38 / 43
母との再会
しおりを挟む
天幕の外にはクリストハルトが立っていたので、リリーアリアは見上げて質問した。
「双子ちゃん達はどちらかしら?」
スッと腕を上げて、クリストハルトは指を指したが、すぐその腕を下ろした。
「いや、案内した方が早ぇな」
まだ怒っているのかしら?
「クリス、もう機嫌を直して頂戴」
呼びかけるリリーアリアに、クリストハルトはピタリと足を止めて振り返った。
じっと青い目を向けてくる。
「わたくしのやりたい事が終ったら、連れて逃げるなり何なりしても宜しいわ」
「そうか。じゃあ、そうするわ」
ニッと笑われて、リリーアリアは大きく溜息を吐いた。
傍らのマルグレーテもくすりと微笑む。
「ご英断かと存じます」
「もう、何て頑固な人達なのかしら…」
珍しく唇を尖らせた幼い表情に、再びマルグレーテはくすりと笑った。
案内するクリストハルトは、時々兵士や騎士に声をかけられて、頷いたり片手を上げたりしている。
割と人気があるようだ。
暫く歩くと、天幕の近くに双子とアデリナがいるのが見えてきて、リリーアリアに気づいた双子はぶんぶん手を振った。
「お待たせしたわね。わたくしの家族の天幕があるので、そちらにいらしてくださる?
戦の前にはぐれてはいけないので、お願い致しますわ」
「はい、参ります」
「はい、一緒にいます」
メルティアとミルティアの後ろで、革鎧に身を包んだアデリナもお辞儀をする。
リリーアリア一行が、家族の為に用意された天幕に戻ると、そこには光を集めたように眩い金の髪と、
美しい白い布で織られた衣と、白銀の鎧を身につけた女性が待っていた。
「アリア、わたくしの愛しい娘」
両手を広げる女性の腕の中に、リリーアリアは小走りに駆け寄り、抱きついた。
「お母様」
「ふふ、戦場まで来てしまうなんて、本当に、陛下によく似た娘ですこと」
ゆったりと微笑むような穏やかなアンナマリーの声音に、リリーアリアはくふふ、と擽ったそうに笑った。
「あら、お父様は、お母様に似ていると仰せになられましたのよ」
「それは、ふふ、嬉しいお話ですわね」
母の腕に甘えていたリリーアリアが、ふう、と一息吐いて身体を離した。
そして、ゆっくりと、礼儀正しくお辞儀を見せる。
「お母様、わたくしの大事な友人達を紹介いたします。インテグラ公爵家、マルグレーテ、わたくしの友にして
侍女を務めています」
紹介されたマルグレーテは、膝を屈して丁寧なお辞儀をする。
「こちらの二人は、わたくしとこの国の宝、リーンデル辺境伯爵家、メルティア、ミルティア」
緊張の面持ちの双子も、名を呼ばれた方がお辞儀をしてみせる。
最後にアデリナが、きびきびとしたお辞儀をして、頭を下げた。
「皆さん、わたくしの娘に付き添って、よくこの戦場まで足を運んで下さいました。どうか、今後ともリリーアリアを
宜しくお願い致しますわね」
「勿体無いお言葉で御座います」
この中では一番身分の高い、マルグレーテがそう言って、皆が漸く伏せていた顔を上げた。
その返答ににっこりと微笑んだアンナマリーは、視線をアデリナに移す。
「お久しぶりね、アデリナ」
「お久しゅうございます、アンナマリー王妃殿下」
ニコッと女性にしては野生的な微笑を口に上せるアデリナを見て、アンナマリーはふふっと笑った。
「双子ちゃん達はどちらかしら?」
スッと腕を上げて、クリストハルトは指を指したが、すぐその腕を下ろした。
「いや、案内した方が早ぇな」
まだ怒っているのかしら?
「クリス、もう機嫌を直して頂戴」
呼びかけるリリーアリアに、クリストハルトはピタリと足を止めて振り返った。
じっと青い目を向けてくる。
「わたくしのやりたい事が終ったら、連れて逃げるなり何なりしても宜しいわ」
「そうか。じゃあ、そうするわ」
ニッと笑われて、リリーアリアは大きく溜息を吐いた。
傍らのマルグレーテもくすりと微笑む。
「ご英断かと存じます」
「もう、何て頑固な人達なのかしら…」
珍しく唇を尖らせた幼い表情に、再びマルグレーテはくすりと笑った。
案内するクリストハルトは、時々兵士や騎士に声をかけられて、頷いたり片手を上げたりしている。
割と人気があるようだ。
暫く歩くと、天幕の近くに双子とアデリナがいるのが見えてきて、リリーアリアに気づいた双子はぶんぶん手を振った。
「お待たせしたわね。わたくしの家族の天幕があるので、そちらにいらしてくださる?
戦の前にはぐれてはいけないので、お願い致しますわ」
「はい、参ります」
「はい、一緒にいます」
メルティアとミルティアの後ろで、革鎧に身を包んだアデリナもお辞儀をする。
リリーアリア一行が、家族の為に用意された天幕に戻ると、そこには光を集めたように眩い金の髪と、
美しい白い布で織られた衣と、白銀の鎧を身につけた女性が待っていた。
「アリア、わたくしの愛しい娘」
両手を広げる女性の腕の中に、リリーアリアは小走りに駆け寄り、抱きついた。
「お母様」
「ふふ、戦場まで来てしまうなんて、本当に、陛下によく似た娘ですこと」
ゆったりと微笑むような穏やかなアンナマリーの声音に、リリーアリアはくふふ、と擽ったそうに笑った。
「あら、お父様は、お母様に似ていると仰せになられましたのよ」
「それは、ふふ、嬉しいお話ですわね」
母の腕に甘えていたリリーアリアが、ふう、と一息吐いて身体を離した。
そして、ゆっくりと、礼儀正しくお辞儀を見せる。
「お母様、わたくしの大事な友人達を紹介いたします。インテグラ公爵家、マルグレーテ、わたくしの友にして
侍女を務めています」
紹介されたマルグレーテは、膝を屈して丁寧なお辞儀をする。
「こちらの二人は、わたくしとこの国の宝、リーンデル辺境伯爵家、メルティア、ミルティア」
緊張の面持ちの双子も、名を呼ばれた方がお辞儀をしてみせる。
最後にアデリナが、きびきびとしたお辞儀をして、頭を下げた。
「皆さん、わたくしの娘に付き添って、よくこの戦場まで足を運んで下さいました。どうか、今後ともリリーアリアを
宜しくお願い致しますわね」
「勿体無いお言葉で御座います」
この中では一番身分の高い、マルグレーテがそう言って、皆が漸く伏せていた顔を上げた。
その返答ににっこりと微笑んだアンナマリーは、視線をアデリナに移す。
「お久しぶりね、アデリナ」
「お久しゅうございます、アンナマリー王妃殿下」
ニコッと女性にしては野生的な微笑を口に上せるアデリナを見て、アンナマリーはふふっと笑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
673
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる