悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ぬいぐるみとペルン鳥

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町の料理人達と、城と屋敷の料理人達で意見交換をしている間、お腹一杯になってしまったマリアローゼは自室でいつもの
お昼寝をする事になって、部屋へと引き上げた。
煎り酒を作り足す事を依頼して、お風呂でさっぱりしてから柔らかい寝着に着替えてベッドに潜り込む。
マリアローゼは枕元を手で探って、マリーの置物を胸元に抱いてもこもこの部分を指で撫でた。

(これはこれで良いのですけれど硬い…ですわね。
柔らかくて、抱っこできる…縫いぐるみ…!)

まどろみかけていた意識が一気に覚醒して、マリアローゼはバッと起き上がった。

「どうされました?!」

慌てたように駆け寄ってきたルーナに、マリアローゼは安心するようにと笑顔を向ける。

「思いついた事がありますの。紙とペンを持ってきて、メイヤールに手紙を書きます」

この世界にも人形はある。
エルノーで露店を巡った時に、置物や人形は置いてあった。
人形芝居で使われるような、手足が木の物や、中に藁が詰まっていそうながさがさした物である。
高級店に行けば、前世の着せ替え人形のようなビスクドール、陶器製や粘土を使った人形も有るが、可愛いかと問われると賛否の分かれるところだろう。
マリアローゼはあまり関心を示さなかったが、公爵邸の私室にも置いてあったし、他の部屋には大きめのドールハウスも幾つか置いてあった。

でも今欲しいのは、周りが布で中身が綿のふわふわの縫いぐるみである。

メイヤールに、下手ながらも絵を描いて、熊の縫いぐるみの説明を付け加える。
兎や猫もいいのだが、まずは熊である。
最初は手足など動かなくて良い、単純に縫われたもので、子供が手元に置いて抱きしめて眠りやすい大きさ。
本場のテディベアはみっしりとしているが、綿はそこまで詰め込まなくても柔らかければいい。
庶民用には中身を籾殻にすればより安価に作れるだろう。
蕎麦があるかはまだ分からないが、存在するなら蕎麦殻でも良い。

等々つらつらと書き連ねて、手紙に封をして文房具と一緒に銀盆に載せる。

「直ぐにお届けするよう伝えて参ります」
「お願いね、ルーナ」

マリアローゼは思いついたことを全てしたためて、スッキリした顔で布団に再度潜って寝息を立て始めた。


数時間後、真新しい服に着替えて、白い布帽子を被ったマリアローゼはまた厨房にいた。
調理人達はすっかりツヤツヤテカテカしている。
どうやらマリアローゼの休憩中に、料理研究や意見交換が進んだらしい。
特に商会の料理人ダレンは大きな尻尾をブンブン振って、キラキラした目を向けてくる。
ボール?ボール投げるの?と期待している大型犬のようである。
ソーレもパンパンに張った頬とおでこを赤く染めて、乙女のように興奮している。

「それでは買って来て頂いたお魚を捌いて下さいませ」

マリアローゼの号令に、調理人達が動き出す。

「ユグム、中位の壺はあるかしら?調味料を入れたいのですけれど」

マリアローゼは自分の手で大体の大きさを示すと、ユグムが頷いて、近くにいた従僕が丁度いい感じの壺を運んできた。
作った調味料に銀砂糖をたっぷり、蜂蜜を少し加えて、壺の中に注ぎ入れる。

「捌き終わりましたら、焼いてくださいませ。焼き終わりましたら、この壺に浸して、3回ほど付けて焼いてを繰り返します。
あまり焦げないように気を付けて下さいませ」

ユリアの厳しい監督で用意された炭火の近くに、従僕がタレの入った壺を持っていく。
ふんふん、と頷いているマリアローゼに、ユグムがある小皿を差し出した。

「お嬢様、こちらをお試し下さいませ」
「まあ、何かしら?」

見た目は昨日作ったマヨネーズである。
添えられた小匙で掬って食べると、まろやかさと濃厚さが格段に上がっている。

(美味しいですわ!)

「昨日、わたくしが作ったものより、断然美味しいですわ!改良なさったのですか?」

喜色満面で聞かれたユグムは、少しだけ困ったような居心地の悪そうな顔をした。
料理の女神の作った料理に手を加えるなど冒涜なのである。

「いえ、そうではなく、材料を良い物に変えたのです。この地域で主に飼育されているペルン鳥という鳥が御座いまして。肉質は通常の鶏に劣りますが、その分卵は質の良い物を産みます故、昨日は試作と言うことで普通の卵を使用してしまいました」

「まあ、そんな事、気になさらないで。ペルン鳥は素晴らしい卵を産むのですね。ここまで味が変わるなんて驚きましたわ」

まだ幼い少女…幼女に気を使われて、ユグムは照れ臭そうに頷いた。

「使用人棟用の畑にもペルン鳥の鶏舎が御座いますし、屋敷の方でも飼育しております」
「是非見てみたいわ。時間が出来ましたらラディとシスネに案内して頂きますね」

後半は振り返って二人に笑顔を向けると、ラディアータとシスネが揃って頭を下げた。

「畏まりました」
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