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第309話 ロイスの決意
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三人の助っ人の乱入により、事態は一変した。
父上も、まさかこの三人が揃って俺とシルヴィアの婚約破棄に対して抗議に駆けつけてくるとは夢にも思っていなかったらしく、呆気に取られていた。
何よりも体面を気にする父上にとって、身内から距離を置かれるというのは一番困るだろうな。最近はよくなりつつあると言ってもアインレット家はまだまだ再建途中。ここで足元が崩れるようなことがあってはせっかく築きあげてきた復活への道筋が断たれることにもつながるしね。
その結果――父上は俺とシルヴィアの婚約を継続させる方向で納得。
ビシェル兄さんが一切絡んでこない点は少し気になるが、そこはライザさんが「きっちり説得する」と力強く言ってくれた。本当に頼りになる人だ。
屋敷を出ると、俺とシルヴィアは改めて三人にお礼を言う。
「今日は本当にありがとうございました」
「なんてお礼をしたらいいか……」
シルヴィアと一緒に深々と頭を下げる――と、ここでテレイザさんから思わぬ提案が出された。
「今後も同じ事態に発展しないよう、そろそろ結婚式を挙げちゃったら?」
「「えっ!?」」
まさかの発言に驚きの声が飛びだす俺とシルヴィア。
しかし、周囲はこれを皮切りに盛りあがりを見せた。
「それは名案ですね」
「その時は僕とキャロラインも出席しますよ」
「でしたら、すぐにジェロム地方へ戻って準備をしましょう」
「でも、アダム村には教会がありませんよね?」
「なければ作ればよいのです」
ついにはテスラさん、レオニーさん、ダイールさんまでも参加し始める。
しかし……結婚式、か。
もちろんこれまでまったく考えてこなかったわけじゃない。ただ、今は自分たちのことよりも領地運営に力を注ぎたいという気持ちが強く、具体的な話をしてこなかった。
でも、さっきテレイザさんが言ったように、またいつ父上の考えが変わっておかしなことを言いだすか分からない。ただ結婚するだけなら家を出ればいいんだけど、そうするとジェロム地方の領主は俺じゃなくて別人が担当することになるだろう。
それだけはどうしても避けたい。
ムデル族や山猫の獣人族たちと築いてきた関係が悪化しかねないからな。
「……うん。みんなの言う通りだ」
「ロ、ロイス!?」
俺がこの話の乗っかると思っていなかったシルヴィアの声が裏返る。
そこへ畳みかけるように俺は彼女の目を真っ直ぐ見つめて伝えた。
「シルヴィア……結婚式を挙げよう」
「は、はい」
あっさりと了承された直後、テレイザさんたちから祝福の拍手と「おめでとう」の言葉が。
なんか、今になって急に恥ずかしくなってきたぞ……
父上も、まさかこの三人が揃って俺とシルヴィアの婚約破棄に対して抗議に駆けつけてくるとは夢にも思っていなかったらしく、呆気に取られていた。
何よりも体面を気にする父上にとって、身内から距離を置かれるというのは一番困るだろうな。最近はよくなりつつあると言ってもアインレット家はまだまだ再建途中。ここで足元が崩れるようなことがあってはせっかく築きあげてきた復活への道筋が断たれることにもつながるしね。
その結果――父上は俺とシルヴィアの婚約を継続させる方向で納得。
ビシェル兄さんが一切絡んでこない点は少し気になるが、そこはライザさんが「きっちり説得する」と力強く言ってくれた。本当に頼りになる人だ。
屋敷を出ると、俺とシルヴィアは改めて三人にお礼を言う。
「今日は本当にありがとうございました」
「なんてお礼をしたらいいか……」
シルヴィアと一緒に深々と頭を下げる――と、ここでテレイザさんから思わぬ提案が出された。
「今後も同じ事態に発展しないよう、そろそろ結婚式を挙げちゃったら?」
「「えっ!?」」
まさかの発言に驚きの声が飛びだす俺とシルヴィア。
しかし、周囲はこれを皮切りに盛りあがりを見せた。
「それは名案ですね」
「その時は僕とキャロラインも出席しますよ」
「でしたら、すぐにジェロム地方へ戻って準備をしましょう」
「でも、アダム村には教会がありませんよね?」
「なければ作ればよいのです」
ついにはテスラさん、レオニーさん、ダイールさんまでも参加し始める。
しかし……結婚式、か。
もちろんこれまでまったく考えてこなかったわけじゃない。ただ、今は自分たちのことよりも領地運営に力を注ぎたいという気持ちが強く、具体的な話をしてこなかった。
でも、さっきテレイザさんが言ったように、またいつ父上の考えが変わっておかしなことを言いだすか分からない。ただ結婚するだけなら家を出ればいいんだけど、そうするとジェロム地方の領主は俺じゃなくて別人が担当することになるだろう。
それだけはどうしても避けたい。
ムデル族や山猫の獣人族たちと築いてきた関係が悪化しかねないからな。
「……うん。みんなの言う通りだ」
「ロ、ロイス!?」
俺がこの話の乗っかると思っていなかったシルヴィアの声が裏返る。
そこへ畳みかけるように俺は彼女の目を真っ直ぐ見つめて伝えた。
「シルヴィア……結婚式を挙げよう」
「は、はい」
あっさりと了承された直後、テレイザさんたちから祝福の拍手と「おめでとう」の言葉が。
なんか、今になって急に恥ずかしくなってきたぞ……
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