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第一章
格上相手には、とにかく入念に準備するべし。――7
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判断し、俺は『不思議なバッグ』からHPポーションを取りだして、ユーに渡した。
「回復しろ、ユー!」
『ムゥ!』
グイッとユーがポーションを煽る。
1だったユーのHPが、ほぼ満タンまで回復した。
「『バーサク』!」
『ムゥゥゥッ!』
続け様に指示を受け、ユーが力こぶを作るようなポーズをとる。
『疾風の腕輪』の先制効果が発動。即座にバーサクが発動し、満たされたHPバーがギュイン、と減った。
バーサクは、発動時に最大HPの3/4を失うハイリスクなスキル。しかしその効果は、『STRを200%上昇させる』と絶大だ。
ユーが燃えるような真紅のオーラに包まれる。
「次いでパージ!」
『ムゥ!』
パージのチャージタイムはもともと0秒。
ユーのHPがさらに減って1になり、
「『リバーサルストライク』!!」
『ムゥ――――ッ!!』
流星の如くユーが飛び出した。
「食らいやがれ! こいつがユーの『とっておき』! 『バーサクリバスト』だぁあああああああああっ!!」
キュドォオオオオオオンンンンッ!!
爆撃機が音速で通過したような轟音とともに、ユーのロングソードがアースドラゴンを貫く。
アースドラゴンの胴体にポッカリと穴が空いた。
『GOOOOOOOOHHHH……!!』
驚愕したように目を剥き、アースドラゴンが断末魔を上げる。
アースドラゴンが魔石へと姿を変え、コロリと地面に転がった。
「な、なにが起きたんだ……」
エリーゼ先輩も呆然と目を見開いている。俺がアースドラゴンを倒せるなんて、思ってもみなかったのだろう。
無理もない。30レベルの従魔で120レベルのモンスターを倒すなんて、ジャイアントキリングも甚だしいのだから。
「これがゴーストナイトの真価っす」
ポカンとしているエリーゼ先輩に、ニッと歯を見せながら解説する。
「『疾風の腕輪』の先制効果でバーサクを即発動。パージでHPを1にして、リバーサルストライクに繋げる。一撃大ダメージの超火力コンボっす」
通称『バーサクリバスト』。ファイモンのコンボのなかでも、最大級の火力を誇る組み合わせだ。
「きみはとんでもない男だな、まったく」
俺の説明を聞いて、エリーゼ先輩が溜め息を漏らした。
そんなエリーゼ先輩に、駆けよってきたレイシーが抱きつく。
「レイシー?」
「心配、しました……っ」
離さないとばかりにエリーゼ先輩を抱きしめるレイシーの体は、かすかに震えていた。
エリーゼ先輩が、普段のクールさが嘘みたいに柔らかく微笑む。
「すまない。きみを置いていくことなど、わたしにはできないのにな」
レイシーの頭を慈しむように撫でながら、エリーゼ先輩が俺に顔を向ける。
「助けてくれてありがとう、マサラニアくん。ここまでの実力を見せつけられたんだ、勝負はわたしの負けだな」
「いえ。せっかくですし、白黒つけましょうよ」
エリーゼ先輩が怪訝そうに眉をひそめる。
そんな先輩の前で、俺は魔石を取りだしていった。
1個、2個、3個……5個……10個……30個……
70個を超えた辺りから、エリーゼ先輩の顔が引きつりだし、
「合計115個。エリーゼ先輩のほうはどうっすか?」
俺の傍らに、魔石の山が築かれた。
エリーゼ先輩は言葉もなく魔石の山を眺め、不意に「あはははははっ!」と笑い声を上げる。
「つくづくきみは、わたしの想像を超えていくな」
エリーゼ先輩が諸手を挙げた。
「参った。わたしの完敗だ」
負けを認めたわりに、エリーゼ先輩の顔は晴れやかだった。
「きみになら、レイシーを任せても構わないだろう」
「あ。そう言えばそんな話でしたね」
「ただ、ひとついいかな、マサラニアくん?」
エリーゼ先輩が満面の笑顔を浮かべる。
どうしてだろう? その笑顔を見ていると、全身が粟立つような悪寒を覚える。
「レイシーを泣かせたらタダではすまさない。肝に銘じておいてくれよ?」
そもそも、どうしてエリーゼ先輩が、レイシーに対して過保護になるのかはわからない。
レイシーとの仲を認めてもらうために、どうしてエリーゼ先輩と勝負しないといけなかったのかも、わからない。
しかし、ひとつだけわかることがあった。
「う、うっす……了解しました」
そう答えないと、エリーゼ先輩にひねり潰されることだけは。
「回復しろ、ユー!」
『ムゥ!』
グイッとユーがポーションを煽る。
1だったユーのHPが、ほぼ満タンまで回復した。
「『バーサク』!」
『ムゥゥゥッ!』
続け様に指示を受け、ユーが力こぶを作るようなポーズをとる。
『疾風の腕輪』の先制効果が発動。即座にバーサクが発動し、満たされたHPバーがギュイン、と減った。
バーサクは、発動時に最大HPの3/4を失うハイリスクなスキル。しかしその効果は、『STRを200%上昇させる』と絶大だ。
ユーが燃えるような真紅のオーラに包まれる。
「次いでパージ!」
『ムゥ!』
パージのチャージタイムはもともと0秒。
ユーのHPがさらに減って1になり、
「『リバーサルストライク』!!」
『ムゥ――――ッ!!』
流星の如くユーが飛び出した。
「食らいやがれ! こいつがユーの『とっておき』! 『バーサクリバスト』だぁあああああああああっ!!」
キュドォオオオオオオンンンンッ!!
