猫の先生は気まぐれに~あるいは、僕が本を読む理由

中岡 始

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まだまだ読みたい本がある

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 陽向は机の上に積まれた本をぼんやりと眺めた。  

 最初は、一冊読むだけで疲れていたのに、気がつけばこんなにたくさんの本を読んできた。  
 ミステリー、ファンタジー、古典、エッセイ──最初は興味がなかったものも、読んでみると意外と面白かったり、考えさせられたりした。  

 その中には、途中で挫折した本もある。  

 「あの時は難しくて投げ出したけど…今なら読めるかもしれない」  

 そう思いながら、一冊の本を手に取る。  

 前に挑戦したときは、言葉が難しくて意味がよくわからなかった。  
 でも、今の自分なら、あのときよりも深く読めるかもしれない。  

 ページをめくりながら、ふと気づく。  

 「もっといろんな本を読んでみたい」  

 それは、以前の自分なら絶対に思わなかったことだ。  
 「本を読むことに意味なんてあるのか」と疑問を抱いていた頃とは、まるで別人みたいだ。  

 「フン…悪くない目をするようになったな」  

 頭上から、満足げな声が聞こえた。  

 見上げると、トラ老師が本棚の一番上でくつろいでいる。  
 尻尾をゆっくりと揺らしながら、こちらを見下ろしていた。  

 陽向は、思わず苦笑する。  

 「お前、いちいち上から目線だよな」  

 「当然だ。俺は老師だからな」  

 いつもの偉そうな態度。  
 だけど、不思議と嫌な気はしない。  

 本を手にしながら、陽向はゆっくりとページをめくった。  
 これからどんな本と出会えるのか、少し楽しみになっていた。  
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