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母との再会

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天幕の外にはクリストハルトが立っていたので、リリーアリアは見上げて質問した。

「双子ちゃん達はどちらかしら?」

スッと腕を上げて、クリストハルトは指を指したが、すぐその腕を下ろした。

「いや、案内した方が早ぇな」

まだ怒っているのかしら?

「クリス、もう機嫌を直して頂戴」

呼びかけるリリーアリアに、クリストハルトはピタリと足を止めて振り返った。
じっと青い目を向けてくる。

「わたくしのやりたい事が終ったら、連れて逃げるなり何なりしても宜しいわ」
「そうか。じゃあ、そうするわ」

ニッと笑われて、リリーアリアは大きく溜息を吐いた。
傍らのマルグレーテもくすりと微笑む。

「ご英断かと存じます」
「もう、何て頑固な人達なのかしら…」

珍しく唇を尖らせた幼い表情に、再びマルグレーテはくすりと笑った。

案内するクリストハルトは、時々兵士や騎士に声をかけられて、頷いたり片手を上げたりしている。
割と人気があるようだ。
暫く歩くと、天幕の近くに双子とアデリナがいるのが見えてきて、リリーアリアに気づいた双子はぶんぶん手を振った。

「お待たせしたわね。わたくしの家族の天幕があるので、そちらにいらしてくださる?
戦の前にはぐれてはいけないので、お願い致しますわ」

「はい、参ります」
「はい、一緒にいます」

メルティアとミルティアの後ろで、革鎧に身を包んだアデリナもお辞儀をする。

リリーアリア一行が、家族の為に用意された天幕に戻ると、そこには光を集めたように眩い金の髪と、
美しい白い布で織られた衣と、白銀の鎧を身につけた女性が待っていた。

「アリア、わたくしの愛しい娘」

両手を広げる女性の腕の中に、リリーアリアは小走りに駆け寄り、抱きついた。

「お母様」

「ふふ、戦場まで来てしまうなんて、本当に、陛下によく似た娘ですこと」

ゆったりと微笑むような穏やかなアンナマリーの声音に、リリーアリアはくふふ、と擽ったそうに笑った。

「あら、お父様は、お母様に似ていると仰せになられましたのよ」
「それは、ふふ、嬉しいお話ですわね」

母の腕に甘えていたリリーアリアが、ふう、と一息吐いて身体を離した。
そして、ゆっくりと、礼儀正しくお辞儀を見せる。

「お母様、わたくしの大事な友人達を紹介いたします。インテグラ公爵家、マルグレーテ、わたくしの友にして
侍女を務めています」

紹介されたマルグレーテは、膝を屈して丁寧なお辞儀をする。

「こちらの二人は、わたくしとこの国の宝、リーンデル辺境伯爵家、メルティア、ミルティア」

緊張の面持ちの双子も、名を呼ばれた方がお辞儀をしてみせる。
最後にアデリナが、きびきびとしたお辞儀をして、頭を下げた。

「皆さん、わたくしの娘に付き添って、よくこの戦場まで足を運んで下さいました。どうか、今後ともリリーアリアを
宜しくお願い致しますわね」

「勿体無いお言葉で御座います」

この中では一番身分の高い、マルグレーテがそう言って、皆が漸く伏せていた顔を上げた。
その返答ににっこりと微笑んだアンナマリーは、視線をアデリナに移す。

「お久しぶりね、アデリナ」
「お久しゅうございます、アンナマリー王妃殿下」

ニコッと女性にしては野生的な微笑を口に上せるアデリナを見て、アンナマリーはふふっと笑った。
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