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第243話 手がかり

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 フィーネの情報を求めて、俺たちは鉄道都市バーロンにいる叔母・テレイザさんのもとを訪れることにした。
 今回はテレイザさんに直接フィーネの顔を見てもらい、面識がないかチェックしてもらうため、彼女自身も連れての旅となる。
 これに関しては、リスクも伴っていた。

 というのも、フィーネを追っていた者たちが進んでいった方角は、アスコサの人たちの情報から察するに、このバーロン近郊である可能性が高かったからだ。
 祖父であるアダム・カルーゾが町に来るまで、バーロンといえば国内でも有数の治安が悪い場所として有名だった。それこそ、違法とされている奴隷商や危険魔法薬の売買などが日常的に行われていたのだ。

 国としても厳しく取り締まろうという動きを見せていたが、モタモタしている間に規模はドンドン大きくなり、徐々に騎士団や魔法兵団に所属する兵士だけでは手が付けられないくらいにまで膨れ上がっていたという。

 そんな危険地帯へ単身乗り込み、町の構造を根本からひっくり返してしまったのがうちの祖父というのだから驚きだ。
 
 しかし、当時の悪党の生き残りが、現在も裏社会で暗躍しているという噂は絶えなかった。決定的な証拠があるわけではないのだが、かつての町が町だけに、そのような話が出てもただの噂と片付けることはできないだろう。

 だからこそ、カルーゾ家の名を受け継ぐテレイザさんが、今も町を管理しているのだが……フィーネの存在により、その目を盗んでまたよからぬ商売に手を染めた者がいた可能性が浮上した。

 馬車で移動し、とうとう目的地のバーロンへとたどり着く。

「相変わらず人が多いな、ここは」
「まったくね」

 馬車を預けると、俺とシルヴィアは町の様子を眺めてそんなことを口にする。
 今回は俺たちの他に、護衛騎士のダイールさんとレオニーさんも同行。さらに、念のため、フィーネはローブを羽織って顔が見えないようにした。これなら、そう簡単に見つかりはしないだろう。

 とはいえ、これでも万全というわけではない。
 いつもならお店巡りをするところだが、今回は早めに行動をしよう。
 何せ、向こうはフィーネの顔を知っているけど、俺たちは敵の顔をまったく知らないからな。
 それでも、テレイザさんの屋敷に入ってしまえば安全だ。
 俺たちは周囲を警戒しつつ、目的地に向けて進んでいった。
 

 警戒の効果もあってか、何事もなく屋敷へ到着。
 早速、テレイザさんの待つ応接室へと向かった。

「いらっしゃい。大勢で来るとは聞いていたけど、本当に賑やかね。何かあったのかしら」
「はい。実は――」

 俺は不安そうにしているフィーネをテレイザさんの前へと連れて行く。

「あら? あなた……前にどこかで会ったことないかしら?」

 すると、すぐさま有力な情報がもたらされた。

「彼女を知っているんですか!?」
「えぇ。でも……どこだったかしら?」

 顔は見たことがあっても、それがどこだったのかは曖昧らしい。
 ただ、ひとつだけ覚えていることがあるという。

「この子に会ったのは、数年前にお城で開かれた舞踏会だった。それだけは間違いないと断言できるわ」
「舞踏会……」

 数年前の舞踏会、か。
 それが何を記念して開かれた舞踏会なのかが分かれば、もう少し詳しい手がかりを得られるかもしれない。
 同時に、次の目的地も決まった。
 目指すは――アルヴァロ城だ。
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