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第一幕 モブメイド令嬢誕生編
10 王子、近い、近いからっ!
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アイゼン第ニ王子の誕生パーティは大盛況の内に幕を閉じた。
ショーン伯爵家の三女――ミランダからは、祝宴の後、直接御礼を言われたわ。
「あの時、私に夢のような舞台を提供して下さいましてありがとうございます」
「何をおっしゃいますの? ワタクシはあの場の興が醒める事を避けただけよ?」
「いえ! もし、ヴァイオレッタ様が私の粗相を怒っていたなら、私は貴族社会から追放されていたと思います。あの、もしご迷惑でなければ……今後もヴァイオレッタ様とお話したく……嗚呼、私如きが申し訳……え?」
彼女が言い終わる前に、彼女の唇へワタクシの人差し指をあて、続きの発言を静止する。本来であれば伯爵令嬢と侯爵令嬢であれば侯爵の方が上の立場。更には自分に自信がないミランダの事を考えると、そう思うのは当然だ。
「せっかくアイゼン王子があの場であなたを表舞台へ押し上げたのよ? もっと自信を持ちなさい。勘違いしない事。ワタクシは来る者は拒まない。但し、ワタクシを愚弄する者には容赦はしないわ。覚えておくのね」
彼女へ背を向け、その場を離れるワタクシ。今日はこの位で充分だろう。これで暫く彼女が表舞台から消える事はないだろう。ミランダが頭を下げたまま、部屋を出ていくワタクシを最後まで見送っていた事は言うまでもないわ。
そして、あの場で罠を仕掛けたショーン伯爵家の次女には、小声で牽制しておいた。
「三女を虐めるのはいいけれど、王子を敵に回すとあなた、表舞台から消えるわよ?」と。
そりゃあもう、顔面蒼白だったわね。脳内のモブメイドが、『よし、ヴァイオレッタ。よく言ったわ。これぞ悪役令嬢っぽい台詞よ』と何やら騒いでいたけれど。まぁ、元モブメイドであるワタクシですから、ああいう弱い者虐めをされてあからさまにモブ扱いされている子を放っておけなかったとも言えるのだけれど。
さて、破滅エンド回避のための試練を一つクリアしたワタクシは、そのまま帰ろうとしたのだけれど……。
「おや、どうして帰ろうとしているんだい? 愛しのヴァイオレッタ」
「あら? クラウン王子。ワタクシも忙しいのよ。日が暮れる前に、今日はこの辺で失礼しますわ」
「それは残念だ。侍女によると、誕生パーティ用に作られたケーキや菓子がまだ残っているらしいから、一緒に食べようと思ったんだが……」
因みにここは王宮の廊下。王子と婚約者が会話している様子を遠目からしっかり執事と侍女が見守っている事を知っている。明日はメイド選抜試験の日。本当は家へ帰って色々と準備する予定だった訳だけど。
「……まぁ、少しくらいならご一緒してもよくてよ」
――だってだって、ヴァイオレッタ様。さっきとっかえひっかえ整った顔が挨拶に来るから、ケーキ全然食べれらなかったんですもの~~~! (byモブメイド)
結果的に、モブメイドは甘い誘惑に負けたわ。キラキラとお皿の上で光輝くケーキを堪能し、王子からは『ヴァイオレッタが此処まで甘味好きとは知らなかったよ』不思議そうな顔をされたわね。
そのまま自然な流れで部屋に連れていかれ、例の如く、扉を閉められる。そして、またソファーに座って脚を組むのかと思いきや、何故か壁際にワタクシは追いやられ、そのままワタクシの顎を軽く上へあげた状態で、王子は至近距離で囁いて来た。
「お前なんだろ? 王子にあんな氷魔法の使い方を教えたのは?」
「な、何のことですの?」
「視線を逸らすな、こっちを見ろ」
ちょっと待ちなさい……待ってよ! そんな整った顔を近づけないでくださいます? モブメイドは美男美女を遠くから見守るに徹していたので、こんな至近距離慣れてないのよ?
