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第二章
見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――12
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「しかし、対策が思いついたのなら、わたしとの話もおしまいだな」
少しシュンとした様子で、エリーゼ先輩が言い漏らした。
そんな先輩に、俺はお願いする。
「時間が余りましたし、もしよかったら、ちょっと付き合ってもらえませんか?」
「ふゅ?」
妙な鳴き声がした。
「無理でしたら、断ってもらって構わ――」
「問題ない! 是非付き合わせてもらおう!」
「食い気味で!」
もの凄い勢いでOKがきた。
面食らっていると、エリーゼ先輩がクルクルと髪を弄りながら尋ねてくる。
「そ、それで、なにに付き合えばいいのだろうか?」
どこか期待に満ちた眼差しを不思議に思いながら、俺は逆に訊く。
「その前に確認したいんすけど、エリーゼ先輩って、いつも制服着てますよね?」
「ああ」と、エリーゼ先輩が視線を下ろした。
エリーゼ先輩の服装は、えんじ色のブレザー――セントリア従魔士学校の制服だ。
「1ヶ月ちょっと前、俺がエリーゼ先輩から勝負を挑まれたときもその格好でしたし」
「ああ……きみとレイシーが、手を繋いで帰ってきた日のことか」
「先輩、目が怖い」
エリーゼ先輩のエメラルドの瞳が闇を湛えた。俺の背筋に悪寒が走る。
俺は頬をヒクつかせながら続けた。
「そ、それで、もしかしたら、エリーゼ先輩は私服をあまり持っていないんじゃないかと思いまして」
「そんなことないぞ?」
「じゃあ、制服が気に入っているとか?」
「そういう意味ではない」
エリーゼ先輩が首を振って訂正する。
「わたしは『私服をあまり持っていない』のではない。『私服をまったく持っていない』んだ」
予想の斜め上を行く解答に、俺はギョッと目を剥いた。
「1着もっすか!? 女性はオシャレ好きって聞いたことあるんすけど……」
「わたしはずっと、レイシーを助けるために生きてきたからね。自分とゲオルギウスを鍛えることに必死で、オシャレに割く余裕なんてなかったんだ」
そう告げるエリーゼ先輩は、しかし、微塵の後悔も感じない、晴れやかな顔をしていた。
それだけレイシーを大切に想っているということだろう。
「まあ、それならちょうどいいか」
俺が苦笑すると、「ちょうどいい?」とエリーゼ先輩が首を傾げた。
「エリーゼ先輩、俺と一緒に服を買いに行きましょう」
「きみのか?」
「いまの話の流れでどうしてそうなるんすか……」
ズレまくっているエリーゼ先輩に、俺は溜息をつく。
「先輩のに決まってるでしょう?」
「ふゅ?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔とは、いま、エリーゼ先輩が浮かべているもののようなことを指すのだろう。
「し、しかし、わたしは女らしくないだろう? オシャレなんかしても似合わないよ」
エリーゼ先輩が、アタフタしながら自嘲した。
エリーゼ先輩の言うことが心底理解できず、俺は首を捻る。
「いや、そんなことないでしょ。先輩は美人なんすから」
「ひょっ!?」
「むしろ、オシャレしないともったいないっすよ。せっかくキレイなんだし、着飾ったほうがもっと魅力的に――もがっ」
「ももももういい、もういいぃいいいいいいっ! わかったから! ステ――――イっ!!」
本音で指摘する俺の口を、エリーゼ先輩が両手で塞いだ。
いきなりなにをするんだろう? あと、口を塞がれたとき、首がグキッ! って鳴ったんだけど、大丈夫か?
「まったく……このジゴロめ」
俺が頸椎の心配をしていると、エリーゼ先輩がなにやらボソッと呟いた。
エリーゼ先輩の顔は、リンゴよりも赤く染まっていた。
少しシュンとした様子で、エリーゼ先輩が言い漏らした。
そんな先輩に、俺はお願いする。
「時間が余りましたし、もしよかったら、ちょっと付き合ってもらえませんか?」
「ふゅ?」
妙な鳴き声がした。
「無理でしたら、断ってもらって構わ――」
「問題ない! 是非付き合わせてもらおう!」
「食い気味で!」
もの凄い勢いでOKがきた。
面食らっていると、エリーゼ先輩がクルクルと髪を弄りながら尋ねてくる。
「そ、それで、なにに付き合えばいいのだろうか?」
どこか期待に満ちた眼差しを不思議に思いながら、俺は逆に訊く。
「その前に確認したいんすけど、エリーゼ先輩って、いつも制服着てますよね?」
「ああ」と、エリーゼ先輩が視線を下ろした。
エリーゼ先輩の服装は、えんじ色のブレザー――セントリア従魔士学校の制服だ。
「1ヶ月ちょっと前、俺がエリーゼ先輩から勝負を挑まれたときもその格好でしたし」
「ああ……きみとレイシーが、手を繋いで帰ってきた日のことか」
「先輩、目が怖い」
エリーゼ先輩のエメラルドの瞳が闇を湛えた。俺の背筋に悪寒が走る。
俺は頬をヒクつかせながら続けた。
「そ、それで、もしかしたら、エリーゼ先輩は私服をあまり持っていないんじゃないかと思いまして」
「そんなことないぞ?」
「じゃあ、制服が気に入っているとか?」
「そういう意味ではない」
エリーゼ先輩が首を振って訂正する。
「わたしは『私服をあまり持っていない』のではない。『私服をまったく持っていない』んだ」
予想の斜め上を行く解答に、俺はギョッと目を剥いた。
「1着もっすか!? 女性はオシャレ好きって聞いたことあるんすけど……」
「わたしはずっと、レイシーを助けるために生きてきたからね。自分とゲオルギウスを鍛えることに必死で、オシャレに割く余裕なんてなかったんだ」
そう告げるエリーゼ先輩は、しかし、微塵の後悔も感じない、晴れやかな顔をしていた。
それだけレイシーを大切に想っているということだろう。
「まあ、それならちょうどいいか」
俺が苦笑すると、「ちょうどいい?」とエリーゼ先輩が首を傾げた。
「エリーゼ先輩、俺と一緒に服を買いに行きましょう」
「きみのか?」
「いまの話の流れでどうしてそうなるんすか……」
ズレまくっているエリーゼ先輩に、俺は溜息をつく。
「先輩のに決まってるでしょう?」
「ふゅ?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔とは、いま、エリーゼ先輩が浮かべているもののようなことを指すのだろう。
「し、しかし、わたしは女らしくないだろう? オシャレなんかしても似合わないよ」
エリーゼ先輩が、アタフタしながら自嘲した。
エリーゼ先輩の言うことが心底理解できず、俺は首を捻る。
「いや、そんなことないでしょ。先輩は美人なんすから」
「ひょっ!?」
「むしろ、オシャレしないともったいないっすよ。せっかくキレイなんだし、着飾ったほうがもっと魅力的に――もがっ」
「ももももういい、もういいぃいいいいいいっ! わかったから! ステ――――イっ!!」
本音で指摘する俺の口を、エリーゼ先輩が両手で塞いだ。
いきなりなにをするんだろう? あと、口を塞がれたとき、首がグキッ! って鳴ったんだけど、大丈夫か?
「まったく……このジゴロめ」
俺が頸椎の心配をしていると、エリーゼ先輩がなにやらボソッと呟いた。
エリーゼ先輩の顔は、リンゴよりも赤く染まっていた。
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