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81.別れの夜**

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ロワさん視点のお話です。

カッコいいロワさんはお留守どころか、変態が出ます。ご注意を。






 大広間の騒ぎが、この内殿にもさざ波のように聞こえてくる。私は私室に戻ると、レンを寝台に腰掛けさせて彼女の小さな靴を脱がせるべくひざまづいた。

 白魚のように細っそりとして滑らかな足から靴を脱がせると、手のひらで包み込む。か弱い妻は少し冷えてしまったようだ。

「もうお怒りになっていませんか?」

 そっと聞こえた可憐な声に、レンの顔を覗き込む。

「明日から離れ離れになってしまうのに、ロワさんが怒ったままだと悲しいです」

 黒輝石のような瞳を濡らす彼女に、思わず胸が握りつぶされた。

「私は怒ってなどいない。ラスの戯れに少し苛立っただけだ。まぁ、私が制裁せずとも、今頃破れた恋を酒に浸らせているだろうが」

「破れた? はぁ、そういうものですか」

 レンは、よく分からないという表情で首を傾げた。彼女は、人の心の機微に鋭いようでいて、鈍感でもある。観衆の面前でラスを手痛く振ったことなど気づいていないのだろう。

 そのようなところも愛くるしいのだが、私が側を離れている間、彼女の身に危険が迫らないか心配だ。義母やユズルバをはじめとした使用人達には、レンに不埒な目的で近付く男がいようものなら、拿捕して地下牢に繋げとよくよく言い含めてある。

 魅力的な妻を持つ夫の気持ちが今なら良くわかる。今でさえ、少しでも側を離れることが不安なのだ。何ヶ月も離れていることなど可能なのだろうか。

 いや、可能なわけはない

 できることなら、戦など投げ打ってレンの側にいたい。レンのこれまでの活動を見聞きした上で、出産の素晴らしさだけでなく、危険さも重々承知しているつもりだ。なんとしても命をかけて子を産むレンの側に戻らなくてはならない。例え私にできることは無くとも、側にいなければならないのだ。

 次々と浮かび来る嫌な想像を首を振って打ち消すと、レンの両足を温める作業に戻る。それにしても、レンの足は小さくて可愛い。昨夜のように舌で舐れば、また美しい鳴き声を聞くことができるだろうか。途端に不埒な反応を見せる愚息を宥めながら、レンに懇願した。

「さぁ、ラスのことなどどうでもいい。この私に、お前の身につけているものを授けてはくれぬか」

 戦に向かう戦士は、恋人や妻から身に着けている物を預かって行く習慣がある。例え死地に赴くことになっても、愛する者が側にいると感じられることで、我々戦士は死ぬまで戦い続けることができる。当然私も、レンから彼女の気配が濃厚に感じられる物を貰い受ける気でいた。

「このリボンでいいですか?」

 しかし、彼女が差し出したのは、水色の可憐な髪紐だった。

「……」

 できればもっと肌身離さず身につけていた物が欲しい……

 さらに言えば、レンの匂いがたっぷり染み込んだ物がいい。室内履きでも夜着でも構わない。寂寞とした戦場で彼女の存在を感じていたいのだ。そして、どうしてもレンを求めて身体が疼く時は、その香りを嗅いで愚息を慰めたい。

 つまるところ、そこなのだ。愛しい女性の香りこそ男が求めている物だと断言できる。

 ……少なくとも私はそうだ。

 履物をくれなどとはっきりと言ってしまえば、彼女は驚くだろうか。そんなものを欲しがる私を軽蔑し、罵倒するかもしれない。

 しかし、これから数ヶ月離れ離れになるのだ。言葉は悪いが、髪紐などでは(愚息が)我慢が出来ない。

 いや、せっかくレンがくれると言うのだからもちろんこのヒラヒラした髪紐は頂いて行く。

 そうだ!

 レンにわからぬよう、そっと(無断で)譲り受けていこう。

 その案は、これ以上ない良い考えに思えて、ひとしきりほぅっと息を吐いた。

「さて、では心ゆくまで妻の身体を堪能させてもらうとしよう」

「それって、心の声ですか……? 漏れてますよ――」

 どこから聞いていたのかは分からないが、小動物のように恐々と私を見上げるレンのなんと愛らしいことか!

 私は我慢が出来ず、そのズグリモズの実のような唇にかぶりついた。苦しくないよう浅く舌を抜き差ししながら、温かな口内を舐め回す。レンは「んく、」と懸命に唾液を嚥下しているが、飲みきれないのか口角から雫がこぼれていく。その雫すら勿体無い気がしてべろりと舐めとれば、レンの瞳が期待に潤んだ。

「ロワさん、私、まだ入浴してなくて……」

 レンは胸の前で細っそりとした腕を交差させて、恥ずかしそうにそう言った。

 なに! 入浴していないだと!

「はぁ、はぁ、はぁ、それは素晴らしい。私は常々不思議に思っていたのだ、これから愛し合うというのになぜ匂いを消したがるのか。お前がそのような習慣であると半ば諦めていたのだが、今日は入浴していないだと! 感謝する!」

 そう言うと、遠慮なく彼女の首筋で深く息を吸い込んだ。

 レンは入浴していない。レンは汗をかいている。レンの匂いを思う存分嗅ぐことができる!

