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溢れる思い、そしてカラスは愛を哭く

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「あ……っ、んっ、ひっ、あ、」

「はっ……っ、ぐっ、」

 わざと擦るように腰を揺らしながら、イザークは口を開いた。

「舞踏会でお前を一目見た時。どうしようも無く、心が掻き乱された」

「っ……!!」

「影のある表情に、強烈に惹き付けられた。それが何故かは分からない。ただ、自分の手元に置いて、孕ませたいと本能的に感じた。……夫婦として結ばれてからも、その気持ちは変わらない」

「ん、ぅ……っ!!」

 白濁液が流れ落ち始めたところで、彼は再度私を貫いた。

「変わらないどころか、愛おしく思う気持ちは募る一方だった」

「っ、……っあ、」

 じわじわと侵食するように腰を揺らしながらも、イザークは続ける。

「お前が情事間にも他の男を想っているなら、とあらぬことを考えたらば、嫉妬で狂いそうだった。だからお前の頭の中から他の男の名前を塗りつぶすために、気付けばひたすらに名を呼んでいた」

「……っ、」

 少しばかり彼と見つめ合うと、瞳の紫色は青みが強い色合いであることに気付く。

 そしてふと、思い出す。

 いつか見たカラスの瞳も、そのような青色だったことを。

「けれども、名を呼ぶだけでは到底支配欲を抑えられなかった。だから夜毎交わり、自分の匂いを残すことで、密かに安堵していた。けれども一度きりでは物足りず、お前を想いながら自瀆しては、無理やり自分を納得させていた」

「……っ、」

「自分の味と存在を覚えて、私しか受け入れられなくなれば良いとすら思い始めていた」

 腰の動きを止め、イザークは口を閉ざした。手を繋いだかのように脈打つ肌の感覚だけが腹の中で分かり、不思議な感覚だった。

 私が少しばかりの物足りなさを感じている傍ら、こんなにも彼が苦悩していたなど、まったく知らなかった。

「好きな女を所有して、自分に執着させたいと願う……私は、エゴの塊だ」

「……イザーク様」

 私は無意識に、彼の名前を呼んでいた。

「……ナターシャ。こんな劣等感に塗れた情欲を、受け入れる覚悟はあるか?」

 逞しい腕に抱き締められ、投げかけられた問い。しかしその問いは、懇願であることにすぐ気付いた。

 何故なら、彼は微かに震えていたからだ。

 答えは、とうに決まっていた。

「勿論です。イザーク様」

 そしてイザークは、私をシーツの海に押し倒した。

 「あ、あああああ!!」

「はっ、ナターシャ、ナターシャ……っ!!」

 高い位置に腰を持たれ、容赦なく突き入れられる。落雷のような衝撃に、淫道が彼を握りしめるが、イザークは動きを止めなかった。

「ナターシャ、……っ、好きだ、愛してる……!!」

「わ、私も……っ、愛してます、イザーク様……!!」

「は、……っ、だったら、私の声も、匂いも、体温も……全部、私の全てをやるから、身体に刻んでくれ……っ、そして、孕め……っ、」

「……っ、勿論で、ございますっ、っ、……!!」

「愛してる、ナターシャ、私は……!!」

「ひっ、あっ、あああああ!!」

 お前じゃないと駄目なんだ。

 そう言った後、彼は吐精した。
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