ショーン伯爵家の三女――ミランダからは、祝宴の後、直接御礼を言われたわ。
「あの時、私に夢のような舞台を提供して下さいましてありがとうございます」
「何をおっしゃいますの? ワタクシはあの場の興が醒める事を避けただけよ?」
「いえ! もし、ヴァイオレッタ様が私の粗相を怒っていたなら、私は貴族社会から追放されていたと思います。あの、もしご迷惑でなければ……今後もヴァイオレッタ様とお話したく……嗚呼、私如きが申し訳……え?」
彼女が言い終わる前に、彼女の唇へワタクシの人差し指をあて、続きの発言を静止する。本来であれば伯爵令嬢と侯爵令嬢であれば侯爵の方が上の立場。更には自分に自信がないミランダの事を考えると、そう思うのは当然だ。
「せっかくアイゼン王子があの場であなたを表舞台へ押し上げたのよ? もっと自信を持ちなさい。勘違いしない事。ワタクシは来る者は拒まない。但し、ワタクシを愚弄する者には容赦はしないわ。覚えておくのね」
彼女へ背を向け、その場を離れるワタクシ。今日はこの位で充分だろう。これで暫く彼女が表舞台から消える事はないだろう。ミランダが頭を下げたまま、部屋を出ていくワタクシを最後まで見送っていた事は言うまでもないわ。
そして、あの場で罠を仕掛けたショーン伯爵家の次女には、小声で牽制しておいた。
「三女を虐めるのはいいけれど、王子を敵に回すとあなた、表舞台から消えるわよ?」と。
そりゃあもう、顔面蒼白だったわね。脳内のモブメイドが、『よし、ヴァイオレッタ。よく言ったわ。これぞ悪役令嬢っぽい台詞よ』と何やら騒いでいたけれど。まぁ、元モブメイドであるワタクシですから、ああいう弱い者虐めをされてあからさまにモブ扱いされている子を放っておけなかったとも言えるのだけれど。
さて、破滅エンド回避のための試練を一つクリアしたワタクシは、そのまま帰ろうとしたのだけれど……。
「おや、どうして帰ろうとしているんだい? 愛しのヴァイオレッタ」
「あら? クラウン王子。ワタクシも忙しいのよ。日が暮れる前に、今日はこの辺で失礼しますわ」
「それは残念だ。侍女によると、誕生パーティ用に作られたケーキや菓子がまだ残っているらしいから、一緒に食べようと思ったんだが……」
因みにここは王宮の廊下。王子と婚約者が会話している様子を遠目からしっかり執事と侍女が見守っている事を知っている。明日はメイド選抜試験の日。本当は家へ帰って色々と準備する予定だった訳だけど。
「……まぁ、少しくらいならご一緒してもよくてよ」
――だってだって、ヴァイオレッタ様。さっきとっかえひっかえ整った顔が挨拶に来るから、ケーキ全然食べれらなかったんですもの~~~! (byモブメイド)
結果的に、モブメイドは甘い誘惑に負けたわ。キラキラとお皿の上で光輝くケーキを堪能し、王子からは『ヴァイオレッタが此処まで甘味好きとは知らなかったよ』不思議そうな顔をされたわね。
そのまま自然な流れで部屋に連れていかれ、例の如く、扉を閉められる。そして、またソファーに座って脚を組むのかと思いきや、何故か壁際にワタクシは追いやられ、そのままワタクシの顎を軽く上へあげた状態で、王子は至近距離で囁いて来た。
「お前なんだろ? 王子にあんな氷魔法の使い方を教えたのは?」
「な、何のことですの?」
「視線を逸らすな、こっちを見ろ」
ちょっと待ちなさい……待ってよ! そんな整った顔を近づけないでくださいます? モブメイドは美男美女を遠くから見守るに徹していたので、こんな至近距離慣れてないのよ?
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