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連載
第261話 星降る夜に
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ムデル族のお祭りは夜に本番を迎えるらしい――のだが、大人たちはすでに大宴会で大盛り上がりを見せていた。
一方、若者は若者で、伝統料理に舌鼓を打ちつつ、いろんな話で盛り上がる。
中でも俺が関心を寄せたのが、ムデル族と山猫の獣人族との交流だった。
どちらも以前は閉鎖されていた空間のみで生活する一族であったが、今ではそれが嘘のように他種族と積極的な交流を続けている。
理由としては、オティエノさんとディランという若いリーダーが出てきたからだろうなと俺は分析していた。
オティエノさんはまだだが、ディランさんに関してはすでに村のまとめ役として機能しているし、この前は鉄道都市バーロンまで俺たちを助けにやってきてくれた。この辺りは関係性として大きな変化が見られる。
これからも、ふたりを中心に他種族との関係性をもっと深めていってもらいたいと俺は思っていた。
そのためにも、学校というのはひとつの接点になるかもしれないな。
宴会はだんだんとその勢いを増していくが、ある時間になるとムデル族の人たちは夜空を気にし始めた。
「何かあるんですか?」
気になってオティエノさんに尋ねると、
「もうすぐ凄いことが起きるよ!」
星空に負けないくらいキラキラと輝く瞳で、オティエノさんはそう言った。
当然、このまま騒いで終わりということはないだろう。
これではいつもの宴会とちょっと規模が大きくなったくらいでほとんど変わりないからな。
――で、肝心の夜空についてだが……特に変化は見られない。
標高が高くて空気が澄んでいるという影響から、地上で見るよりも星が大きく、またハッキリと目に移るという違いはある。
しかし、これはこの地に暮らすムデル族であれば見慣れた光景。
特別変わったようには思えない。
すると、
「来たぞ!」
ムデル族の男性が叫ぶ。
直後、
「わっ!?」
「おぉ!」
俺とシルヴィアは夜空を見上げながら叫んだ。
理由は――空を駆ける数多の流星にあった。
「こ、こんなにたくさんの流れ星が……」
「いわゆる流星群ってヤツか……」
この世界の天体事情がどうなっているかは皆目見当もつかないが、オティエノさんの話によると、このようにたくさんの流れ星が見られる時期が年に一度あるらしい。
「南側に大きく輝く一番星が出た次の日には必ず流星が出るんだよ!」
そうオティエノさんは教えてくれたけど……何か根拠があるってわけじゃなさそうだ。でも、ムデル族の人々が長年に渡ってこういうお祭りを開いているという事実から、関連性は極めて高いと思われる。
「綺麗だな、ロイス」
「あ、あぁ」
うっとりとした表情で夜空を見つめるシルヴィア。
その横顔を見ながら、「君の方が綺麗だよ」のひと言くらい口にすればいいのだが……さすがにそれはちょっと難しいかな。
――いや、いつまでもこんな調子じゃダメだ。
これからは俺もシルヴィアに対してもうちょっと積極的にならないと。
「どうかしたのか?」
「い、いや、なんでもないよ」
星の降る夜に、俺はそう誓った――が、シルヴィアに直接それを口にするのはやっぱりちょっと恥ずかしいので、もうちょっとだけ先延ばしにするとしよう。
一方、若者は若者で、伝統料理に舌鼓を打ちつつ、いろんな話で盛り上がる。
中でも俺が関心を寄せたのが、ムデル族と山猫の獣人族との交流だった。
どちらも以前は閉鎖されていた空間のみで生活する一族であったが、今ではそれが嘘のように他種族と積極的な交流を続けている。
理由としては、オティエノさんとディランという若いリーダーが出てきたからだろうなと俺は分析していた。
オティエノさんはまだだが、ディランさんに関してはすでに村のまとめ役として機能しているし、この前は鉄道都市バーロンまで俺たちを助けにやってきてくれた。この辺りは関係性として大きな変化が見られる。
これからも、ふたりを中心に他種族との関係性をもっと深めていってもらいたいと俺は思っていた。
そのためにも、学校というのはひとつの接点になるかもしれないな。
宴会はだんだんとその勢いを増していくが、ある時間になるとムデル族の人たちは夜空を気にし始めた。
「何かあるんですか?」
気になってオティエノさんに尋ねると、
「もうすぐ凄いことが起きるよ!」
星空に負けないくらいキラキラと輝く瞳で、オティエノさんはそう言った。
当然、このまま騒いで終わりということはないだろう。
これではいつもの宴会とちょっと規模が大きくなったくらいでほとんど変わりないからな。
――で、肝心の夜空についてだが……特に変化は見られない。
標高が高くて空気が澄んでいるという影響から、地上で見るよりも星が大きく、またハッキリと目に移るという違いはある。
しかし、これはこの地に暮らすムデル族であれば見慣れた光景。
特別変わったようには思えない。
すると、
「来たぞ!」
ムデル族の男性が叫ぶ。
直後、
「わっ!?」
「おぉ!」
俺とシルヴィアは夜空を見上げながら叫んだ。
理由は――空を駆ける数多の流星にあった。
「こ、こんなにたくさんの流れ星が……」
「いわゆる流星群ってヤツか……」
この世界の天体事情がどうなっているかは皆目見当もつかないが、オティエノさんの話によると、このようにたくさんの流れ星が見られる時期が年に一度あるらしい。
「南側に大きく輝く一番星が出た次の日には必ず流星が出るんだよ!」
そうオティエノさんは教えてくれたけど……何か根拠があるってわけじゃなさそうだ。でも、ムデル族の人々が長年に渡ってこういうお祭りを開いているという事実から、関連性は極めて高いと思われる。
「綺麗だな、ロイス」
「あ、あぁ」
うっとりとした表情で夜空を見つめるシルヴィア。
その横顔を見ながら、「君の方が綺麗だよ」のひと言くらい口にすればいいのだが……さすがにそれはちょっと難しいかな。
――いや、いつまでもこんな調子じゃダメだ。
これからは俺もシルヴィアに対してもうちょっと積極的にならないと。
「どうかしたのか?」
「い、いや、なんでもないよ」
星の降る夜に、俺はそう誓った――が、シルヴィアに直接それを口にするのはやっぱりちょっと恥ずかしいので、もうちょっとだけ先延ばしにするとしよう。
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