上 下
71 / 86
第二章

大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――9

しおりを挟む
『GLLLL……!』

 続いて、ライオンヘッドプリーストが杖を高く掲げた。

 杖から放たれる光が、ヴェールのようなまくを成す。『ハイヒール』の準備態勢だ。

 ハイヒールの発動を許せば、ライオンヘッドプリーストのHPは2本と1/4になり、決着が遠のく。

 しかし俺は焦らなかった。

 レイシーのサポートがあるからだ。

『リィ!』

 6秒のチャージタイムを終え、指を組んでいたリーリーが両手を掲げる。

 賛美歌さんびかのような音色が流れ、ユーの体をきらめきが包んだ。

 魔法スキル『ミスティックエール』の発動。その効果は、『味方モンスター1体を対象とし、スキルひとつのクールタイムをリセットする』だ。

 要するに、

「ユー、もう一発リバーサルストライクだ!」

 本来、5分待たないと再使用できないリバーサルストライクを、すぐに放てるようになるってことだ。

 ユーが『防御態勢』を解除し、ロングソードを引き絞る。

『ムゥ――――ッ!!』

 そして放たれるリバーサルストライク。

 キュドォオオオオオオンンンンッ!!

『GLOOOOOOOOOOHHHH!!』

 理不尽とも言えるバーサクリバストの連発を食らい、ライオンヘッドプリーストがのけ反る。

 断末魔の咆哮を上げ、ライオンヘッドプリーストは、光の粒子となって消えていった。

 ライオンヘッドプリーストとの戦闘を終えたレイシーは、脱力するように息を吐く。

 よほど緊張していたのだろう。レイシーの額には汗が浮かんでいた。

 そんなレイシーに、俺は快活かいかつな笑顔を向ける。

「バッチリだったぞ、レイシー!」
「お役に立てたでしょうか?」
「ああ! ミスティックエールとリバーサルストライクの相性に気付いたことはもちろんだが、戦闘開始せんとうかいし直後に使う判断もよかった」
「ロッドくんはきっと、最初にユーさんのバーサクリバストを用いると思ったのです」
「よくわかったな、そのとおりだよ」

 俺が目を丸くすると、レイシーは頬を桜色にしてはにかんだ。

「わかります。わたしは、一番そばでロッドくんを見てきましたから」
「お、おお、そうか」

 レイシーのセリフに、ドキリと心臓が跳ねた。

 嬉しいこと言ってくれるなあ。こんな甘酸っぱいセリフ、前世の俺だったら絶対に言ってもらえなかったぞ。

「と、とにかく、本当に見事だった。レイシーがついて来てくれて助かったよ」
「えへへへへ……そう言っていただけたら、わたしも嬉しいです」

 ポンポンと頭を撫でると、レイシーはフニャリと頬をゆるめる。

 ブンブンと千切れんばかりに振られる尻尾が見えるような、心を許しきった笑顔だった。

 参ったなあ、照れ隠しのつもりで頭を撫でたのに、これじゃあ、ますます顔が熱くなっちまうよ。




 ライオンヘッドプリーストから得た経験値で、クロは84レベル、ユーは80レベル、リーリーは46レベルに上がった。

 その後、俺とレイシーは最奥の部屋にたどり着き、クロ用の装備品を手に入れ、ホクホク顔でジェア神殿をあとにしたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

大好きなあなたを忘れる方法

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:11,194pt お気に入り:1,015

悪徳令嬢はヤンデレ騎士と復讐する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,615pt お気に入り:259

引きこもり魔女と花の騎士

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:255

バラのおうち

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:30

悪役令嬢を口説きたい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:143

初恋の王女殿下が帰って来たからと、離婚を告げられました。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:62,125pt お気に入り:6,936

獣人の恋人とイチャついた翌朝の話

BL / 完結 24h.ポイント:440pt お気に入り:31

水の申し子は無双したい訳じゃない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:552

処理中です...