9 / 34
本の内容が会話のネタになる?
しおりを挟む
ガラッ──
教室の扉を開けると、朝のざわめきが耳に飛び込んできた。
「昨日のサッカーの試合見た?」
「やっぱ○○選手すげーよな!」
「後半のあのシュート、マジで神だったよな!」
男子数人が、机を囲んで盛り上がっている。
陽向はいつものように適当に席に着き、リュックを下ろす。
特に会話に加わるつもりはなかったが、完全に無視するのも微妙なので、適当に相槌を打つ。
「へぇー、すごかったんだ」
「お前、見てねぇの?」
「まあ、なんか別のことしてて……」
そう言いながら、陽向はふと昨日読んだ『走れメロス』を思い出した。
── メロスも、仲間のために命がけで走ってたよな……。
── なんか、今の話とちょっと似てね?
気づけば、ぽろっと口から言葉がこぼれていた。
「なんか、メロスっぽいよな」
── あっ。
言った瞬間、陽向は一瞬硬直した。
周りの男子がピタッと会話を止め、陽向を見た。
「……メロス?」
「お前、メロス知ってんの?」
「え、お前国語の授業聞いてたの?」
「いや、だから別に、ちょっと読んだだけだし……!」
陽向は慌てて誤魔化す。
が、意外にもクラスメイトの反応は悪くなかった。
「メロスってさ、あれ結構熱い話だよな!」
「メロス、ガチで走りすぎだろww」
「俺だったら絶対途中で諦めるわw」
思いのほか、話が広がっていく。
「……あれ?」
陽向は内心驚いた。
今まで、本の話なんてわざわざすることもなかった。
でも、こうやってちょっと話題に出しただけで、意外とみんな普通に話してくれるんだな……?
── 本って、思ったより会話のネタになるのかも?
ぼんやりとそう考えた瞬間、どこからともなく聞き慣れた声が響いた。
「フン……やはり読書は役に立つな」
「……え?」
陽向が声の方向を探すと、教室の入口で、トラ老師がどっしりと座っていた。
「うわっ!? なんでお前がそこにいるんだよ!!」
「む? 俺は朝からずっとここにいたぞ」
「いや、堂々と校内にいるな!!!」
驚いて駆け寄ると、トラ老師はまるで「当然だろ?」と言わんばかりに胸を張った。
「お前、気づいていなかったのか? フン、やはり人間は注意力が足りんな」
「いや、普通気づかねぇだろ!!」
陽向は顔を抑えながら深いため息をつく。
「てか、何ドヤ顔してんだよ……」
「フフン」
トラ老師は、明らかに誇らしげに喉を鳴らし、のんびりと前足を舐め始めた。
「お前が読書の力を理解し始めたことを、俺は見逃さなかったぞ」
「別に、理解したわけじゃねぇし!」
陽向はむくれながらも、チラッとクラスメイトの方を見た。
「……でも、まあ……本の話って、意外と会話になるんだな」
つい、そう呟いてしまう。
その言葉を聞いたトラ老師は、再び胸を張って言った。
「フン、当然だ」
「……だからその顔やめろ!!」
教室の扉を開けると、朝のざわめきが耳に飛び込んできた。
「昨日のサッカーの試合見た?」
「やっぱ○○選手すげーよな!」
「後半のあのシュート、マジで神だったよな!」
男子数人が、机を囲んで盛り上がっている。
陽向はいつものように適当に席に着き、リュックを下ろす。
特に会話に加わるつもりはなかったが、完全に無視するのも微妙なので、適当に相槌を打つ。
「へぇー、すごかったんだ」
「お前、見てねぇの?」
「まあ、なんか別のことしてて……」
そう言いながら、陽向はふと昨日読んだ『走れメロス』を思い出した。
── メロスも、仲間のために命がけで走ってたよな……。
── なんか、今の話とちょっと似てね?
気づけば、ぽろっと口から言葉がこぼれていた。
「なんか、メロスっぽいよな」
── あっ。
言った瞬間、陽向は一瞬硬直した。
周りの男子がピタッと会話を止め、陽向を見た。
「……メロス?」
「お前、メロス知ってんの?」
「え、お前国語の授業聞いてたの?」
「いや、だから別に、ちょっと読んだだけだし……!」
陽向は慌てて誤魔化す。
が、意外にもクラスメイトの反応は悪くなかった。
「メロスってさ、あれ結構熱い話だよな!」
「メロス、ガチで走りすぎだろww」
「俺だったら絶対途中で諦めるわw」
思いのほか、話が広がっていく。
「……あれ?」
陽向は内心驚いた。
今まで、本の話なんてわざわざすることもなかった。
でも、こうやってちょっと話題に出しただけで、意外とみんな普通に話してくれるんだな……?
── 本って、思ったより会話のネタになるのかも?
ぼんやりとそう考えた瞬間、どこからともなく聞き慣れた声が響いた。
「フン……やはり読書は役に立つな」
「……え?」
陽向が声の方向を探すと、教室の入口で、トラ老師がどっしりと座っていた。
「うわっ!? なんでお前がそこにいるんだよ!!」
「む? 俺は朝からずっとここにいたぞ」
「いや、堂々と校内にいるな!!!」
驚いて駆け寄ると、トラ老師はまるで「当然だろ?」と言わんばかりに胸を張った。
「お前、気づいていなかったのか? フン、やはり人間は注意力が足りんな」
「いや、普通気づかねぇだろ!!」
陽向は顔を抑えながら深いため息をつく。
「てか、何ドヤ顔してんだよ……」
「フフン」
トラ老師は、明らかに誇らしげに喉を鳴らし、のんびりと前足を舐め始めた。
「お前が読書の力を理解し始めたことを、俺は見逃さなかったぞ」
「別に、理解したわけじゃねぇし!」
陽向はむくれながらも、チラッとクラスメイトの方を見た。
「……でも、まあ……本の話って、意外と会話になるんだな」
つい、そう呟いてしまう。
その言葉を聞いたトラ老師は、再び胸を張って言った。
「フン、当然だ」
「……だからその顔やめろ!!」
10
あなたにおすすめの小説
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる