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第237話 謎の少女の正体
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ディランさんの家では人間の少女が横になり、寝かされていた。
とりあえず、これだけでは何が起きているのかサッパリ分からないため、詳しい情報を聞くことに。
「一体、この子は?」
「実は……俺たちも正体は分からないんだ」
「えっ?」
さらに詳しく聞いてみると――事の発端は二日前。
ちょうど、俺たちがアインレットの屋敷に向けて出発した日の昼に起きていた。
その日、辺りの見回りに来ていたディランさん他数人の村人が、ふらふらとおぼつかない足取りで森をさまよっている彼女を発見したらしい。外傷は見られなかったが、ひどくやつれており、聞くと三日もまともに食事をとっていないという。
ディランさんたちはすぐさま彼女をルトア村へと招き入れ、食事を与えた。
本当に空腹が限界に達していたらしく、もうちょっとでそこら辺に生えている草やキノコに手を出すところだったという。この辺りには毒キノコもあるからなぁ……なんとか踏みとどまってくれてよかったよ。
その後、満腹になった少女はこれまでの疲労と助かったという安堵感からか、急に猛烈な眠気に襲われ、横になり――今に至るという。
「フルズにも話そうかと思ったんだが……こういうのはやっぱり、まずは領主であるロイスへ持っていくべきじゃないかと思ってな」
「な、なるほど」
どうやら、ディランさんなりに気を遣ってくれたようだ。
俺は改めて、横になっている少女へ視線を移す。
年齢は、俺やシルヴィアと変わらないくらい――十五、六あたりか。
宝石のように輝く赤い長髪をツインテールにまとめおり、服装は泥などで汚れてはいるものの、ドレス調で高価な感じがする。
以上の情報から、
「いいところのお嬢様じゃないか?」
彼女の身分をそう分析した。
「やはりか。俺たちもそうじゃないかと睨んでいたんだ」
「だから、領主様たちなら彼女と知り合いじゃないかと思って」
なるほど、そういうことだったのか。
確かに、俺のアインレット家やシルヴィアの実家であるラクロワ家はこのアルヴァロ王国で領地の運営を任されている貴族である。
恐らく、彼女もその身なりから俺たちと同じ貴族か、或いは、それに匹敵するくらいの地位や財力を持った者――例えば、名のある大商人とか歴戦の魔法使いとかのご令嬢って可能性が高い。
とはいえ、俺やシルヴィアは面識がないため、こうなると、彼女が目を覚まし、自らの情報を語ってくれないことにはお手上げだな。
――なんてことを思っていたら、ちょうど彼女が目を覚ました。
「うぅん……」
目をこすりながら上半身を起こし、辺りを見回す少女。
「あれ……? ここは……?」
自分がルトア村に連れてこられたことも忘れているらしい。
まずは名前を聞いてみるとするか。
「だ、大丈夫か?」
「えっ? え、えぇ……」
「俺はここの領主であるロイス・アインレットだ。君の名前を教えてくれないか?」
「名前……?」
俺の問いかけに、少女はカクンと首を傾げる。
ま、まさか……
「私の名前……なんでしょう?」
彼女は記憶を失っていた。
とりあえず、これだけでは何が起きているのかサッパリ分からないため、詳しい情報を聞くことに。
「一体、この子は?」
「実は……俺たちも正体は分からないんだ」
「えっ?」
さらに詳しく聞いてみると――事の発端は二日前。
ちょうど、俺たちがアインレットの屋敷に向けて出発した日の昼に起きていた。
その日、辺りの見回りに来ていたディランさん他数人の村人が、ふらふらとおぼつかない足取りで森をさまよっている彼女を発見したらしい。外傷は見られなかったが、ひどくやつれており、聞くと三日もまともに食事をとっていないという。
ディランさんたちはすぐさま彼女をルトア村へと招き入れ、食事を与えた。
本当に空腹が限界に達していたらしく、もうちょっとでそこら辺に生えている草やキノコに手を出すところだったという。この辺りには毒キノコもあるからなぁ……なんとか踏みとどまってくれてよかったよ。
その後、満腹になった少女はこれまでの疲労と助かったという安堵感からか、急に猛烈な眠気に襲われ、横になり――今に至るという。
「フルズにも話そうかと思ったんだが……こういうのはやっぱり、まずは領主であるロイスへ持っていくべきじゃないかと思ってな」
「な、なるほど」
どうやら、ディランさんなりに気を遣ってくれたようだ。
俺は改めて、横になっている少女へ視線を移す。
年齢は、俺やシルヴィアと変わらないくらい――十五、六あたりか。
宝石のように輝く赤い長髪をツインテールにまとめおり、服装は泥などで汚れてはいるものの、ドレス調で高価な感じがする。
以上の情報から、
「いいところのお嬢様じゃないか?」
彼女の身分をそう分析した。
「やはりか。俺たちもそうじゃないかと睨んでいたんだ」
「だから、領主様たちなら彼女と知り合いじゃないかと思って」
なるほど、そういうことだったのか。
確かに、俺のアインレット家やシルヴィアの実家であるラクロワ家はこのアルヴァロ王国で領地の運営を任されている貴族である。
恐らく、彼女もその身なりから俺たちと同じ貴族か、或いは、それに匹敵するくらいの地位や財力を持った者――例えば、名のある大商人とか歴戦の魔法使いとかのご令嬢って可能性が高い。
とはいえ、俺やシルヴィアは面識がないため、こうなると、彼女が目を覚まし、自らの情報を語ってくれないことにはお手上げだな。
――なんてことを思っていたら、ちょうど彼女が目を覚ました。
「うぅん……」
目をこすりながら上半身を起こし、辺りを見回す少女。
「あれ……? ここは……?」
自分がルトア村に連れてこられたことも忘れているらしい。
まずは名前を聞いてみるとするか。
「だ、大丈夫か?」
「えっ? え、えぇ……」
「俺はここの領主であるロイス・アインレットだ。君の名前を教えてくれないか?」
「名前……?」
俺の問いかけに、少女はカクンと首を傾げる。
ま、まさか……
「私の名前……なんでしょう?」
彼女は記憶を失っていた。
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