少年人魚の海の空

藍栖 萌菜香

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80-少年人魚の愛されるということ※

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 キングに押し倒されてからは、なにがなんだかわからなくなった。

 どこを触られても、舐められても、齧られても……なにをされても気持ちがよくて、熱くなって、力が抜けて……そのままふわふわと浮き上がってしまうかと思った。
 なのに、びりびりして、ビクビクして、息があがって……跳ねては墜落していくような感覚もあって……。

 自分の身体になにが起こっているのか……ただただ惑乱してた。


 一番たくさん触られたのはお尻だ。

 どこからかキングが取り出してきた液体を、シーツに滴るほど塗りつけられて、そこら一帯がぬるぬるになった。
 それを塗り広げるみたいに、あっちもこっちもぬるぬると撫でられて……僕はその液といっしょに、とろとろになった。


 キングが指を入れてきたときに、そこで交尾するんだと気がついた。

 そうか。僕が入れるんじゃなくて、キングが僕に入れるのか。
 キングの指に翻弄されながら、僕はそんなことを口走ったみたいで……。

「……俺の中に、入れたかったのか?」

 驚き顔で僕の顔を覗き込んできたキングには、最初からキングが僕の体内に入る選択肢しかなかったらしい。


 僕の中にキングが……。

 その想像は初めてしたけど、考えただけでなんだかぞくぞくした。


「ううん、キングが……僕の中に、精子をかけて」

 思ったままを口にしたら、キングが喉の奥で「ぐっ」って変な音を立てた。
 途端にに中を探る指にそこをかき混ぜるようにされて……それ以上はなにもしゃべれなくなった。


 何度も中を擦られて、何度も出しそうになって、そのたびにキングに阻止されて……。

 もう、本当に堪らなかった。

 『お願い、早く』って何回も身体を揺すって頼んだのに、キングは『もう少し』って、掠れた声で言うばかりで……。

 『ベリルがほんの少しでも痛いのは、俺が嫌だ』って言われたら、我慢する他なかったけど……いっそ痛くしてくれた方が楽だった気がする。


 僕が泣き出す寸前になって、やっとキングの指が抜き去られた。

 でももう、お尻のそこは腫れぼったくてドロドロのうずうずだし、精子の出るこれも真っ赤に腫れあがって痛いほどで……。

 交尾なんて、もうどうでもいいから、この状態をどうにかしてほしかった。


「息を吐いて……」

 仰向けにされた僕の上に覆いかぶさるようにしてきたキングが、低く掠れた声で指示を出す。
 息を吐けと言われても、すっかりあがってしまっている息を整えるのだって難しいのに。

 交尾の準備がこんなに大変だと知ってたら、したいだなんて言わなかったのにと拗ねたくなった。


 それでも、言われた通りに息を吐く。
 ここまで頑張ったんだから、交尾しないでままで終わりたくない。

 たとえ赤ちゃんはできなくても、その真似事だっていいから、キングと交尾がしたかった。


 落ち着いてきた呼吸に、閉じたままだった目を開いて見あげると、そこにはあの海の空があった。

 でも、いつもの海の空じゃない。鋭くて、射抜かれそうで、少し暗い……そんな海の空だった。


 ああ、もう逃げられないんだ。

 なぜだかそう思った。
 そのすぐあとに、逃げたいだなんてひとつも思ってない自分に気がついて、少しだけ楽しい気分になった。

 泣きそうなほどこんなにされても、この人のそばを離れたいだなんてちっとも思わない。


 だるくて力の入らない腕をそっと伸ばして、キングの首を抱き寄せる。キングの耳元で、はあって、泣きたい気持ちだけを吐き出した。

 うずうずしていたお尻に、たぶんキングのだろう……熱くて硬いものが押し当てられた。
 キングの指でさんざん解されたその場所を割り拓きながら、それが奥へとゆっくり沈んでいく。


「あ、あ、あ」

 痛みはない。あんなに大きなものが……指なんかよりずっとずっと太くて大きいのに、全然痛くないのが不思議だった。

 ただ、中をずるずると擦られていく感覚が。

「あ、ああっ」

 勝手に声を出させてしまう。

「あ、……あう」

 奥の方は少しきつい。押し広げられるその感じが、また勝手に声を押し出していく。


「あ、あ、なに……ああ……」

 キングの動きがとまってホッとしたのに、今度はなにが動いてるのか、内側がざわざわと忙しない。

 キングを包んでいるその場所から、ふわふわとした感覚が湧きあがる。そこにジリッと……鋭いのか鈍いのか、よくわからない刺激がときおり混ざる。

 腰も、立ててる膝も、その刺激を受けてひとりでに震える。合わせて声も飛び出してくる。


「あっ……んっ、ぅあっ……」

 変に裏返ったその声が、甘えてるみたいで恥ずかしい。
 力の入らない腰や膝はどうしようもなくても、声くらい抑えたいのに……やっぱり自分ではどうすることもできなかった。

「キ、キング……あっ……キングっ」
「ああ、ベリル……」

 口を、塞いでほしい。
 口をいっぱいに塞いで、早くこの変な声を吸い取って。

 抱きついていた腕を緩めて、頬伝いに自分からキングの唇を探しにいく。


 僕の求めているものがわかったのか、キングがキスをしてくれた。少し血の味がする。僕が齧ったせいだ。

 痛かっただろうなと思い返しながらキングの舌を舌先で探った。途端に、キングが僕の舌先を吸いあげて、彼の口の中へと納めてしまった。

 キングの口の中はあたたかくて、しっとりしていて……人の中っていうのはこんな感じなのかなって、キングを包んでいる僕のそこを想像した。


「ん、ふぅんん」

 舌を吸われて、齧られて、こそがれて……。変な声を消したかったのに、舌への刺激を受けるたびに口が勝手に開いて、隙間から声を漏らしていく。

「ふぁんっ」

 キングの口の中で、舌の裏をぞろりと舐められて、ひときわ高い声をあげてしまった。
 口を塞がれているせいか、これもまた鼻にかかった変な声で……恥ずかい……。

 そのとき、それまで僕の中でジッとしていたキングが、大きく動き始めた。
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