と力強く提案した。

「最後にナンを作ります」

もう言葉に拘るのが面倒くさくなったマリアローゼは、使われていた料理名で通す事にしたのである。

「小麦粉にヨーグルトとオリーブオイルと塩を入れて、混ぜてから焼きますの。昨日皆さんと食べたカレーにも良く合いますのよ」

おお、と屋敷と城の調理人から感嘆の声が漏れて、町から来たギルドと料理人達は首を傾げた。
ソーレは興味津々である。

「そ、そのカレーという物は、教えて頂けるのでしょうか?」
「ええ、勿論ですわ。スパイスとお肉、お野菜の種類で味も大分変わりますので、後でユグムに教わって下さいませ。ただし、今の所は料理ギルドと専任料理人、商会の料理人のみの秘匿としてくださいませね?」

ぱああ、と喜びに頬を染めた中年男は、嬉しそうに何度も頷いた。
ユグムも、ソーレを見て頷きながら言う。

「昨日使用人達の賄いに作った残りで良ければ、味見が出来ますよ」
「おお、それは有り難い!」

どうやら主人の晩餐だけでなく、階下の晩餐でもカレーが作られたらしい。
マリアローゼは嬉しそうににっこりと笑った。
そして、それを見たユリアも、幸せそうに笑った。

「見て下さいカンナさん、マリアローゼ様今日もマジ天使」
「ええ、分かってますけど、ユリアさん、そんなに力籠めたら生地が死にますよ」
「いっけなーい!」

てへぺろ、とムカつく顔をするユリアに苦笑しつつ、ユリアもカンナも生地を焼きに調理台へと向かった。

そして、丸く焼きあがったナンを持った人々が列になり、野菜と肉を挟んで、玉ねぎソースとレモネーズをかけた物を作り上げた。
マリアローゼや、侍従と侍女にも勿論配られて、皆が試食の瞬間を待ちわびる。

「さあ、頂きましょう」

はむ、とマリアローゼはナンに齧り付いた。
温かく柔らかい生地に、肉と野菜にかけられた玉ねぎソースの甘みとレモネーズの酸味と爽やかさが合体して、
とにかく美味しい。

(ああ、これ、昨日のケチャップとマヨネーズを混ぜて、オーロラソース風にしても美味しいですわ・・・)

噛み締めながら、マリアローゼは考えていた。
皆、一心不乱にガツガツと食べている。

いつの間に忍び込んだのか、双子の兄達もモグモグガツガツと食べている。

誰より早く食べ終わった、早食いに定評のあるユリアが、新たなナンを焼き始めていた。
それを見た調理人も我も我もと後に続く。
だが、マリアローゼは1つでお腹一杯になり、すっかり満足していた。

「どうでしょう?美味しくて?ルーナ、ノクス」

振り返って問いかけると、ルーナとノクスはこくこくと頷いた。

「とても、美味しゅうございます」
「美味しいです、お嬢様」

ルーナとノクスが、笑顔を見せてくれた事で、マリアローゼも嬉しそうに微笑んだ。
食べ終わって、次のナンが焼けるのを待っている双子の兄が、マリアローゼに両側から抱きつく。

「最高だよローゼ。昨日のカレーも美味かったけど」
「本当に最高だ、ローゼ、凄く美味しかったよ」

大好き大好きとぐりぐり頭を押しつける双子に、マリアローゼは擽ったそうに身を捩って笑った。
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