爆撃機が音速で通過したような轟音とともに、ユーのロングソードがアースドラゴンを貫く。
アースドラゴンの胴体にポッカリと穴が空いた。
『GOOOOOOOOHHHH……!!』
驚愕したように目を剥き、アースドラゴンが断末魔を上げる。
アースドラゴンが魔石へと姿を変え、コロリと地面に転がった。
「な、なにが起きたんだ……」
エリーゼ先輩も呆然と目を見開いている。俺がアースドラゴンを倒せるなんて、思ってもみなかったのだろう。
無理もない。30レベルの従魔で120レベルのモンスターを倒すなんて、ジャイアントキリングも甚だしいのだから。
「これがゴーストナイトの真価っす」
ポカンとしているエリーゼ先輩に、ニッと歯を見せながら解説する。
「『疾風の腕輪』の先制効果でバーサクを即発動。パージでHPを1にして、リバーサルストライクに繋げる。一撃大ダメージの超火力コンボっす」
通称『バーサクリバスト』。ファイモンのコンボのなかでも、最大級の火力を誇る組み合わせだ。
「きみはとんでもない男だな、まったく」
俺の説明を聞いて、エリーゼ先輩が溜め息を漏らした。
そんなエリーゼ先輩に、駆けよってきたレイシーが抱きつく。
「レイシー?」
「心配、しました……っ」
離さないとばかりにエリーゼ先輩を抱きしめるレイシーの体は、かすかに震えていた。
エリーゼ先輩が、普段のクールさが嘘みたいに柔らかく微笑む。
「すまない。きみを置いていくことなど、わたしにはできないのにな」
レイシーの頭を慈しむように撫でながら、エリーゼ先輩が俺に顔を向ける。
「助けてくれてありがとう、マサラニアくん。ここまでの実力を見せつけられたんだ、勝負はわたしの負けだな」
「いえ。せっかくですし、白黒つけましょうよ」
エリーゼ先輩が怪訝そうに眉をひそめる。
そんな先輩の前で、俺は魔石を取りだしていった。
1個、2個、3個……5個……10個……30個……
70個を超えた辺りから、エリーゼ先輩の顔が引きつりだし、
「合計115個。エリーゼ先輩のほうはどうっすか?」
俺の傍らに、魔石の山が築かれた。
エリーゼ先輩は言葉もなく魔石の山を眺め、不意に「あはははははっ!」と笑い声を上げる。
「つくづくきみは、わたしの想像を超えていくな」
エリーゼ先輩が諸手を挙げた。
「参った。わたしの完敗だ」
負けを認めたわりに、エリーゼ先輩の顔は晴れやかだった。
「きみになら、レイシーを任せても構わないだろう」
「あ。そう言えばそんな話でしたね」
「ただ、ひとついいかな、マサラニアくん?」
エリーゼ先輩が満面の笑顔を浮かべる。
どうしてだろう? その笑顔を見ていると、全身が粟立つような悪寒を覚える。
「レイシーを泣かせたらタダではすまさない。肝に銘じておいてくれよ?」
そもそも、どうしてエリーゼ先輩が、レイシーに対して過保護になるのかはわからない。
レイシーとの仲を認めてもらうために、どうしてエリーゼ先輩と勝負しないといけなかったのかも、わからない。
しかし、ひとつだけわかることがあった。
「う、うっす……了解しました」
そう答えないと、エリーゼ先輩にひねり潰されることだけは。
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