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第262話 ロイスの決意
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流星群を見終わった後、大人たちはその余韻へ浸るように大宴会の再開。
一方、俺たち未成年組はひと足先に寝ようとハミードさん宅へと向かう。
ハミードさん自身も未だに宴会を楽しんでいるようなので、戻るのは俺とシルヴィア、そしてオティエノさんの三人のみ。他のアダム村の面々はそれぞれ別の人の家に御厄介になる。
「あれだけの数の流れ星……初めて見たよ」
「私も、初めて見た時は圧倒されていたなぁ……って、今も冷静になって見られてはいないんだけどね」
家に入ると、シルヴィアとオティエノさんは就寝を前にちょっとした会話を楽しんでいた。
話題はやっぱりお祭りのメインである流星群について。
あれは確かに凄かった……前世の世界ではニュースとかで取り上げられていたけど、こうして生で見たのは俺も生まれて初めてだった。標高が高い分、空気も澄んでいて地上で見るよりずっと綺麗に感じるのだろうな。
外の喧騒が嘘のように、家の中ではふたりの会話以外に音がない。
俺はフラッと裏口から外に出て、ちょうどいいサイズの石の上に腰を下ろす。それからもう一度空を見上げた。
すでに流星群は去り、広がっているのは見慣れたいつもの星空。
あの時は興奮していて気づかなかったけど、結構肌寒くなってきているな。この辺りは雪とか降るのだろうか。明日、オティエノさんに聞いてみよう。必要なら、村のみんなで雪かきとかしないといけないから、準備も進めておかないと。
……って、またか。
ひとりでいると、どうしても村のことばかり考えてしまう。
いや、領主としてはそちらの方が望ましいのだろうけど……たまにはもうちょっと別のことに思考を費やさないとダメだな。
特に――シルヴィアについて、だ。
村に学校をつくりたいという希望を持った時から、同時にある考えがずっと頭をよぎっていた。
それは……シルヴィアとの結婚式だ。
俺とシルヴィアは婚約者である――が、正直、まだ夫婦らしいことは何もできていなかった。ジェロム地方での生活も徐々に安定してきているし、そろそろ正式な夫婦として結婚式を挙げたいと俺は考えていたのだ。
だが、それにはいくつか問題点がある。
その最大の問題は……うちの実家だ。
母上やキャロライン姉さんとの関係は大きく改善したものの、父上とビシェル兄さんとの関係は相変わらずの調子だった。
まあ、姉さんの結婚式以降、あのふたりと絡むことはなかったからなぁ……むしろ義理の兄であるマーシャルさんの方がよく会っている気がする。
「ロイス、こんなところにいたのか」
星空を眺めていたら、シルヴィアがやってきた。
「何か考えごとか?」
「あぁ、ちょっとね」
「村のことだろう?」
お見通しだとばかりに笑うシルヴィア。
確かにそうなんだけど……ちょっと違う点もある。
「それだけじゃないよ。――君のことも考えていた」
「わ、私を?」
意外だったのか、シルヴィアの声が裏返る。
「当然だろう? 妻であるシルヴィアのことは、常に気にかけているよ」
「そ、そうなのか……」
これくらいなら、すんなり言えるんだけどねぇ……変に格好つけた感じにならないからいいのかな。
「ありがとう、ロイス。私も同じだ」
「えっ?」
「いつもロイスのことを想っている」
「シルヴィア……」
「さ、さあ! そろそろ寝ようか!」
恥ずかしさの限界に達したのか、シルヴィアはガチガチの動きで家へと戻っていく。
……シルヴィアとの結婚式――そろそろ本気で考えないといけないな。
一方、俺たち未成年組はひと足先に寝ようとハミードさん宅へと向かう。
ハミードさん自身も未だに宴会を楽しんでいるようなので、戻るのは俺とシルヴィア、そしてオティエノさんの三人のみ。他のアダム村の面々はそれぞれ別の人の家に御厄介になる。
「あれだけの数の流れ星……初めて見たよ」
「私も、初めて見た時は圧倒されていたなぁ……って、今も冷静になって見られてはいないんだけどね」
家に入ると、シルヴィアとオティエノさんは就寝を前にちょっとした会話を楽しんでいた。
話題はやっぱりお祭りのメインである流星群について。
あれは確かに凄かった……前世の世界ではニュースとかで取り上げられていたけど、こうして生で見たのは俺も生まれて初めてだった。標高が高い分、空気も澄んでいて地上で見るよりずっと綺麗に感じるのだろうな。
外の喧騒が嘘のように、家の中ではふたりの会話以外に音がない。
俺はフラッと裏口から外に出て、ちょうどいいサイズの石の上に腰を下ろす。それからもう一度空を見上げた。
すでに流星群は去り、広がっているのは見慣れたいつもの星空。
あの時は興奮していて気づかなかったけど、結構肌寒くなってきているな。この辺りは雪とか降るのだろうか。明日、オティエノさんに聞いてみよう。必要なら、村のみんなで雪かきとかしないといけないから、準備も進めておかないと。
……って、またか。
ひとりでいると、どうしても村のことばかり考えてしまう。
いや、領主としてはそちらの方が望ましいのだろうけど……たまにはもうちょっと別のことに思考を費やさないとダメだな。
特に――シルヴィアについて、だ。
村に学校をつくりたいという希望を持った時から、同時にある考えがずっと頭をよぎっていた。
それは……シルヴィアとの結婚式だ。
俺とシルヴィアは婚約者である――が、正直、まだ夫婦らしいことは何もできていなかった。ジェロム地方での生活も徐々に安定してきているし、そろそろ正式な夫婦として結婚式を挙げたいと俺は考えていたのだ。
だが、それにはいくつか問題点がある。
その最大の問題は……うちの実家だ。
母上やキャロライン姉さんとの関係は大きく改善したものの、父上とビシェル兄さんとの関係は相変わらずの調子だった。
まあ、姉さんの結婚式以降、あのふたりと絡むことはなかったからなぁ……むしろ義理の兄であるマーシャルさんの方がよく会っている気がする。
「ロイス、こんなところにいたのか」
星空を眺めていたら、シルヴィアがやってきた。
「何か考えごとか?」
「あぁ、ちょっとね」
「村のことだろう?」
お見通しだとばかりに笑うシルヴィア。
確かにそうなんだけど……ちょっと違う点もある。
「それだけじゃないよ。――君のことも考えていた」
「わ、私を?」
意外だったのか、シルヴィアの声が裏返る。
「当然だろう? 妻であるシルヴィアのことは、常に気にかけているよ」
「そ、そうなのか……」
これくらいなら、すんなり言えるんだけどねぇ……変に格好つけた感じにならないからいいのかな。
「ありがとう、ロイス。私も同じだ」
「えっ?」
「いつもロイスのことを想っている」
「シルヴィア……」
「さ、さあ! そろそろ寝ようか!」
恥ずかしさの限界に達したのか、シルヴィアはガチガチの動きで家へと戻っていく。
……シルヴィアとの結婚式――そろそろ本気で考えないといけないな。
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