メンヘラ×メンヘラ=恋、暴走中!?~お前なしじゃ生きられない!…いや、マジで無理だから!

中岡 始

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俺がやりたいのは、こういう音楽だったか?

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玲央は、ギターを膝に抱えたまま、無言で弦を弾いていた。  

メロディーらしきものがぽつぽつと響くが、すぐに途切れる。  

ソファの反対側で雑誌を読んでいた真尋は、その音が続いたり途切れたりするのを聞きながら、ちらりと玲央のほうを見た。  

「……なんか、悩んでんのか?」  

玲央は顔を上げることなく、「んー」と適当な相槌を打つ。  

「事務所のやつらに、次のシングルはもっと万人受けする感じにしろって言われた」  

「万人受け?」  

「つまり、誰が聴いても良いと思える曲。キャッチーで、ポップで、売れるやつ」  

「別にいいんじゃねぇの? 売れたほうがいいんだろ」  

「まあな。でもさ……」  

玲央はギターの弦を軽くはじいたあと、小さく息を吐く。  

「俺、本当にやりたい音楽、最近作れてねぇ気がする」  

真尋は雑誌を閉じ、ソファに身を預けた。  

「それって、お前が作りたいもんと、求められてるもんがズレてるってことか?」  

「……そんな感じ」  

玲央はゆるく首を回して天井を見上げる。  

「昔はさ、好きなもん作って、それを聴いてくれるやつがいればそれで良かったんだけどな」  

「今は?」  

「売れるために作る、みたいな感じになってる」  

「まあ、メジャーになったらそういうのもあるんじゃねぇの」  

真尋の言葉に、玲央は不満そうに口を尖らせる。  

「それがダリィんだよ」  

玲央のぼやきを聞きながら、真尋は少し考えるように視線を巡らせた。  

部屋のスピーカーからは、流しっぱなしにしていたプレイリストの曲が静かに流れている。  

玲央のバンドのものではなく、昔から二人とも好きだったアーティストの楽曲だ。  

ふと、玲央がギターを脇に置いて、ぼんやりとそれを聴き始める。  

「やっぱ、こういう音楽好きなんだよな」  

「うん?」  

「飾ってなくて、作ったやつの感情がそのまま伝わる感じのやつ」  

玲央は小さく笑う。  

「俺、バンド始めた頃、こういうの作りたかったんだよな」  

「……」  

真尋は、玲央の言葉を黙って聞いていた。  

しばらく沈黙が続く。  

玲央はスピーカーの音を小さくし、肘掛けに頬杖をついた。  

「俺さ……このまま突っ走って、ほんとにいいんかな」  

「……じゃあ、一回立ち止まれば?」  

玲央はゆっくりと真尋の方を向いた。  

「……今?」  

「今」  

真尋は目を細めて、少しだけ口角を上げた。  

「まだ間に合うんじゃねぇの?」  

玲央はその言葉を噛みしめるように黙ったまま、ギターを再び手に取った。  

そして、何かを確かめるように、静かに弦を鳴らし始めた。  
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