(完) ミリエネッタお嬢様の周りは変な人ばかり

「3」 ムスタカス家の子息

(7) 餌をあげます

今日も午後から仕事に励むミリエネッタ令嬢。召使いが客が来たと知らせに入ってくる。


「アレッサンドロクスドニベーチェ王太子殿下の使いが参っております。どうしても、お嬢様に直接にお伝えしたい事があると。」


直接といっても、大した話ではないでしょう。王太子の愚痴でしょう。冷たいとか召使いに言わせるのでしょう。何時ものことです、仕方ない。さっさと済ませて帰そう。

客間に柄の悪そうなオヤジ風召使いが待っていた。ミリエネッタ令嬢が部屋へ入って来ると立ち上がり頭を下げる。


バコッーン、ミシミシッ、ガリガリ！


この音は、今日のお嬢様のドレスの飾りがドアに引っかかってしまった音でございます。

今の都の流行りとか薦められて他のドレスと買い求めましたが売れ残りの可能性が強い。動くと何かが壊れます。大人の頭ほどの大きさの馬や羊さんのアクセサリーは、壊し屋さん。


「こ、これは、ミリエネッタお嬢様。お目にかかれて光栄でございます。さあ、私からの贈り物をお受けくださいませ。これを身に付けると魔力封じの上に息も止まるアイテムでございます。それっ！」


少しばかりの動揺の後に隠し持っていた袋から粉をミリエネッタ令嬢に浴びせるのだ。嫌な匂いの粉は危険な物に違いない。

ミリエネッタ令嬢は、素早くドレスの裾を持ち上げると自分を包み込む。素晴らしい防御だ。


「くそっ、卑怯だぞ。そんな武器を使うとは！」

刺客は、計画が無駄になったので腹を立てる。そこへ、壊れたドアからプッカプッカと金魚さんの登場。マルグリットが追いかけて来て叫んだ。


「大変ですー。金魚が金色の可愛いドラゴンを食べてしまいました！」


なんと、金魚が食べた？ならば、こいつも食べてもらいましょう。