真夜中の求愛は鳥籠のようで~妃は王太子から逃げられない~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中

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鳥籠のような求愛を受け入れて

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「お義姉様、お元気? 美味しいクッキーを持ってきたので、おやつに一緒に食べましょう?」

「ちょっと、抜け駆けしてんじゃないわよ!! あっ、お義姉様、私は人気店のカヌレをお土産に持ってきましたの。良かったら……」

「もー、マリーもクリスも抜け駆け禁止って決めたでしょ!! お義姉様は私とマフィンを食べるんだから!!」

 今日は、静養先の別荘にイザークの妹達が遊びに来ていた。皆彼と同じ濡れ羽色の髪をした、可愛らしい子達だ。

 三人の喋り声で、ベッド周りはすっかり賑やかになっていた。

「お前ら……うるさいぞ」

 そんな彼女達を、渋い顔でイザークは睨みつける。

「これ以上うるさくするなら、出ていけ」

「そっか、まだ体調が……、ごめんなさい、お義姉様」

 可哀想に、三人はしょんぼりと俯いてしまった。

「大丈夫よ、気にしないで。後でみんなでお茶にしましょう。お土産のお菓子、是非食べたいわ」

「本当!? じゃあ早速、お茶菓子の準備お願いして来るわ!!」

「あ、ずるい!!」

「競走よ!!」

 子ガラスちゃん達は、バタバタと部屋を出ていったのだった。

「……うるさいのが三人も、悪かったな」

「いいえ、小鳥のさえずりのようで良いじゃないですか」

 私が寝ているベッドの脇に腰掛け、イザークは深くため息をついた。

「あの癖の強い妹達と打ち解けている地点で、お前は只者では無い」

「あら、そんな言い方、素敵な妹君達に失礼ですわ」

 イザークの結婚相手を選ぶための舞踏会が開かれたのには、実は彼の妹達が深く関わっていた。

 彼女達は昔から揃って、兄のことを溺愛していた。

 しかし困ったことに、イザークに結婚話が持ち上がる度、彼女らはあらゆる手を使って、兄の婚約を妨害することで有名だった。

 そんな娘達に頭を悩ませた父王が、イザーク本人が目の前で結婚相手を選んだならば、彼女達も納得するだろう……と開いたのが、舞踏会という訳だ。

 婚後しばらくは彼女達に口をきいてすらもらえなかったが、時間をかけて仲良くなり、今に至る。

「皆優しい子ですから。きっと生まれたら、皆可愛がってくれるでしょう」

 お腹をさすりながら、私は呟く。それを見て、イザークは少しだけ表情を和らげた。

「ところで、体調はどうだ?」

「お陰様で、大分落ち着いてきましたわ」

「……そうか」

 後ろから私を抱きしめるように、イザークは手を回した。

 感じるのは、彼の温かく深い愛情だった。

「イザーク様」

 厚い胸に身体ごともたれ掛かり、彼の鼓動を感じる。

「……ずっと、愛しております」

 そう呟いて、私はそっと目を閉じた。
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