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正論だから、キリエもただ膨れるしかなくて。
「あ……いや、まあ。実際のトコ、さ。学校によって部活の出席については、ほら、強制的じゃないのがデフォなわけだし」
涼とキリエが二人して不機嫌になっているのを見かねた恵那が恐る恐る、間に入る。
「M女はそゆの、ちゃんとしてると思うよ。僕たちだって、試験期間入るしこの週末過ぎたら暫く練習できないからそんなのサボるのって有り得なくない? どこも同じだと思う」
「キリのガッコ、試験期間もう終わったもん。だから今日、夕方空いてたんだもん」
完全に不貞腐れた表情でキリエが反論する。
いよいよ二人して口論になってしまう、と思った恵那が。
「わかった。キリ、ちょい土岐たちと試合の話しといて。で、涼、おいで」
三人をリビングに残し、涼の腕を引いて自分の部屋へと向かった。
キリエのフォローは響に目で合図しておく。
こんな状況で二人が喧嘩するのなんて、誰も見たくないから。
「涼。どした?」
部屋に入ると、ベッドに涼を座らせて正面から見つめる。
少し俯いている涼が、下唇を噛んで黙っていて。
「なんか、あった?」
いつも仲良しなキリエと涼で。いつだってキリエのちょっとしたワガママなんて笑って許していた涼を知っているから。
さっきの四角四面な涼は珍しい。元々マジメな人間なのはわかっているけれど、自分の奔放な行動も笑って許してくれるだけの心の広さは持っているハズで。それに較べたら、さっきのキリエのワガママなんてカワイイもの。
なのにあんな風に強い口調で諫めようとするなんて、涼らしくない。
「キリと、喧嘩したのか?」
涼が小さく首を横に振った。
「……じゃあ、キリが響たちの試合、観に行くのがヤなのか?」
その問いには、涼が完全に固まる。
それが何よりの“肯定”で。
恵那は、ふー、と大きく息を吐いた。
「りょーお。土岐と響の試合、カッコイイだろ?」
何度か二人がバスケをしている姿を見た涼が、いつだって目をキラキラさせて“カッコイイ”と言っていたのを思い出す。恵那としてはちょっとだけジェラ、なわけだけど。
「あれ、観たい気持ち、わかんない?」
「……わかる、し」
小さな声で。でも、納得なんてしてないのがわかるから。
「キリが観たいのもわかるけど、キリみたいな可愛い女の子が応援してたらさ、土岐たちだっていつもより頑張れると思わん?」
響も土岐も、キリエが応援に来てくれることはきっと楽しみなハズだから、恵那としては多少部活をサボることなんてなんとも思わない。
けれど。
涼がぎゅ、と目を閉じた。
「涼?」
そのまま、首を横に振る。まるで“イヤイヤ”をする幼児のように。
「涼、ヤキモチ、か、それは。キリの応援で喜ぶあいつらが、嫌なのか?」
「違うし! そんな、子供みたいなこと、しない!」
「でも涼、キリが土岐の応援行くのがヤなんだろ?」
「違うもん。きーちゃんが、部活サボるのがダメな、だけだし」
また、下唇を噛んで俯いて。
恵那としては、どうしてもイヤな予感がしてしまう。
涼が、響ではなく土岐という名前に反応している、という事実に。
キリエが土岐へ微妙に傾いているのが、恐らく涼は気に入らないのだろう。
そしてそれは……。
「涼。おまえ、土岐のことが好きなのか?」
思ったことを口にしてしまう恵那だから、はっきりとそう、言葉にすると。
「違うし! 僕が好きなのはえなだし!」
ぐ、と顔を上げて恵那の目を見た。
「でも、キリは土岐のこと、好きなんだろ? だから」
「そーだよ、きーちゃん土岐のこと気に入ってる! でも、だからってなんで僕が? 僕は……僕が好きなのは土岐じゃないよ。えなだよ!」
「あ……いや、まあ。実際のトコ、さ。学校によって部活の出席については、ほら、強制的じゃないのがデフォなわけだし」
涼とキリエが二人して不機嫌になっているのを見かねた恵那が恐る恐る、間に入る。
「M女はそゆの、ちゃんとしてると思うよ。僕たちだって、試験期間入るしこの週末過ぎたら暫く練習できないからそんなのサボるのって有り得なくない? どこも同じだと思う」
「キリのガッコ、試験期間もう終わったもん。だから今日、夕方空いてたんだもん」
完全に不貞腐れた表情でキリエが反論する。
いよいよ二人して口論になってしまう、と思った恵那が。
「わかった。キリ、ちょい土岐たちと試合の話しといて。で、涼、おいで」
三人をリビングに残し、涼の腕を引いて自分の部屋へと向かった。
キリエのフォローは響に目で合図しておく。
こんな状況で二人が喧嘩するのなんて、誰も見たくないから。
「涼。どした?」
部屋に入ると、ベッドに涼を座らせて正面から見つめる。
少し俯いている涼が、下唇を噛んで黙っていて。
「なんか、あった?」
いつも仲良しなキリエと涼で。いつだってキリエのちょっとしたワガママなんて笑って許していた涼を知っているから。
さっきの四角四面な涼は珍しい。元々マジメな人間なのはわかっているけれど、自分の奔放な行動も笑って許してくれるだけの心の広さは持っているハズで。それに較べたら、さっきのキリエのワガママなんてカワイイもの。
なのにあんな風に強い口調で諫めようとするなんて、涼らしくない。
「キリと、喧嘩したのか?」
涼が小さく首を横に振った。
「……じゃあ、キリが響たちの試合、観に行くのがヤなのか?」
その問いには、涼が完全に固まる。
それが何よりの“肯定”で。
恵那は、ふー、と大きく息を吐いた。
「りょーお。土岐と響の試合、カッコイイだろ?」
何度か二人がバスケをしている姿を見た涼が、いつだって目をキラキラさせて“カッコイイ”と言っていたのを思い出す。恵那としてはちょっとだけジェラ、なわけだけど。
「あれ、観たい気持ち、わかんない?」
「……わかる、し」
小さな声で。でも、納得なんてしてないのがわかるから。
「キリが観たいのもわかるけど、キリみたいな可愛い女の子が応援してたらさ、土岐たちだっていつもより頑張れると思わん?」
響も土岐も、キリエが応援に来てくれることはきっと楽しみなハズだから、恵那としては多少部活をサボることなんてなんとも思わない。
けれど。
涼がぎゅ、と目を閉じた。
「涼?」
そのまま、首を横に振る。まるで“イヤイヤ”をする幼児のように。
「涼、ヤキモチ、か、それは。キリの応援で喜ぶあいつらが、嫌なのか?」
「違うし! そんな、子供みたいなこと、しない!」
「でも涼、キリが土岐の応援行くのがヤなんだろ?」
「違うもん。きーちゃんが、部活サボるのがダメな、だけだし」
また、下唇を噛んで俯いて。
恵那としては、どうしてもイヤな予感がしてしまう。
涼が、響ではなく土岐という名前に反応している、という事実に。
キリエが土岐へ微妙に傾いているのが、恐らく涼は気に入らないのだろう。
そしてそれは……。
「涼。おまえ、土岐のことが好きなのか?」
思ったことを口にしてしまう恵那だから、はっきりとそう、言葉にすると。
「違うし! 僕が好きなのはえなだし!」
ぐ、と顔を上げて恵那の目を見た。
「でも、キリは土岐のこと、好きなんだろ? だから」
「そーだよ、きーちゃん土岐のこと気に入ってる! でも、だからってなんで僕が? 僕は……僕が好きなのは土岐じゃないよ。えなだよ!」
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