「おおお、たまらぬ……」

「ひいぃ」

 小さくレンの叫び声が聞こえた気がしたが、構わず全身の匂いを魂に刻む作業に没頭することにした。



「ううう」

 はたと気がつけば、どうにか下着で秘部を隠しているレンが涙目で私を見ていた。彼女の瞳には快感と困惑が浮かんでいる。結局私は、秘部以外の全身を舐め回していたようだ。彼女の全身は私の唾液でぬらぬら濡れている。これ以上匂いを堪能しようにも、私の匂いに上書きされてしまっているため残念だが断念しなくてはならない。

 本当は、胸の尖や秘部を味わい尽くしたいのだが、懐妊している現在、愚息の挿入や、胸と蜜壺を舐め回すことは禁止されている。

 禁止されるほど名残惜しく、ついつい秘部にうらめしそうに視線を這わしてしまう。

 ぬっ、

 なんと言うことだ! よくよく見れば、下着の中央が色が変わり、塗れぼそっているではないか。

 あまりの興奮に、飛び込むようにレンの股間に顔を埋めて、深く息を吸い上げる。甘い乳香の匂いに紛れて、レンの芳しい淫靡な香りが漂うと、私の愚息がいきり勃つのを感じた。

「たまら――」

「ストップ!」

 突然レンが叫んだ。言葉の意味は分からないが、なんとなく制止の言葉に聞こえて、股間から顔をあげた。

「もう、ロワさん、なんでそんな変なことばっかりするんですか……少し怖いです」

「変とは?」

「その……全身を舐めたり、匂いを嗅いだり……」

 真っ赤になったレンは耳殻まで朱色に染めて俯いてしまった。きっと私が欲望のまま貪ってしまったことがいけないのだろう。愛しい妻を絶頂させずして何が欲望か。己の欲望など彼女の前では二の次にしなければ。

「すまなかった。つい、愛しきお前の身体に夢中になってしまった。これより、全力をもってお前を蕩かすことを誓う」

 挿入は禁止されているが、花芯を指でやわやわと擦ったり、蜜壺にそっと指先を滑り込ませることは許されている。彼女の瞳を覗き込みながら、固く誓うと「そういうんじゃないのに」と極小さな声が聞こえた。

「安心しろ、お前を傷つけたりはしない。みろ」

 そう言いながらレンの目の前に両手をかざす。レンに触れるようになってから、私は手の手入れを欠かさず行ってきた。これもひとえに彼女を傷つけることなく、高みに連れて行くためだ。今夜も念入りに手洗いをしてからことに挑んでいる。

 どうだとばかりに笑って見せると、レンも何かを諦めたような顔で笑ってくれた。



「もう、やだ……」

 涙でぐしょぐしょの彼女の顔をベロリと舐めると、蜜壺に浅く挿入した中指をそっと揺らす。すでに数度達しているため、中はしとどに濡れそぼり、私の指を柔らかく食んだ。

「あっ、ああ」

 きゅうと指を締め上げ、彼女が達しそうな気配を感じた。私も愚息を擦り上げ、共に駆け上がる。

 ああ、この温かで柔らかな蜜壺に己を突き入れられたらどんなに心地よいだろう……

 レンの快楽で恍惚とした顔を間近で見ながら、あり得ない想像をする。私はさぞ物欲しそうな顔をしていたのだろうか、そそり立つ愚息を彼女の柔らかな手のひらに包まれた。レンの優しさに応えるべく花芯を親指でそっと押せば「やっぁ」と可愛らしい声をあげて絶頂した。彼女は長引く快楽に、藁にもすがる様子で愚息を握りしめる。

「ぐっ、」

 亀頭をぬるりと掴まれた感触に腰が震え、あっと思った次の瞬間には、射精してしまっていた。気がつけば、レンの腹部から胸までが白濁によって汚されていた。

「すまぬ! 」

 慌てて白濁を拭おうとするのだが、吐精が終わらず力が入らない。無闇に動いたため、白濁はレンの身体の多くを汚した。疲れたのか、私の精に塗れながらレンはぼんやりとウトウトし始める。

 ああ、なんて扇情的なのだ

 再び愚息に血液が集まり始めている。

 しかし、妊娠して疲れやすくなっているレンをこれ以上付き合わせてはならない。今夜はレンが眠りについた後、彼女の寝姿を見ながらありったけの精を吐き出すとしよう。

「すまぬな、我慢の利かぬ父で」

 ふっくらと膨らんだレンの腹部にそっと唇を落とす。途端にポコっと動いた気がして、体重をかけぬよう耳を腹部に付けた。

 トトトトという鼓動と、わずかな胎動を触知する。

「我が愛し子よ、私が帰るまで母を助けよ」

 滑らかな腹部を撫でながらそう語りかければ、まるで返事をするかのように、ポコっという振動を感じた。

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