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第91話

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 車に乗って着いたショッピングセンターで、凪さんの隣を歩きながら服を見て回る。


「あ、真樹、あれ似合いそう。」
「どれ?」
「ちょっと来て」


 手を引かれてお店に入る。
 凪さんが手に取ったのは白の少し大きめのTシャツに黒のベストが重ねられている服だ。


「最近こういうの着てる人多いよね。」
「そうですね。へぇ、大きいサイズで着るんだ。可愛い」
「買う?」
「んー……似合うかな。着てみてもいい?」
「もちろん」


 店員さんに声を掛けてから試着室に入る。
 自分では滅多に選ばないデザインだ。
 服を着るとワクワクして、少し雰囲気が変わったように見える。


「凪さん、どう?」
「……可愛い」
「似合ってます?」
「似合ってる。買おう」
「買います!」


 試着室に戻り、着替えて凪さんの元に戻る。


「買ってきます!」
「え、待って待って、まだ見るから。」
「凪さんの?」
「真樹の」
「……俺そんなにお金持ってないんで、今日はこれだけで良いです。」


 俺のを考えて見てくれるのは有難い。
 けれどお金は計画的に使いたい。
 苦笑を零し彼を見ると、キョトンとした顔を返された。


「それも、全部真樹にプレゼントするつもりなんだけど。」
「え……いや、それは大丈夫です。」
「もう決めちゃった」
「……決めちゃったの……?」
「うん。だからまだ見せて」
「……わかりました」


 多分これはアルファの独占欲だなと思う。
 自分の選んだ物をオメガに身につけて欲しいというもの。
 俺は感じたことがないけれど。

 渡された服を鏡の前で体に当ててみたり、試着したりして結局五着の服を買うことになった。


「ありがとうございます」
「ううん。したくてしただけだから。それ着て仕事……は無理だね。秘書じゃなかったら着れるけど……」
「凪さんとお出かけする時に着ます!」
「そうだね。嬉しい。ありがとう」


 お会計をして貰った紙袋を肩にかけようとする前に、凪さんに取られてしまう。


「あっ凪さん!」
「後は何買おうかなぁ」


 先に少し歩いて行った凪さんを追いかけて隣に並ぶ。


「俺が持つのに」
「いいのいいの。何か気になるのがあったら言ってね」


 凪さんは完全に俺を甘やかし過ぎだ。
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