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第242話 考察
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ダイールさんとの情報収集を終えた俺は、屋敷へと戻ってきた。
「お疲れ様、ロイス。成果はどうだった?」
「上々だよ、シルヴィア」
フィーネ本人に直接つながる情報ではなかったが、彼女と関係が深そうな連中に関する情報はいくつか入手できた。
そのフィーネの姿が見えなかったのでシルヴィアに確認してみると、どうやら疲れと体調不良で今日はもう休んでいるらしい。
とりあえず、今いるメンバーにここまで集めた情報を公開して意見を募るとするか。
「――と、まあ、こんな感じなんだけど……どう思う?」
「それはもしや……」
言い淀むシルヴィア。
まあ、言わんとしていることは想像がつく。
「恐らくは奴隷商……」
黙ってしまったシルヴィアに変わって、お茶を持ってきたテスラさんが答える。
「ど、奴隷商って……違法じゃないですか!」
「ですから、慌てて町中を走り去ったのでしょう」
「なるほど!」
レオニーさんの疑問を瞬時に解決するテスラさん。なんという手際の良さだ。
――って、感心している場合じゃない。
「今回の件は騎士団へ報告しておくべきだろうな」
連中の正体が奴隷商という確証はない。
しかし、よからぬことを企んでいるというのは間違いなさそうだ。
「……まあ、でも、今の段階では動いてくれそうにないかなぁ」
真っ先に脳裏をよぎったのはやっぱりマーシャルさんだった。……しかし、あの人は将来の騎士団長候補にも挙げられる超絶エリート。確証のない案件に当たるよりもずっと厄介な事件を抱えているだろう。
そんな時、俺はふとある人物の存在を思い出す。
シルヴィアには三人の兄がいる。
ひとりは何度か顔を合わせている次兄のマーシャルさん。もうひとりはそのマーシャルさんとは正反対で妹のシルヴィアに対して冷たい感じの三男オーウェンさん。
そして――未だに顔を合わせたことがない、長兄のルーカスさんだ。
思えば、シルヴィアの口からルーカスさんの話が出た記憶がない。妹思いであり、自身もよく懐いている次兄のマーシャルさんの話はたくさん聞いてきたが……一切触れていないというのも気になる。
これに関しては、俺の口から尋ねるのははばかられる。
婚約者という関係上、いずれは聞かなくてはいけない時が来るのだろうが……まあ、今は本人の方から切りだすのを待つとするか。
話を戻して、フィーネの件についてだ。
俺は馬車が走り去っていった方向を地図で確認し、あることに気がついた。あのまま真っ直ぐに進んだとするなら――
「馬車は恐らく……バーロンに向かったようだ」
鉄道都市バーロン。
そこはかつて暗黒街と言われ、さまざまな違法品が売買されていた。中には奴隷商も存在していたはず。連中はその頃の残党だろうか。
俺の祖父であるアダム・カルーゾが町の治安を取り戻し、鉄道を敷いて経済的に成長させたことで、現在は平和な町になっているが……これは先にテレイザさんへ報告した方がよさそうだ。
というわけで、俺たちの明日の行動が決まった。
謎の馬車を追って、鉄道都市バーロンへと向かう。
…………………………………………………………………………………………………
近況ボードにも書きましたが、今月末に本作の書籍第2巻が発売されます!
さらに、現在コミカライズ企画も現在進行中です!
ロイスとシルヴィア、そして仲間たちのまったり領地開拓をマンガでもお楽しみください!
「お疲れ様、ロイス。成果はどうだった?」
「上々だよ、シルヴィア」
フィーネ本人に直接つながる情報ではなかったが、彼女と関係が深そうな連中に関する情報はいくつか入手できた。
そのフィーネの姿が見えなかったのでシルヴィアに確認してみると、どうやら疲れと体調不良で今日はもう休んでいるらしい。
とりあえず、今いるメンバーにここまで集めた情報を公開して意見を募るとするか。
「――と、まあ、こんな感じなんだけど……どう思う?」
「それはもしや……」
言い淀むシルヴィア。
まあ、言わんとしていることは想像がつく。
「恐らくは奴隷商……」
黙ってしまったシルヴィアに変わって、お茶を持ってきたテスラさんが答える。
「ど、奴隷商って……違法じゃないですか!」
「ですから、慌てて町中を走り去ったのでしょう」
「なるほど!」
レオニーさんの疑問を瞬時に解決するテスラさん。なんという手際の良さだ。
――って、感心している場合じゃない。
「今回の件は騎士団へ報告しておくべきだろうな」
連中の正体が奴隷商という確証はない。
しかし、よからぬことを企んでいるというのは間違いなさそうだ。
「……まあ、でも、今の段階では動いてくれそうにないかなぁ」
真っ先に脳裏をよぎったのはやっぱりマーシャルさんだった。……しかし、あの人は将来の騎士団長候補にも挙げられる超絶エリート。確証のない案件に当たるよりもずっと厄介な事件を抱えているだろう。
そんな時、俺はふとある人物の存在を思い出す。
シルヴィアには三人の兄がいる。
ひとりは何度か顔を合わせている次兄のマーシャルさん。もうひとりはそのマーシャルさんとは正反対で妹のシルヴィアに対して冷たい感じの三男オーウェンさん。
そして――未だに顔を合わせたことがない、長兄のルーカスさんだ。
思えば、シルヴィアの口からルーカスさんの話が出た記憶がない。妹思いであり、自身もよく懐いている次兄のマーシャルさんの話はたくさん聞いてきたが……一切触れていないというのも気になる。
これに関しては、俺の口から尋ねるのははばかられる。
婚約者という関係上、いずれは聞かなくてはいけない時が来るのだろうが……まあ、今は本人の方から切りだすのを待つとするか。
話を戻して、フィーネの件についてだ。
俺は馬車が走り去っていった方向を地図で確認し、あることに気がついた。あのまま真っ直ぐに進んだとするなら――
「馬車は恐らく……バーロンに向かったようだ」
鉄道都市バーロン。
そこはかつて暗黒街と言われ、さまざまな違法品が売買されていた。中には奴隷商も存在していたはず。連中はその頃の残党だろうか。
俺の祖父であるアダム・カルーゾが町の治安を取り戻し、鉄道を敷いて経済的に成長させたことで、現在は平和な町になっているが……これは先にテレイザさんへ報告した方がよさそうだ。
というわけで、俺たちの明日の行動が決まった。
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