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104話・だきあう
しおりを挟む王都への道中、幾つかの町や村に立ち寄った。
未発見のダンジョンがないか探したり、既にあるダンジョンに潜ったり。慣れない地では思うように活動できなかったけど、ゼルドさんと二人なら何でも楽しかった。
「今日の宿にはお風呂があるそうです」
「湯に浸かるのは久しぶりだな」
新たに移動した先は大きな町で、従って宿屋も設備が充実していた。
「宿泊客だけが利用できる大浴場ですって」
「他の客も入るのか」
「そうみたいです」
オクトの宿屋のように小さな浴室を予約して貸し切るのではなく、いつでも誰でも入れる大きなお風呂があるという。そのぶん宿泊費も割り高なんだけど、好きな時にお風呂に入れるのは魅力的だと思う。
でも、ゼルドさんはあまり乗り気ではないようだった。
「じゃあ僕が先に様子を見てきます。空いてたら呼びますから」
宿屋の人に空いている時間を聞くか、直接大浴場まで行って確認をしようとおもったんだけど……。
「いや、私も行く」
「他の人と入るのイヤなんじゃないんですか」
「君の身体を他人に見せたくないだけだ」
「そっ……、なっ……!」
僕の貧相な身体なんか誰も気に留めないだろうに、ゼルドさんは見せたくないと言う。
数日振りのお風呂を逃すわけにもいかず、結局二人で大浴場に行くことにした。
脱衣所で服を脱ぎ、手拭いを腰に巻いて大浴場に足を踏み入れる。扉の向こうは石造りの洗い場が広がっており、奥に大きな浴槽があった。既に何人かの宿泊客が入っていて、冒険者だけではなく普通の旅行者もいた。
「先に身体を洗ってから湯舟に浸かります?」
「ああ」
「それじゃ、お背中流しますね」
「頼む」
洗い場の椅子に腰掛けるゼルドさん。僕は備え付けの木桶に湯を汲み、流し掛けてから彼の大きな背中を洗っていく。
すると、先に湯舟に浸かっていた宿泊客のおじさんが声を掛けてきた。
「兄ちゃん、後でオレの背中も流してくれよ!」
どうやら下働きの従業員が奉仕していると勘違いされたようだ。なんと答えれば角が立たないだろうかと迷っていると、ゼルドさんがそちらに振り返った。
「悪いが、彼は私の専属だ」
怖い顔を更に険しくして睨みつけ、低い声でそう告げる。おじさんは真っ青になり「失礼しましたー!」と謝罪しながら慌てて大浴場から出て行った。他にも数人居たけれど、ゼルドさんに怯えて縮こまり、そそくさと退散した。
「貸し切りになりましたね」
「脅し過ぎたな」
身体を洗い終えてから湯舟に入ると、湯舟は広く、五、六人同時に浸かれるほどの広さがあった。
「広いのも悪くはないが、狭い浴槽でライルくんを抱えて入るほうが良い」
「今はダメですよ。他のお客さんが入ってくるかもしれないし」
「……わかっている」
とはいえ、一緒の湯舟に入っているのに離れているなんて初めてで、妙に気持ちが落ち着かなかった。
「ゼルドさん」
「うん?」
「僕、オクトの宿屋のお風呂が好きだったみたいです」
「私もそう思っていたところだ」
二人して同じことを考えていたと知り、また笑い合う。
食事をしてから部屋に戻り、二つあるベッドのうちの一つに抱き合って寝転がった。どちらからともなく唇を寄せ、啄むような軽い口付けから徐々に深くなっていく。息が上がる頃には興奮を隠せなくなり、つい手が下へと伸びた。
「もうおっきくなってる」
「君が触るからだろう」
「だって、脚に当たるから」
くすくすと笑いながら、毛布にくるまって互いの身体を触り合う。
「んっ……」
ゼルドさんの指先が僕の腰を撫で、更に下へと降り、身体の奥が疼いた。
「ゼルドさん」
「ああ」
熱を帯びた瞳を向ければ、それ以上に情欲を孕んだ視線が向けられた。でも、何故かゼルドさんは手を止め、溜め息をつく。
「この宿は壁が薄い」
「……確かに」
耳を澄ませば、近くの部屋から騒ぐ声が漏れ聞こえてきた。こちらの声も向こうに聞こえるのだと思うと躊躇ってしまう。今すぐゼルドさんが欲しいのに。
「君の可愛い声を誰かに聞かせたくない」
真っ最中の声なんて好きこのんで聞きたがる人なんかいない。むしろ迷惑だろう。僕も知らない人に聞かれたくはない。
「じゃあ、ゼルドさんが塞いで」
再び顔を寄せ、軽く口付けてからお願いする。唇が塞がれていれば声は出せない。名案だと思ったんだけど。
「明日は歩けなくなるかもしれんぞ」
「えっ?……んむ」
ゼルドさんが深く口付けながら僕の服を脱がし、自分のズボンの前をくつろげて互いのものを一緒に握った。既に期待で濡れていた先端から流れ落ちたものが滑りを良くして卑猥な水音を立てる。お風呂上がりで高い体温が更に熱くなり、頭まで被っていた毛布を剥ぎ取って身体を起こした。
「ライルくん、私の上に」
「ん」
僅かに口を離した時に耳元で囁かれた。促されるまま、胡座をかいたゼルドさんの上に跨がる。向き合う体勢で後孔を慣らされ、呼吸が乱れた。前と後ろを同時に弄られ、すぐに果てると、ゼルドさんが僕の身体を持ち上げた。ぴたりと熱いものが当てられ、そのまま腰を下ろされる。すっかり慣らされたそこは自重でゼルドさんのものを飲み込んでいった。
「ん、んん~ッ……!」
いつもより奥へと入り込んでいく刺激に耐え兼ねて唇を離し掛けたら、ゼルドさんが顎を掴んで固定した。彼の腕は僕の腰と後頭部に回され、ぴったりと身体を密着させている。上下に揺さぶられるたび、声を押し殺すために深く深く口付ける。口内と胎内を同時に責められ、僕はすぐに昇り詰めてしまった。
声を我慢する緊張感とキスしながら抱かれる気持ち良さに負け、結局ゼルドさんが満足するまで抱かれた。翌日は本当に立てなくて、次の町への移動は乗り合い馬車を利用した。
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